授乳中の肩こり原因|産後の骨格変化と筋膜の深い関係

肩こり
この記事は個人の体験談と参考書籍をもとにした健康情報です。医療的な診断・治療に代わるものではありません。持病のある方・服薬中の方は必ず主治医にご相談ください。

授乳のたびに肩や首がガチガチになるのに、マッサージしても整体に行っても一向に楽にならない——そんな経験をしているママは少なくありません。実は産後の肩こりは、授乳姿勢だけが問題ではなく、出産を境に起こる骨格・筋膜・内臓のシステム全体の変化が深く関係していると考えられます。この記事では、柔道整復師としての臨床経験とオステオパシーの専門校で学んでいる知見をもとに、その仕組みをできるだけわかりやすく解説します。

授乳中の肩こりが「なぜか治らない」のには理由があると考えられます

授乳中のママが肩こりを訴えることは、整体の現場でも非常によく見られます。しかし「授乳姿勢を直しましょう」「肩を回してほぐしましょう」というアドバイスだけで楽になれないケースが少なくありません。そこには、表面的な姿勢の問題だけでは説明しきれない、産後特有の身体変化が隠れている可能性があります。

表面的なアプローチが届かない理由

肩こりの一般的なイメージは「筋肉が硬くなっている状態」です。確かに授乳中は赤ちゃんを抱っこして前かがみになる時間が長く、授乳姿勢による猫背が肩まわりの筋肉に負担をかけます。しかし産後の身体では、筋肉の問題だけでなく、骨格の土台そのものが変化している可能性があります。

研究では、筋膜や筋肉内のトリガーポイント(過敏な圧痛点)が肩こりや頭痛などの慢性的な痛みに関与している可能性が示されています。産後の身体でこのトリガーポイントが生じやすい背景には、妊娠・出産を通じた全身の負荷の蓄積があると考えられます。つまり、肩だけをほぐしても、そのトリガーポイントの一次的な原因が別の場所にある場合、症状は戻りやすい状態が続く可能性があるのです。

「治らない肩こり」のサインとして感じてほしいこと

以下のような状況に心当たりのあるママは、肩こりの背景に産後の骨格・筋膜の変化が関係している可能性を考えてみてください。

  • 授乳後に毎回、首〜肩〜背中にかけて重だるさがある
  • マッサージや市販の湿布でその場は楽になるが、翌日には戻っている
  • 骨盤の歪みや腰痛も同時に感じている
  • 産前はこれほどひどくなかった
  • 頭痛・目の疲れ・寝ても疲れが取れない感覚を伴っている

こうした症状が続く場合や、強い痛みがある場合は、自己判断せず医療機関にご相談ください。

産後の骨格変化と筋膜ネットワークが肩こりを引き起こすメカニズム

産後の肩こりを理解するうえで欠かせないのが、産後の骨格変化と、全身をつなぐ筋膜ネットワークの関係です。この二つは切り離して考えることができません。

リラキシンと靭帯弛緩が骨格全体を変える

妊娠中から産後にかけて、リラキシンというホルモンが分泌されます。このホルモンは出産のために骨盤の靭帯を弛緩させる役割を持ちますが、その作用は骨盤だけにとどまらず、全身の靭帯・関節・筋膜にも影響を与える可能性があります。骨盤が緩むことで骨盤底の支持機能が変化し、上半身を支えるための土台そのものが不安定になりやすい状態が生じると考えられます。

骨盤と肩こりの関係は、一見すると遠いように思えます。しかし骨盤が歪むと脊柱全体のバランスが変化し、頸椎(首の骨)や肩甲帯(肩まわりの骨格)への負担が増す可能性があります。これは骨盤の歪みが肩こりに連動する一つのルートです。

筋膜は全身をつなぐ「第二の骨格」

筋膜とは、筋肉・内臓・骨格を包み全身を連続してつなぐ薄い膜のことです。Stecco(ステッコ)らの筋膜研究によると、筋膜は局所的な構造ではなく、全身にわたる張力伝達のネットワークとして機能しているとされています。

産後に骨盤底や腹部の筋膜が変化すると、その張力が背部・横隔膜・頸部へと波及する可能性があります。たとえば、帝王切開の術後の瘢痕(きずあと)や会陰切開の瘢痕でさえ、筋膜を通じて遠隔部位の動きに影響を与えることがあると、オステオパシーの臨床では指摘されています。

また、研究では筋膜リリース技術(マイオファッシャルリリース)を用いたアプローチが、肩の痛みや可動域制限の改善に役立つ可能性があると報告されています。産後の筋膜ほぐしがなぜ重要とされるのか、その背景にはこうした全身連動のメカニズムがあると考えられます。

さらに、産後のトリガーポイントが生じやすい部位として、肩甲骨まわりだけでなく、横隔膜付近・骨盤底・腸腰筋(腰と足をつなぐ深部の筋肉)なども挙げられます。これらは単独では気づかれにくく、表面的な肩のマッサージだけでは届きにくい場所です。

整体師・オステオパシー目線で見る「内臓・骨盤・肩こり」の連動

整体師としての日々の施術、そしてオステオパシーの専門校での学びを通じて私が実感しているのは、内臓・骨盤・肩こりは一つのシステムとして連動している可能性があるということです。茨城県の龍ケ崎で施術をしていると、産後のママが「肩こりと腰痛と胃腸の調子が同時に悪い」と訴えるケースに出会うことがあります。これは偶然ではないかもしれません。

横隔膜という「要(かなめ)」

横隔膜は呼吸筋として知られていますが、それだけではありません。横隔膜は上方では肺・心臓を、下方では肝臓・胃・腎臓などの内臓を支える構造的な仕切りでもあります。そして、横隔膜は頸椎3〜5番から出る横隔神経(おうかくまくしんけい)に支配されています。

つまり、横隔膜に緊張や制限が生じると、その影響が頸椎・肩まわりへ伝わる経路が存在する可能性があります。産後は授乳姿勢の猫背により胸郭(きょうかく、肋骨で囲まれた部分)が閉じやすく、横隔膜の動きが制限されやすい状態になる可能性があります。

肝臓・横隔膜・右肩のつながり

オステオパシーの臨床研究では、肝臓の可動性の制限が横隔膜を介して右肩まわりの症状に関与する可能性が指摘されています。肝臓は横隔膜の直下に位置し、肝臓をとりまく膜が横隔膜と連結しているため、肝臓の動きの変化が横隔膜を通じて右肩部の緊張につながる経路が考えられます。

産後のママの身体は、妊娠中の内臓の圧迫・位置変化の影響が残っている可能性があります。当院の臨床経験では、産後のママの右肩こりに対して横隔膜や腹部へのアプローチを行った際に、肩まわりの緊張が変化したと感じる場面があります(個人差があり、すべての方に同様の変化が起きるとは限りません)。

骨盤内臓器と全身の膜のつながり

オステオパシーの考え方では、頭蓋骨の内側を包む硬膜(こうまく)は、脊柱管の中を通って仙骨(骨盤の中央にある骨)に付着しており、骨盤内の膜系と連続していると説明されます。つまり、骨盤底の緊張や子宮・膀胱などの骨盤内臓器の状態が、硬膜の緊張を介して頸椎・頭部にまで影響を波及させる可能性があるとされています。

産後の骨盤問題と肩こり・頭痛が同時に現れやすい背景に、こうした全身の膜のネットワークが関与している可能性があると考えています。ただしこれはオステオパシーの臨床的視点であり、すべてが医学的に確立された事実ではないことをお断りしておきます。

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産後の肩こりを根本から変えるために整体師として伝えたいこと

ここまで読んでいただいたように、産後の肩こりは「授乳姿勢だけの問題」でも「肩の筋肉だけの問題」でもない場合があります。骨格・筋膜・内臓が連動した複合的な変化として捉えることが、根本的なアプローチへの第一歩になる可能性があります。

整体・オステオパシーのアプローチで見るべき視点

産後の肩こりに対して整体やオステオパシーの視点からアプローチする際には、肩そのものだけでなく、以下のような部位や機能も評価の対象として考えることがあります。

  • 骨盤底・仙腸関節(仙骨と腸骨の関節):骨格の土台の状態
  • 横隔膜・胸郭の動き:呼吸と内臓への影響
  • 腹部の筋膜・内臓の可動性:骨盤内臓器の位置・動きの変化
  • 頸椎・頭蓋底の状態:硬膜の緊張と自律神経への影響

「どこが一次的な制限になっているか」を全身の視点から評価することが、産後の慢性的な肩こりへのアプローチで重要になると考えています。ある一点だけをほぐすのではなく、連鎖の起点を見つけるという発想です。

整体師として日常生活でお伝えしていること

龍ケ崎の施術現場で産後のママと向き合う中で、私が繰り返しお伝えしていることがあります。それは「肩こりは今の身体が送っているサインである」という視点を持っていただくことです。

授乳中は赤ちゃんへの集中と睡眠不足で、自分の身体に意識を向ける余裕を持ちにくい時期です。しかし産後の骨格変化や筋膜の変化は、意識的にアプローチしなければ時間が経つほど定着してしまう可能性があります。

セルフケアの方向性としては、骨盤底・横隔膜・胸郭という「体幹の中心部」の動きを取り戻すことが一つの考え方になります。ただし、具体的な手順については身体の状態によって異なるため、専門家の指導のもとで行うことをおすすめします。

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また、私自身は食生活を植物中心にシフトしてから身体のベースラインが変わった感覚があります(個人の体験です)。食と身体のつながりという視点も、産後の回復を考えるうえで無視できない要素の一つかもしれません。食と身体のつながりについては、有料コンテンツシリーズで整体師の実体験とともに詳しく書いています。→ https://lp.suusanosteopathy.com/p/W9SXN7jGh8UC

まとめ

授乳中の肩こりが治らない背景には、授乳姿勢による猫背だけでなく、リラキシンによる靭帯弛緩・産後の骨格変化・筋膜ネットワークへの張力変化・横隔膜や内臓との連動という複合的な要因が関係している可能性があります。肩だけを見るのではなく、身体全体のシステムとして捉えることが、産後の肩こりに根本的にアプローチするための視点になると考えています。気になる症状が続く場合は、ぜひ一度、産後ケアに精通した整体師や医療機関にご相談ください。

免責事項:本記事は個人の体験談および一般的な健康情報の提供を目的としており、医療診断・治療に代わるものではありません。同様の効果を保証するものではありません。持病のある方・服薬中の方は生活習慣の変更前に必ず主治医にご相談ください。

参考文献

本記事の作成にあたり参照した研究論文です(内容は要約・意訳したものであり、原文の直接引用ではありません)。

  1. Effectiveness of Myofascial Release Compared to Manual Lymphatic Drainage in Reducing Post-Treatment Shoulder Pain and Stiffness Among Patients Who Underwent Breast Cancer Surgery and Adjuvant Radiotherapy: Randomised controlled trial(Sultan Qaboos Univ Med J 2025) PubMed
  2. Myofascial triggerpoint release (MTR) for treating chronic shoulder pain: A novel approach(J Bodyw Mov Ther 2016) PubMed
  3. Multi-Acupuncture Point Injections and Their Anatomical Study in Relation to Neck and Shoulder Pain Syndrome (So-Called Katakori) in Japan(PLoS One 2015) PubMed

よくある質問

Q. 授乳中に肩こりがひどくなるのはなぜですか?

A. 授乳中は前かがみの姿勢が長時間続くことで肩周囲の筋膜が慢性的に引っ張られ、産後の骨格不安定さも重なってトリガーポイントが形成されやすくなるためです。

Q. 産後の肩こりと骨盤は関係ありますか?

A. はい、深く関係しています。骨盤の歪みは脊柱全体のバランスに影響し、筋膜を介して肩・首の緊張につながります。産後は骨盤が不安定なため、この連動が起きやすい状態です。

Q. 産後の肩こりはいつまで続きますか?

A. 授乳期間中は姿勢や骨格変化の影響が続くため、根本の原因にアプローチしないと産後2年以上続くケースもあります。骨格・筋膜の両面からの対処が早期改善のカギです。

鈴木大樹

鈴木大樹(すずき だいき)

柔道整復師 / オステオパシー専門校在学中 / 産後リハビリ国際セミナー修了

茨城県龍ケ崎市で妻・佳代とともに整体院を営む整体師。食・自然療法・筋膜のつながりを臨床と学びの中で深め、「なぜ身体はそうなるのか」を発信し続けています。

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