膝の痛みは「軟骨が減ったから」だけでは説明しきれない場合があります。関節の動きのパターン・周囲の筋膜・骨盤や足首との連動——これらを整体師の目線で読み解くと、痛みが長引く理由が見えてくることがあります。ランダム化比較試験を含む複数の臨床研究では、徒手療法と運動療法を組み合わせることで痛みの軽減や機能改善の可能性が示されており、薬や手術以外のアプローチとして注目されています。この記事では、膝関節の構造的な背景と、オステオパシーの視点からのアプローチをわかりやすく解説します。
膝が痛いのに「軟骨のせい」だけでは終わらない理由
レントゲンで「軟骨が減っています」と言われた経験のある方は多いのではないでしょうか。変形性膝関節症(膝の関節が変形・摩耗する状態)は、中高年に非常に多く見られます。ところが、画像所見と実際の痛みの強さが必ずしも一致しないことは、整形外科の臨床でも以前から指摘されてきました。
つまり、軟骨がかなり減っていても痛みが少ない方がいる一方で、画像上の変化が軽微でも強い痛みを抱えている方もいます。これはなぜでしょうか。
関節の「動きのパターン」が痛みを左右している可能性
膝関節は単純に「曲げ伸ばし」するだけの構造ではありません。正確には、屈曲・伸展に加えてわずかな回旋(ねじれ)と滑り(スライド)が組み合わさって動いています。この微細な運動パターンが崩れると、関節内の特定の部位に繰り返し負荷がかかりやすくなる可能性があります。
施術の現場では、膝そのものより股関節や足首の動きに制限がある方が、膝の痛みを強く感じているように見えることが少なくありません。これまで診てきた範囲では、足首の背屈(つま先を上げる動き)が制限されている方が、着地の際に膝への衝撃を吸収しにくくなっているように感じることがあります。あくまで施術の現場での傾向であり、個人差があります。
「痛みの記憶」が神経系に刻まれるプロセス
もうひとつ見落とされがちなのが、神経系の関与です。痛みが長期間続くと、痛みの信号を伝える神経回路が過敏になりやすいことが知られています(中枢感作と呼ばれるプロセス)。これにより、実際の関節の状態が改善していても、痛みの感覚が残りやすくなる場合があります。
関節可動域改善のアプローチが、こうした神経系の過敏にも間接的に働く可能性があるという研究報告もあり、徒手療法への関心はこうした背景からも高まっています。
変形性膝関節症で何が起きているか|関節・筋膜・神経の連動から読む
変形性膝関節症は「膝の病気」と捉えられがちですが、整体師やオステオパシーの視点では、膝を単体で見ることはほとんどありません。膝関節は、骨盤・股関節・足首・そして身体全体の筋膜ネットワークの中に組み込まれているからです。
筋膜連続性から見た膝への負荷
筋膜(きんまく)とは、筋肉・臓器・骨格を包む薄い結合組織の膜のことです。この筋膜は全身につながっており、ある部位の緊張が離れた部位に伝わる経路になっていると考えられています。これを筋膜連続性と呼びます。
たとえば、股関節の外側(腸脛靭帯ライン)の緊張が強くなると、膝の外側への負荷が増しやすくなる可能性があります。また、骨盤の傾きが変わると大腿骨(太もも)の向きが変わり、膝関節内の圧力分布が偏る場合もあります。こうした骨盤と膝の連動は、膝の痛みを評価するうえで重要な視点のひとつです。
変形性膝関節症 運動療法の研究が示すこと
複数のランダム化比較試験を含む臨床研究では、変形性膝関節症に対する運動療法が、痛みの軽減や身体機能の改善に寄与する可能性があると報告されています。特に大腿四頭筋(太ももの前の筋肉)の強化を中心とした運動療法は、膝関節への負荷を分散し、症状の緩和に役立つことがあるとされています。
ただし、これらの研究はあくまで「研究対象の範囲内」での知見であり、すべての方に同様の効果が期待できるわけではありません。個人差があることをご理解ください。
また、痛みが強い・腫れている・急に動けなくなったといった場合は、自己判断せず、まず整形外科などの医療機関にご相談ください。
徒手療法はなぜ膝の痛みに働くのか|オステオパシーの視点
徒手療法(手を使ったアプローチ)が膝の痛みに対して何らかの効果をもたらす可能性について、近年研究が積み重ねられています。ランダム化比較試験を含む複数の研究では、膝関節モビライゼーション(関節を適切な方向にゆっくり動かす手技)が、疼痛緩和や動作の改善に寄与するという報告があります。
モビライゼーションが関節に及ぼす可能性
関節モビライゼーションとは、関節を解剖学的な動きの方向に沿って、痛みが出ない範囲でゆっくりと動かしていく手技です。これにより次のような変化が生じる可能性が考えられています。
- 関節包(関節を包む袋状の組織)の柔軟性が高まる場合がある
- 関節液(滑液)の循環が促される可能性がある
- 痛みの信号を抑制する神経系への働きかけが生じる場合がある
- 関節可動域の改善により、動作時の代償パターンが変わる可能性がある
オステオパシーでは「運動を再開始させること」が身体へのアプローチの本質と考えられています。身体に無理な力をかけて動かすのではなく、関節本来の動きのリズムに寄り添うことで、身体自身の機能が働きやすくなる場合があるという考え方です。
徒手療法と運動療法を組み合わせることの意味
研究知見として注目されているのは、徒手療法単独より、運動療法と組み合わせたアプローチの方が、痛みの軽減や機能改善の可能性が高いと示されている点です。徒手療法で関節の動きやすさが整った状態で運動療法を行うことで、筋肉の使い方が変わりやすくなる場合があるのではないかと考えられています。
ただし、これはあくまで研究上の傾向であり、効果の程度や現れ方には個人差があります。
身体の見方についての詳しい考え方は、有料コンテンツでも発信しています。
→ https://note.com/honest_rose9929
整体師として膝の痛みをどう捉えるか|身体全体の文脈で見る
私は柔道整復師として、また現在オステオパシーの専門校にて学びながら、日々の施術のなかで膝の痛みを訴える方と向き合っています。ここでは、すーさん夫婦の龍ケ崎整体院での施術経験をもとに、整体師として感じている視点をお伝えします。
膝だけを見ていては見えないもの
実際に来られる方を見ていると、膝の痛みを抱えている方の多くが、同時に股関節の動きの左右差・骨盤の傾き・足部(かかとや土踏まず)のアーチの崩れを持っていることが多いように感じます。これらが重なることで、膝関節に特定の方向への負荷が集中しやすくなっている可能性があります。
また、腎臓に関連する筋肉(大腰筋)の緊張が腰椎・骨盤の動きに影響し、それが骨盤と膝の連動パターンを変えているように見えることもあります。こうした視点は、オステオパシーの内臓・骨格連動の考え方とも重なります。あくまで施術の現場での傾向として感じていることであり、医学的な因果関係を断言するものではありません。
「全体の文脈」で膝を読む
オステオパシーの考え方では、身体は構造(骨格・筋膜)・内臓・神経系が互いに影響し合う一つのシステムと捉えます。膝関節モビライゼーションの効果が単に「膝を動かした」だけにとどまらず、周辺の組織や神経系に波及する可能性があるのは、こうした身体の連動性があるからだと考えられています。
私たちが大切にしているのは、「なぜこの方の膝に今この痛みが起きているのか」という文脈を丁寧に読むことです。痛みのある場所だけではなく、その周囲・骨盤・足首・さらには日常の姿勢や動作のクセまで含めて見ていくことで、アプローチの方向性が変わることがあります。
茨城・龍ケ崎という地域柄、農作業や長時間の運転で膝を酷使されている方が来られることもあります。施術の現場では、膝の痛みの「背景にある生活動作」を一緒に確認することを大切にしています。
こうした痛みが続く場合や、日常生活に支障が出ている場合は、自己判断せず整形外科など専門の医療機関にご相談ください。整体・徒手療法は医療の代替ではなく、あくまで補完的なアプローチのひとつです。
まとめ
膝の変形性関節症における痛みは、軟骨の摩耗だけでは説明しきれない場合があります。関節の動きのパターン・筋膜連続性・骨盤と膝の連動・神経系の関与など、複数の要素が絡み合っています。ランダム化比較試験を含む研究では、徒手療法と運動療法を組み合わせることで痛みの軽減や機能改善の可能性が示されており、薬や手術以外のアプローチとして注目されています。ただし、効果には個人差があります。まずは専門家に相談しながら、身体全体の文脈でご自身の膝を見直すきっかけにしていただければ幸いです。
参考文献
本記事の作成にあたり参照した研究論文です(内容は要約・意訳したものであり、原文の直接引用ではありません)。
- Effectiveness of manual physical therapy and exercise in osteoarthritis of the knee. A randomized, controlled trial(Ann Intern Med 2000) PubMed
- The effect of mobilization with movement on pain and function in patients with knee osteoarthritis: a randomized double-blind controlled trial(BMC Musculoskelet Disord 2019) PubMed
よくある質問
Q. 変形性膝関節症に徒手療法は効果がありますか?
A. ランダム化比較試験を含む複数の研究で、徒手療法と運動療法を組み合わせることで痛みの軽減や関節可動域の改善が報告されています。ただし効果には個人差があり、研究対象の範囲内での知見です。
Q. 膝の痛みは整体やオステオパシーで改善できますか?
A. 整体・オステオパシーでは膝だけでなく骨盤・足首・筋膜の連動を含めて全体を評価します。痛みの原因が関節以外の構造にある場合、アプローチの幅が広がることがあります。まずは専門家への相談をおすすめします。
Q. 膝の変形性関節症は手術しないと治らないですか?
A. 軽度〜中等度の変形性膝関節症では、徒手療法や運動療法などの保存的アプローチが第一選択として推奨されるケースもあります。手術の適否は医師と相談しながら、並行して身体機能の維持を図ることが大切です。

鈴木大樹(すずき だいき)
柔道整復師 / オステオパシー専門校在学中 / 産後リハビリ国際セミナー修了
茨城県龍ケ崎市で妻・佳代とともに整体院を営む整体師。食・自然療法・筋膜のつながりを臨床と学びの中で深め、「なぜ身体はそうなるのか」を発信し続けています。
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すーさん夫婦の龍ケ崎整体院
📍 茨城県龍ケ崎市愛戸町58-2(龍ケ崎郵便局から徒歩2分)
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