「甘いものをやめたら、なんとなく痛みが減った気がする」——この体感には、ちゃんとした生化学的な理由があると考えられます。砂糖の過剰摂取は腸内環境を乱し、TNF-αやIL-6といった炎症性サイトカインを全身にばらまく引き金になる可能性があります。茨城県龍ケ崎で施術を行う柔道整復師・鈴木大樹が、慢性痛とお菓子の意外な関係を整体師目線でわかりやすく解き明かします。自分自身、食生活を変えてから痛風発作が出なくなってきた感覚があります(個人の体験です)。その体験が「なぜ食が痛みに影響するのか」を深く掘り下げるきっかけになりました。
「甘いもの好き×慢性痛持ち」に潜む見えない炎症の正体
施術の現場でよく耳にする言葉があります。「甘いものは食べるけど、それが痛みと関係あるんですか?」——この問いに答えるには、まず「慢性炎症」という概念を理解していただく必要があります。
急性の炎症(ケガをしたときの赤み・腫れ・熱感)は身体を守るための正常な反応です。しかし慢性炎症は違います。自覚症状がほとんどないまま、低レベルの炎症反応が全身で長期間くすぶり続ける状態です。血液検査でもなかなか引っかからない「見えない炎症」とも言えます。
チャイナスタディやブルーゾーン研究が繰り返し示しているのは、精製糖質(白砂糖・異性化糖など)の習慣的な摂取と、この慢性炎症の深い関係性です。長寿地域として知られるブルーゾーンの人々の食生活に共通しているのは、精製された砂糖をほとんど摂取しないという点でもあります。
AGEsが組織を「焦がす」
砂糖の過剰摂取が引き起こすもう一つの問題が、AGEs(終末糖化産物)の蓄積です。AGEsとは、糖とタンパク質が体内で結びついて変性した物質のこと。コラーゲンや軟骨、神経組織など、痛みに関わる部位に蓄積すると、組織の弾力性が失われ、炎症センサーが過敏になりやすい状態をつくる可能性があります。
さらに、AGEsは酸化ストレス(細胞を傷つける活性酸素の過剰産生)を促進します。酸化ストレスは炎症反応のアクセルを踏み続けるような働きをするため、慢性痛の背景に潜む「消えない炎症」の一因になっていると考えられます。
- 精製糖質の習慣的摂取 → 慢性炎症のリスク上昇
- AGEsの蓄積 → 組織の変性・炎症センサーの過敏化
- 酸化ストレスの増大 → 炎症反応の慢性化
整体師目線で見ると、構造的なアプローチだけでは改善しにくい慢性痛の患者さんに、こうした「見えない炎症」の背景が重なっているケースが少なくないと感じています。
精製糖質がTNF-αとIL-6を増やす——全身性炎症の生化学的メカニズム
ここからは少し踏み込んだ話になりますが、できるだけわかりやすくお伝えします。砂糖の過剰摂取がなぜ痛みを増幅させるのか、その生化学的な経路を整理してみましょう。
TNF-αとIL-6——炎症を「拡散」させる分子
炎症性サイトカインとは、免疫細胞が分泌する情報伝達タンパク質の総称です。なかでもTNF-α(腫瘍壊死因子-α)とIL-6(インターロイキン-6)は、慢性痛との関係がもっとも注目されている二大サイトカインです。
精製糖質を摂取すると血糖値が急激に上昇し、インスリンの大量分泌が繰り返されます。この「血糖スパイク」の連続が、脂肪細胞や免疫細胞(マクロファージ)を刺激し、TNF-αとIL-6の産生を促す可能性があります。これらのサイトカインは以下のような働きをします。
- 痛覚神経の感作:末梢の痛みセンサー(侵害受容器)の閾値を下げ、普段なら痛みにならない刺激でも「痛い」と感じやすくなる
- 中枢性感作の促進:脊髄や脳の痛み処理回路が過敏になり、慢性痛が「定着」しやすくなる
- 組織修復の妨害:炎症が慢性化することで、本来なら治癒に向かうはずの組織修復プロセスが滞る
つまり、砂糖の摂りすぎは「痛みを感じやすい体内環境」を継続的につくり出している可能性があるわけです。HOW NOT TO DIE(マイケル・グレガー著)でも、植物中心食によってこうした炎症マーカーが変化することが示されており、食事の選択が痛みの感受性に影響し得ることを示唆しています。
また、全身性炎症の状態では、内臓もその影響を受けます。オステオパシーの専門校で学ぶなかで学んだことですが、内臓の機能低下や制限は、隣接する組織・神経系に波及し、「なぜここが痛いのか」と首をかしげるような症状として現れることがあります。痛みの場所だけを見ていても、一次的な原因が別にある——という考え方は、炎症の文脈でも同様に当てはまります。
腸内環境の乱れが慢性痛を増幅させる——腸脳軸と感覚神経の連鎖
砂糖と慢性痛のつながりを語るうえで、外せないのが「腸」の存在です。
精製糖質の過剰摂取は、腸内の有害菌・悪玉菌を増殖させ、腸内細菌叢(腸内フローラ)のバランスを崩します。このバランスの乱れ(ディスバイオシス)が続くと、腸の粘膜バリアが弱まり、リーキーガット(腸漏れ症候群)と呼ばれる状態が起きている可能性があります。
リーキーガットとは、腸壁の細胞間のつなぎ目が緩み、本来なら腸内にとどまるべき細菌の断片(リポ多糖=LPS)や未消化タンパク質が血流に漏れ出す状態のことです。これが血中に入ると免疫系が「異物だ」と反応し、TNF-αやIL-6をはじめとする炎症性サイトカインの産生が促される——という悪循環が生まれます。
腸脳軸——腸と脳の双方向コミュニケーション
さらに重要なのが腸脳軸(Gut-Brain Axis)です。腸と脳は迷走神経を介して双方向に情報をやりとりしており、腸内環境の乱れは脳の痛み処理回路にも影響を与える可能性があります。腸内細菌叢の乱れが、不安・うつ・睡眠障害と関連することも研究で示されていますが、これらはいずれも慢性痛を悪化させる要因として知られています。
施術の現場で感じるのは、慢性的な腰痛や肩こりを抱える患者さんに、便秘・腹部膨満・消化不良などの腸の不調を同時に訴えるケースが非常に多いということです。痛みの「構造的な原因」だけを追っていると、こうした腸と痛みの連鎖が見えにくくなります。
バラル内臓マニピュレーションの観点から見ると、腸の制限(癒着や緊張)は隣接する組織・神経・血管に波及し、慢性痛の「一次制限」として機能している場合があります。たとえばS状結腸の制限が坐骨神経痛に似た症状を引き起こすケースは、臨床的にも知られています。腸を「消化器官」としてだけでなく、全身の構造的バランスに関わる臓器として見ることが、慢性痛へのアプローチの視点を広げる可能性があります。
食と炎症・腸内環境の深いつながりは、NOTEの有料記事シリーズに整体師の実体験とともに書いています。
→ https://lp.suusanosteopathy.com/p/W9SXN7jGh8UC
整体師目線で見る「食と痛みのつながり」——構造だけでは治らない理由
茨城県龍ケ崎の施術室で患者さんと向き合っていると、「骨格や筋肉を整えても、また繰り返してしまう」という悩みをよく聞きます。構造にアプローチすることは大切です。しかし、慢性痛の背景に「全身性炎症」が潜んでいる場合、構造だけを見ていては限界があると感じています。
私自身の体験として、平日は植物中心食を意識するようになってから、痛風発作が出なくなってきた感覚があります(個人の体験であり、同様の効果を保証するものではありません)。食生活を変える前は、足の親指の付け根が猛烈に痛む発作を繰り返していました。それが変わってきた——この体感が、食と炎症の関係を自分ごととして深く考えるきっかけになりました。
BODY × MIND × SPIRITの三軸で見る慢性痛
私の施術哲学は「BODY(構造・内臓・頭蓋)× MIND(食事・自然療法)× SPIRIT(全体性)」という三軸で身体を捉えることです。慢性痛は、この三軸のどこかに偏りが生まれたとき、複合的に現れやすい症状だと考えています。
構造的なアプローチ(骨格・筋膜・内臓の調整)が「BODY」の軸なら、食生活の見直しは「MIND」の軸に当たります。砂糖の過剰摂取による炎症性サイトカインの増加、リーキーガットによる免疫系の過活動——こうした内側からの炎症が続く限り、構造を整えても「また戻る」という繰り返しになりやすい可能性があります。
オステオパシーの専門校で学ぶなかで印象的だったのは、「病変連鎖」という概念です。一つの制限(機能障害)は隣接するすべての構造に影響を波及させ、代償の連鎖を生み出します。これは身体構造だけでなく、炎症・栄養・腸内環境という内部環境にも同じ原理が働いていると感じています。
慢性痛を悪化させる食べ物として精製糖質が挙げられる理由は、その生化学的な炎症促進作用にあります。逆に言えば、植物中心食への移行が身体の炎症レベルを整える方向に働きやすい場合があるということでもあります。ブルーゾーン研究が示す長寿者の食習慣には、この視点が色濃く反映されています。
食と身体のつながりについては、有料コンテンツシリーズで整体師の実体験とともに詳しく書いています。
→ https://lp.suusanosteopathy.com/p/W9SXN7jGh8UC
まとめ
「甘いものをやめたら痛みが減った気がする」という体感は、炎症性サイトカイン・AGEs・酸化ストレス・腸脳軸といった生化学的なメカニズムで説明できる可能性があります。慢性痛は「構造の問題」だけでなく、食生活がつくり出す「内側の炎症環境」とも深くつながっています。整体師として、骨格や内臓の構造にアプローチしながら、食と身体の関係にも目を向けていただくことが、慢性痛の根本的な改善への一歩になる場合があると感じています。個人差がありますので、まずはご自身の身体の変化に丁寧に耳を傾けてみてください。
よくある質問
Q. 砂糖をやめると慢性痛は本当に減るの?
A. 砂糖の過剰摂取はTNF-αやIL-6などの炎症性サイトカインを増加させ、神経の感作を高めることで痛みを増幅します。摂取量を減らすことで炎症レベルが下がり、結果的に痛みが和らぐという報告が複数あります。
Q. 炎症性サイトカインってどんな悪影響があるの?
A. TNF-αやIL-6は免疫反応の一部ですが、慢性的に過剰になると末梢・中枢の痛覚神経を感作させ、わずかな刺激でも強い痛みを感じやすくする「中枢性感作」を引き起こす可能性があります。
Q. 腸内環境が悪いと慢性痛が悪化するって本当?
A. 腸内細菌のバランスが崩れると腸粘膜のバリアが弱まり、炎症物質が血中に漏れ出す「リーキーガット」が起きやすくなります。これが全身性炎症を持続させ、慢性痛の悪化につながる可能性が研究で示されています。

鈴木大樹(すずき だいき)
柔道整復師 / オステオパシー専門校在学中 / 産後リハビリ国際セミナー修了
茨城県龍ケ崎市で妻・佳代とともに整体院を営む整体師。食・自然療法・筋膜のつながりを臨床と学びの中で深め、「なぜ身体はそうなるのか」を発信し続けています。
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食と炎症・腸内環境の深いつながりは、NOTEの有料記事シリーズに整体師の実体験とともに書いています。
✔ 腸内環境と慢性炎症——何を食べると身体の痛みが変わるか ✔ 整体師が食と身体に向き合った3年間の記録 ✔ 朝フルーツ・植物中心食で身体のリズムが変わった話
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すーさん夫婦の龍ケ崎整体院
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