この記事は個人の体験談と参考書籍をもとにした健康情報です。医療的な診断・治療に代わるものではありません。持病のある方・服薬中の方は必ず主治医にご相談ください。
眠っても疲れが抜けない。天気が崩れる前に頭が重くなる。動悸がする、めまいがする、胃腸の調子が落ち着かない。病院で検査を受けても「異常はありません」と言われる。それでも、確かに何かがおかしい。
こうした状態を、私たちは「自律神経の乱れ」と呼びます。ただ、この言葉はあまりに広く使われていて、それが身体の中で何を指しているのかは、意外と語られていません。
このページは、龍ケ崎で整体院をしている柔道整復師が、自律神経について「身体の仕組みとして何が起きているのか」を一通り書いたものです。ひとつひとつのテーマは、それぞれ個別の記事で詳しく扱っています。気になったところから読み進めてください。
「検査では異常なし」と言われたあとに残るもの
血液検査もレントゲンも問題がない。それなのに不調が続く。この状況に置かれた方は、多くの場合ふたつのことで消耗しています。ひとつは症状そのものです。もうひとつは「気のせいなのだろうか」という迷いです。
ここで押さえておきたいのは、検査が見ているものの性質です。血液検査は血液の成分を、レントゲンは骨の形を見ます。どちらも「材料と構造」を調べる道具です。
一方で自律神経が担当しているのは、材料でも構造でもなく調整です。心臓をどのくらいの速さで打たせるか。胃腸をいつ動かすか。体温をどこに保つか。血管を広げるか狭めるか。これらを、私たちが意識しないところで決めています。
調整の不具合は、材料や構造を見る検査には映りにくいものです。だから「異常なし」と出ます。それは「何も起きていない」という意味ではなく、「その検査では見えていない」という意味です。
自律神経は「アクセルとブレーキ」だけではない
自律神経は、よく車にたとえられます。活動モードの交感神経がアクセル、休息モードの副交感神経がブレーキ、という説明です。この理解は入口としては便利ですが、実際の身体はもう少し複雑です。
近年よく取り上げられるようになった考え方に、副交感神経をさらに二つに分けて見るものがあります。ひとつは、人と関わったり表情を交わしたりしているときに働く、いわば「安全なときの休息」。もうひとつは、危険が大きすぎて逃げることも戦うこともできないときに働く、「固まる・動けなくなる」反応です。
この見方が役に立つのは、「休んでいるのに回復しない」状態を説明できるからです。ただ横になっていることと、身体が安全だと判断して回復に入ることは、同じではありません。動けないほど疲れているのに眠りが浅い、という状態は、後者の「固まる」に近いことがあります。
この考え方については、ポリヴェーガル理論とは?整体師が解説する自律神経と安全の仕組みで詳しく書いています。
「自律神経失調症」と言われたとき、それが指しているもの
病院で「自律神経失調症でしょう」と言われて、かえって混乱した経験のある方は少なくないと思います。病名がついたようで、つかなかったような感じがするからです。
実際、この言葉は少し特殊な位置にあります。臓器の名前がついた病名——たとえば胃潰瘍や椎間板ヘルニアのように「どこが、どうなっているか」を指す言葉ではなく、「調整がうまくいっていない状態」全体を指す呼び名に近いものです。
だから、こういうことが起こります。
- 検査をしても、それを示す数値が出てこない
- 症状が人によってまったく違う(頭痛の人もいれば、胃腸の人も、動悸の人もいる)
- 「気のせい」と受け取られてしまうことがある
ただ、名前がつきにくいことと、起きていないことは別です。心臓の速さ、胃腸の動き、体温、血管の太さ——これらを調整する仕組みは確かに存在していて、その調整が乱れれば身体は反応します。
私が身体を触っていて思うのは、「自律神経の乱れ」は原因の名前というより、結果の名前だということです。呼吸が浅い、胸が硬い、眠りが浅い、緊張が続いている——そうした積み重ねの結果として現れている状態を、まとめてそう呼んでいる。そう考えると、手をつけられる場所が具体的に見えてきます。
整体師として、実際に身体を触って見ていること
ここからは、教科書ではなく、実際に施術をしている中で感じていることを書きます。一般化できる話ではなく、あくまですーさん夫婦の龍ケ崎整体院に来られる方に多く見られる傾向です。
呼吸が浅い方が多い
自律神経の不調を訴えて来られる方に、最も共通して感じるのが呼吸の浅さです。ご本人に自覚がないことも珍しくありません。「深呼吸してみてください」とお願いすると、肩が上がるだけで、肋骨があまり動きません。そういう呼吸の仕方が癖になっている方が多いという印象があります。
胸のまわりが硬い
呼吸の浅さと関係していますが、胸郭——肋骨とその周囲——の硬さもよく感じます。胸が固まっていると、息を深く吸うこと自体が構造的に難しくなります。「深呼吸してください」と言われてもできない、という状態です。
睡眠が不規則、あるいは浅い
眠る時間がバラバラであること、寝つけても途中で目が覚めること。これらも高い頻度で伺います。ここは身体の状態と生活のリズムが混ざり合う部分で、どちらが先とも言いにくいところです。
首の後ろから頭のつけ根にかけて
首の後ろ、特に頭のつけ根あたりに強い硬さを感じる方が多くいます。ここは自律神経と関わりの深い神経が通る場所でもあります。この周辺に手を当てていると、呼吸が深くなっていく方がいます(個人差があります)。
そして、変化がゆっくりな方について
ここは書くかどうか迷った部分ですが、正直に書きます。
気分の落ち込みが続いている方は、身体だけを整えても変化がゆっくりなことが多い、というのが私の実感です。呼吸が深くなり、首や胸のまわりがゆるんできても、そこから先の変化に時間がかかります。
これは、身体へのアプローチに意味がないという話ではありません。ただ、身体だけで完結しない領域があるということです。私は医師ではないので、心の状態を見立てたり、医療として関わったりすることはできません。そういう場合は、心療内科や精神科の専門家に一度ご相談いただくこと、そして必要ならそちらと並行して身体を整えていくことをおすすめしています。
「整体に通えば良くなります」と言い切れないところを、言い切らずに書いておきたいと思いました。
呼吸——自分で触れられる、数少ない入口
自律神経は「自律」という名前の通り、意識では動かせません。心臓の速さを頭で命令することはできません。ただ、ひとつだけ例外があります。呼吸です。
呼吸は、放っておいても勝手に続きます。同時に、意識して深くしたり止めたりもできます。自動と手動の両方で動く、珍しい仕組みです。だから呼吸は、自律神経に対して私たちが働きかけられる、数少ない入口になります。
そのとき中心になるのが横隔膜です。胸とお腹を仕切っているドーム状の筋肉で、息を吸うときに下がり、吐くときに上がります。この動きは肺だけでなく、その下にある内臓にも影響します。
ここが硬くなると、呼吸が浅くなるだけでなく、内臓の位置や動きにも影響が出ることがあります。逆に、内臓の側の問題が横隔膜の動きを妨げていることもあります。
吸うより、吐くほうが大事な理由
「深呼吸をしましょう」と言われると、多くの方は大きく吸おうとします。ところが身体の仕組みから見ると、休息側に傾きやすいのは吐いているときです。
息を吸うときは心拍がわずかに速くなり、吐くときはわずかに遅くなります。健康な状態ではこの差がはっきりしていて、呼吸に合わせて心拍が波打ちます。逆に、緊張が続いている状態ではこの波が小さくなることが知られています。
つまり「ゆっくり長く吐く」ことは、休息側の神経に直接働きかけられる、数少ない手段だということです。特別な器具も場所も要りません。
浅い呼吸は、首と肩を巻き込みます
横隔膜が十分に働かないと、身体は別の筋肉で呼吸を補おうとします。首から鎖骨、肋骨の上のほうについている、本来は補助的な筋肉たちです。
これらは、激しい運動のときに一時的に使う設計になっています。ところが呼吸が浅い状態が続くと、安静にしているときでも働き続けることになります。 1日に2万回前後といわれる呼吸のたびに、です。
首や肩の慢性的な硬さの背景に、この構造があることは珍しくありません。「肩を揉んでもすぐ戻る」という方の身体を触っていると、呼吸の浅さに行き当たることがよくあります。揉んでも戻るのは、揉み方の問題ではなく、硬くなる理由がまだ動き続けているからだと考えています。
胸郭という「かご」
肋骨は、ただの骨の囲いではありません。呼吸のたびにわずかに広がり、閉じています。この動きが小さくなった状態を、私は「胸のかごが固まっている」と表現しています。
かごが固まると、いくら深く吸おうとしても入る量に限りが出ます。この状態で「深呼吸してください」と言われても、できないのは当然です。ご本人の努力不足ではなく、構造が動かないのです。
- 横隔膜×オステオパシー——呼吸の要が全身に与える影響を解剖学で解説
- 深呼吸できない肩こり|副呼吸筋の過活動が胸郭を縛るメカニズム
- 内臓下垂が自律神経を乱す?横隔膜と膜の連続性から読み解くメカニズム
- 一次呼吸機序(PRM)とは——オステオパシーの根幹概念をわかりやすく解説
呼吸の整え方や、日々の実践については、noteでより詳しく書いています。
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睡眠——眠れないのは結果であって、原因ではないことがある
「眠れないから自律神経が乱れる」と考えられがちですが、順序が逆のことがあります。身体が休息モードに切り替われないから、眠りが浅くなるのです。
夜になっても身体が活動モードのままだと、布団に入っても寝つけない、寝ても浅い、朝すっきりしない、ということが起こります。この場合、睡眠時間を延ばしても解決しません。8時間眠っても疲れが取れない、という状態がこれにあたります。
また、胃腸の状態も眠りに関わります。夜遅い食事や消化の負担は、身体を休息に切り替えにくくします。
- 8時間寝ても疲れが取れない原因|自律神経と睡眠の質の深い関係
- 胃腸の不調が眠れない夜をつくる|自律神経と内臓の深い関係
- 梅雨に眠れない理由は気圧と自律神経の乱れにあった
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疲れが取れない——休んでも戻らなくなるとき
疲労には、休めば戻るものと、休んでも戻りにくくなるものがあります。後者に入ると、週末に寝だめをしても月曜には元通り、ということが起こります。
ここには、身体を「活動モード」に保ち続ける仕組みが関わっています。緊張が続く生活が長引くと、身体はそれを常態として扱うようになります。すると、休むべき場面でも休息モードに入りにくくなります。
栄養面の関わりも無視できません。エネルギーを作る過程では、さまざまな栄養素が必要になります。甘いものに偏った食事は一時的に元気を出しますが、その裏で消費されるものもあります。
おなか——「第二の脳」と呼ばれる理由
腸には非常に多くの神経細胞があり、脳からの指令がなくても自分で動くことができます。「第二の脳」と呼ばれるのはこのためです。
そして腸と脳は、迷走神経という長い神経でつながっていて、情報のやりとりをしています。興味深いのは、この行き来が脳から腸への一方通行ではなく、腸から脳へ向かう情報の方がむしろ多いとされていることです。
「緊張するとお腹が痛くなる」は誰もが知っていますが、その逆——お腹の状態が気分に影響する経路も存在します。不安が続くときに、心だけでなくお腹を見る意味はここにあります。
天気と気圧——気のせいではありません
雨の前に頭が重い、台風が近づくと古傷が痛む。こうした訴えは長く「気のせい」と扱われてきましたが、身体の仕組みとして説明のつく部分があります。
気圧の変化は、耳の奥にある平衡感覚の器官が感じ取っているとされます。ここからの情報が自律神経に伝わり、身体が調整を始めます。この調整が過敏な方では、天気の変化そのものが負担になります。
湿度も関わります。汗が蒸発しにくい環境では体温調整の負担が増え、それも自律神経の仕事です。梅雨に不調を訴える方が増えるのは、気圧と湿度が同時に来るからだと考えています。
首と肩——自律神経が通る場所
首は、脳と身体をつなぐ通り道です。背骨の中を通る神経だけでなく、内臓に向かう迷走神経も、血管も、リンパの流れも、すべてこの細い場所を通っています。
首の後ろ、頭のつけ根にある小さな筋肉群は、頭を支え、目線を微調整する役割を持っています。パソコンやスマートフォンを長時間見る姿勢では、この筋肉が働き続けます。ここが硬くなると、その近くを通る神経に影響することがあります。
肩こりと自律神経が結びつくのも同じ理由です。緊張状態が続くと肩の筋肉は緩みにくくなり、緩まないことがまた緊張を長引かせます。この往復が続くと、どちらが原因とも言えない状態になります。
女性のリズムと自律神経
女性ホルモンの分泌は、脳の視床下部という場所が司令塔になっています。そしてこの視床下部は、自律神経の司令塔でもあります。同じ場所が両方を担当している——これが、ホルモンの変化と自律神経の不調が同時に起こりやすい理由のひとつです。
更年期の時期に、肩こり・ほてり・不眠・気分の波が重なって現れるのは、この構造から説明がつきます。月経前の不調も同様です。
こういうときは、医療機関へ
ここまで身体の仕組みの話をしてきましたが、自律神経のせいにしてはいけない症状があります。以下にあてはまる場合は、まず医療機関を受診してください。
- 突然の激しい頭痛、これまで経験したことのない頭痛
- 胸の痛み、締めつけられる感じ、息苦しさが続く
- 手足の力が入らない、しびれが片側だけに出ている、ろれつが回らない
- 意識が遠のく、実際に倒れたことがある
- 体重が意図せず減っている、発熱が続いている
- 気分の落ち込みが長く続き、日常生活が送れない
- 眠れない状態が何週間も続いている
特に最後の二つについては、前述の通り、身体を整えるだけでは変化がゆっくりなことが多いと感じています。心療内科・精神科の受診を先にご検討ください。
今日から意識できること
具体的な手順はnoteに譲りますが、方向性だけお伝えします。
ひとつ目は、息を吐く時間を少し長くすること。 深く吸おうとするより、ゆっくり吐くほうが身体は休息側に傾きやすいと言われています。特別な時間を取らなくても、気づいたときに意識するだけで構いません。
ふたつ目は、起きる時間を一定にすること。 寝る時間ではなく起きる時間です。身体のリズムは朝の光で調整されるため、起床時刻のほうが影響が大きいとされています。
三つ目は、食事の時間帯を安定させること。 何を食べるかの前に、いつ食べるかです。特に夜遅い食事は、身体を休息に切り替えにくくします。
いずれも地味ですが、自律神経は「頑張って整えるもの」ではなく、整いやすい条件を用意して待つものだと考えています。
食事と身体のつながり、呼吸の実践、日々の整え方については、noteで整体師の実体験とともに詳しく書いています。
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よくいただく質問
Q. 自律神経の乱れは、放っておいても落ち着きますか
一時的な負荷(睡眠不足や忙しい時期)が原因であれば、その負荷が減るとやわらいでくることがあります。ただし、負荷が続いている状態では、そのままでは変わりにくいというのが実感です。まずは「何が身体を活動モードに保っているのか」を見つけるところからだと考えています。個人差が大きい部分です。
Q. 病院は何科にかかればいいですか
症状によって窓口が変わります。動悸や胸の症状であれば循環器内科、胃腸であれば消化器内科、めまいであれば耳鼻咽喉科というように、まず出ている症状の科で調べていただくのが一般的です。そのうえで「異常なし」となった場合に、心療内科や女性であれば婦人科が候補になります。気分の落ち込みが強い場合は、最初から心療内科・精神科をおすすめします。
Q. どれくらいで変わりますか
これは正直に申し上げて、人によって大きく違います。呼吸の深さや首まわりの硬さは比較的早く変化を感じる方が多い一方で、睡眠のリズムや疲れの抜け方は時間がかかる印象があります。数回で楽になる方もいれば、数か月かけてゆっくり変わっていく方もいます。効果を保証するものではありません。
Q. 運動はしたほうがいいですか
身体を動かすこと自体は、多くの場合プラスに働くと考えています。ただし、疲れが抜けない状態で強い運動をすると、かえって消耗することがあります。息が上がりきらない程度の散歩から始めて、翌日に残らない範囲を探るのが現実的だと思います。
Q. 整体で自律神経は整いますか
「整えることがある」というのが、私に言える範囲です。呼吸が深くなる、首や胸のまわりがゆるむ、といった変化を感じる方はいらっしゃいます(個人差があります)。ただし前述の通り、身体だけで完結しない場合もありますし、医療機関で調べるべき症状もあります。整体はその代わりにはなりません。
Q. 自分でできることはありますか
「今日から意識できること」の節に書いた3つ——息を吐く時間を長くする、起きる時間を一定にする、食事の時間帯を安定させる——から試してみてください。具体的な手順や実践の詳細は、noteで扱っています。
おわりに
自律神経の不調は、目に見えず、検査にも映らず、周囲にも伝わりにくいものです。その分だけ、ご本人が抱え込みやすい種類の不調です。
ただ、身体の仕組みとして見ていくと、説明のつく部分は思っているより多くあります。呼吸が浅いこと、胸が硬いこと、首の後ろが緊張していること、眠りが浅いこと——それぞれは別々の問題に見えて、つながっていることがあります。
このページから、気になったところの記事へ進んでみてください。ご自身の身体で起きていることの見当がつくと、それだけでも少し楽になることがあります。
参考にした文献・書籍
- Porges SW. The polyvagal perspective. Biological Psychology. 2007(PMID: 17049418)
- Bonaz B, Bazin T, Pellissier S. The Vagus Nerve at the Interface of the Microbiota-Gut-Brain Axis. Frontiers in Neuroscience. 2018(PMID: 29467611)
- Netter FH『ネッター解剖学アトラス』
- Stecco L『筋膜マニピュレーション』
免責事項:本記事は個人の体験談および一般的な健康情報の提供を目的としており、医療診断・治療に代わるものではありません。同様の効果を保証するものではありません。持病のある方・服薬中の方は生活習慣の変更前に必ず主治医にご相談ください。