「なぜか右の肩だけ、左の肩だけがこる」という経験はありませんか?両側でなく片側に集中する肩こりには、姿勢や筋肉の使い方だけでなく、内臓の左右非対称な配置が深く関わっている可能性があります。肝臓は右側に、胃や脾臓は左側に位置するという解剖学的な事実は、肩こりの左右差を考えるうえで非常に重要な手がかりになります。整体師・オステオパシーの視点から、その仕組みをわかりやすく解き明かしていきます。
「片側だけ肩がこる」は身体からの重要なサインかもしれない
肩こりというと、「両肩が重い」というイメージを持つ方が多いかもしれません。しかし施術の現場では、「右の肩だけがひどい」「左だけが張って頭痛になる」と訴える方がとても多いのが実情です。この片側への偏りこそが、身体からの重要なメッセージである可能性があります。
片側だけ肩こりが起こりやすい一般的な要因
まず、よく知られた原因として以下のようなものが挙げられます。
- 利き手側の筋肉の使い過ぎ(マウス操作・書き物など)
- 頭部の傾きぐせ・顎の偏りによる頸椎の左右差
- 座り方や荷物の持ち方の習慣的な偏り
- スポーツや職業による特定の動作の繰り返し
これらは確かに片側の肩こりの一因になり得ます。しかし、これらを改善しても肩こりが取れない方、あるいは「特に使い過ぎていないはずの側」が強くこる方の場合、別の視点が必要になってきます。
「痛みの場所」が「原因の場所」とは限らない
オステオパシーや整体の世界では、「一次制限(本来の原因)」と「二次制限(代償)」という考え方があります。慢性的な片側の肩こりは、肩そのものに原因があるのではなく、別の場所にある一次制限が肩に波及している二次反応である可能性があります。
つまり、肩をいくらほぐしても変化しにくいときは、その肩を引っ張っている根っこ——内臓や筋膜の深部——に目を向ける必要が出てくるのです。
筋膜のトリガーポイント(筋肉内の過敏点)が肩こりや頭痛の原因となる可能性が研究で示されており、その発生源が肩周囲だけでなく遠隔部位にある場合があることも知られています。こうした視点は、片側の肩こりを読み解くうえで重要な手がかりになります。
こうした症状や状態が続く場合、あるいは強い痛みや手のしびれを伴う場合は、自己判断せず医療機関にご相談ください。
内臓の左右非対称と肩こりの関係|肝臓・胃・脾臓の位置が鍵を握る
人体の内臓は、左右対称ではありません。この解剖学的な非対称性が、肩こりの左右差を生み出す一因になっている可能性があります。
右側に位置する臓器と右肩こりの関係
右の肋骨の下には、重量約2kgもある肝臓が位置しています。肝臓は横隔膜の直下にあり、横隔膜と密接に連絡しています。横隔膜を支配する神経は横隔神経(C3〜C5:頸椎3〜5番から出る神経)であり、この神経の根本は右肩の周囲にも感覚神経として分布しています。
このため、肝臓に何らかの負担や緊張が生じると、その信号が横隔神経を介して右肩に「こり」や「張り感」として現れることがあると考えられています。これを内臓体性反射(内臓の問題が筋骨格系の症状として現れる現象)と呼びます。
また、同じく右上腹部にある胆嚢の障害では、右肩への放散痛が起こりやすいことは医学的にも広く知られています。胆石発作の際に右肩が痛む「ケール徴候」はその代表例です。日常的な胆嚢の機能低下でも、より軽度な形で似たような影響が出ている可能性があります。
左側に位置する臓器と左肩こりの関係
一方、左側には胃と脾臓が位置しています。胃の障害が左前頭部の頭痛や左肩の張りに関連するという臨床的な観察は、内臓マニピュレーションの分野では古くから注目されてきました。
胃が下垂したり、横隔膜の左ドームとの連絡部(噴門部付近)に緊張が生じたりすると、左側の横隔膜を介して左肩部の筋肉に影響が波及する可能性があります。また、脾臓は横隔膜・左腎臓・結腸との連絡が深く、これらの組織の緊張が連鎖的に左肩周辺の筋膜緊張に影響している可能性も考えられます。
すーさん夫婦の龍ケ崎整体院(茨城県)の施術の現場でも、左肩こりが強く、食後に症状が増す傾向がある患者さんに、胃や横隔膜周辺へのアプローチをすると肩の緊張が変化するケースを経験することがあります。あくまで当院の経験上の傾向であり、医学的な因果関係として断言するものではありません。
筋膜ラインと内臓反射|オステオパシーから見る片側肩こりのメカニズム
内臓と肩こりの関係をより深く理解するために、筋膜ラインと内臓反射という二つの視点を組み合わせて考えてみましょう。
筋膜は全身を包む「張力のネットワーク」
筋膜とは、筋肉・内臓・骨格を包む結合組織の膜です。この筋膜は全身で連続しており、Stecco(ステッコ)らの筋膜研究が示すように、一部の緊張や制限が遠隔部位へ張力として伝わることがあります。
たとえば、肝臓の緊張が横隔膜を介して右側の肋椎関節(肋骨と脊椎の関節)を硬くし、そこから頸椎・右肩の筋膜ラインへと張力が伝播するという連鎖は、オステオパシーの臨床で観察される経路の一つです。また、胸膜(肺を包む膜)が癒着すると、縦隔(胸の真ん中)が引っ張られ、食道・胃の入り口(噴門部)の機能にまで影響することもあるとされています。
これらは「筋膜ラインを通じた張力伝達」として整理することができ、首・肩周囲の筋膜ケアが慢性的な肩こりの緩和につながる可能性が研究でも示されています。
内臓体性反射と体性内臓反射——双方向の影響
内臓と身体(筋骨格系)の情報伝達は、一方通行ではありません。
- 内臓体性反射:内臓の問題 → 筋肉・皮膚・関節に症状が出る
- 体性内臓反射:筋骨格系の問題 → 内臓の機能に影響が出る
この双方向性は、自律神経系(特に迷走神経)を介して成立しています。迷走神経は脳幹から出て、心臓・肺・胃・肝臓・腸など多くの内臓を支配する最大の自律神経です。この神経が頸椎周辺の筋膜緊張によって機械的な刺激を受けると、内臓の働きに影響が出る可能性があります。
また、筋膜内にはトリガーポイント(過敏化した筋膜の一点)が形成されることがあります。トリガーポイントは離れた場所に痛みを飛ばす「関連痛」を引き起こすことがあり、内臓由来の持続的な刺激がこのトリガーポイントを形成・維持させている可能性も指摘されています。
これらの連鎖を整理すると、「なぜ右の肩だけ、左の肩だけがこるのか」という疑問への答えが、内臓の解剖学的な非対称性と筋膜・神経系の連動にあることが見えてきます。
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整体師が「片側の肩こり」に注目する理由|構造・内臓・自律神経の三層で読み解く
私が学ぶオステオパシーの専門校や、日々の施術現場では、症状を「構造(骨格・筋膜)」「内臓」「自律神経」の三つの層から評価するという考え方を大切にしています。片側の肩こりは、この三層が複雑に絡み合った結果として現れている場合が多いと感じています。
三層で読み解く片側肩こりの全体像
① 構造の層
頸椎・胸椎・肋骨の関節機能の左右差、筋膜ラインの偏り、トリガーポイントの分布。これらは直接肩こりの「感じ方」に影響します。しかし前述の通り、これらの構造的な制限も、内臓からの張力伝達によって二次的に生じている場合があります。
② 内臓の層
肝臓・胆嚢(右)、胃・脾臓(左)の可動性や緊張状態が、横隔膜を介して肩部の筋膜に影響を与えている可能性があります。特に横隔膜は呼吸筋であると同時に、上下の内臓を隔てる重要な膜であり、ここに制限が生じると上半身全体の緊張バランスが変化しやすくなります。
③ 自律神経の層
迷走神経を中心とした自律神経系は、内臓の状態と脳・脊髄をつなぐ情報ハイウェイです。慢性的なストレスや睡眠不足、食習慣の乱れによって自律神経のバランスが崩れると、内臓の緊張状態が高まり、それが片側の肩こりとして現れやすくなる可能性があります。
整体師の視点から見た「片側肩こり」へのアプローチの方向性
龍ケ崎をはじめ茨城県内の患者さんを診ていると、「長年右肩だけこる」という方に、姿勢・内臓・自律神経の三層を評価すると、それぞれに何らかの関連が見られることがあります。これは当院の臨床上の傾向であり、すべての方に当てはまるものではありません。
整体や内臓アプローチの方向性としては、以下のような視点が考えられます(具体的な施術手技の内容はここでは割愛します)。
- 横隔膜の緊張・左右差を評価し、呼吸の動きを整える方向性
- 肝臓・胃・脾臓の可動性に着目し、内臓膜の緊張を緩める方向性
- 迷走神経の走行に沿った頸椎・胸郭の関節機能を整える方向性
- 筋膜ラインの左右の張力バランスを評価し、トリガーポイントにアプローチする方向性
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重要なのは、「こっている肩だけを見ない」という視点です。片側の肩こりには、理由があると考えられます。その理由を構造・内臓・自律神経の三層で丁寧に探ることが、長年の肩こりを根本から整えていくうえでの第一歩になるかもしれません。
まとめ
片側だけの肩こりは、肩そのものの問題だけでなく、肝臓・胃・脾臓といった内臓の左右非対称な配置、横隔膜を介した筋膜ラインの張力伝達、そして迷走神経を含む自律神経系の影響が複合的に絡み合っている可能性があります。「右だけ」「左だけ」という偏りに気づいたとき、それは身体が発しているサインかもしれません。気になる方は、ぜひ一度専門家に相談してみてください。
参考文献
本記事の作成にあたり参照した研究論文です(内容は要約・意訳したものであり、原文の直接引用ではありません)。
- Effectiveness of Myofascial Release Compared to Manual Lymphatic Drainage in Reducing Post-Treatment Shoulder Pain and Stiffness Among Patients Who Underwent Breast Cancer Surgery and Adjuvant Radiotherapy: Randomised controlled trial(Sultan Qaboos Univ Med J 2025) PubMed
- Myofascial triggerpoint release (MTR) for treating chronic shoulder pain: A novel approach(J Bodyw Mov Ther 2016) PubMed
よくある質問
Q. 左肩こりがひどいのは内臓が原因ですか?
A. 左肩こりには胃や脾臓・膵臓などの左側内臓が関わる可能性があります。内臓の緊張が横隔膜や筋膜を通じて肩周囲の筋肉に影響を与える「内臓体性反射」が原因の一つとして考えられています。
Q. 右肩だけこるのはなぜですか?内臓と関係ありますか?
A. 右肩の肩こりは肝臓や胆嚢の影響が疑われることがあります。これらの臓器は右横隔膜下に位置し、緊張が筋膜を通して右の首・肩へ波及する可能性があります。肩こり以外に倦怠感がある場合は医療機関への相談も検討してください。
Q. 肩こりが左右で違うのはなぜですか?
A. 肩こりの左右差は、利き手の使い過ぎや姿勢の偏りだけでなく、内臓の左右非対称な配置・筋膜ラインの張力の偏り・自律神経の乱れが複合的に絡んでいると整体師・オステオパシーの視点では考えます。

鈴木大樹(すずき だいき)
柔道整復師 / オステオパシー専門校在学中 / 産後リハビリ国際セミナー修了
茨城県龍ケ崎市で妻・佳代とともに整体院を営む整体師。食・自然療法・筋膜のつながりを臨床と学びの中で深め、「なぜ身体はそうなるのか」を発信し続けています。
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すーさん夫婦の龍ケ崎整体院
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