「作り置きって、実は体に悪いの?」週の頭にまとめて調理して冷蔵庫にストックする——忙しい現代人には当たり前の習慣ですが、整体師として身体を診続けてきた視点から言うと、そこには見過ごせない問題がいくつか潜んでいる可能性があります。時間が経った食事が身体の中でどう働くのか、栄養・消化・炎症という三つのキーワードで丁寧に解き明かしていきます。
「まとめて作れば楽で健康的」——その前提は本当に正しいか
作り置きのメリットはわかりやすいです。時間の節約、食費のコントロール、外食を減らせる——どれも理にかなっています。でも「健康的か」という問いに対しては、少し立ち止まって考える必要があると感じています。
食事の価値を考えるとき、多くの人は「何を食べるか(食材の種類・栄養素)」に注目します。野菜を入れた、タンパク質もとった、と。しかし整体師やオステオパシーを学ぶ立場から見ると、「いつ食べるか」「どんな状態で食べるか」も同じくらい重要だと感じています。食の鮮度という観点が、現代の栄養学の議論からは抜け落ちやすいのです。
たとえば、月曜日に作ったほうれん草のおひたしを金曜日に食べる。見た目は変わらなくても、そこで起きていることは月曜日とはかなり異なる可能性があります。では、具体的に何が変わるのでしょうか。
「健康的な習慣」の定義が揺らぐとき
ここで一度、前提を問い直してみましょう。「手作りの野菜料理を毎日食べている」は健康的です。でも「3日前に作った手作り野菜料理を食べ続けている」は、少し話が変わってくる可能性があります。食材の質・調理法・保存状態・食べるタイミング——これらが組み合わさって初めて、食事の身体への影響が決まると考えられます。
「良い食材を使っているから大丈夫」という安心感が、時間経過による変化への意識を薄くしてしまうことがあります。作り置きが習慣化しているほど、こうした盲点が生まれやすいと感じています。
時間経過で食事に何が起きているか——酸化・栄養劣化・消化負荷のメカニズム
食事が時間とともにどう変化するか、いくつかの観点から整理してみます。
酸化という静かな劣化
調理した食品は、空気に触れた瞬間から酸化が始まります。特に脂質は酸化しやすく、加熱調理・冷蔵保存・再加熱というプロセスを経るほど、過酸化脂質(酸化した脂の副産物)が生成されやすくなると言われています。
酸化した食品を摂取することで、体内での酸化ストレスが高まる可能性があります。酸化ストレスとは、体内の「錆び」のようなもので、細胞にダメージを与え、炎症反応を誘発する引き金になり得るとされています。身体はこの酸化ストレスに対抗しようとしますが、その負担が慢性的に積み重なることへの懸念が、近年の研究でも議論されています。
栄養素の時間的な変化
ビタミンCやB群などの水溶性ビタミンは、調理・保存の過程で比較的失われやすいとされています。特に野菜は細胞が壊れた状態(加熱後・カット後)だと、酵素反応や酸化によって栄養素の変化が進みやすくなります。
また、食品には消化を助ける酵素(消化酵素)が含まれているものがあります。特に生の野菜や果物、発酵食品などに多く見られますが、加熱・長期保存によってその働きが低下する可能性があります。消化酵素が少ない食事を繰り返すと、消化器系が自前でより多くの酵素を分泌しなければならず、内臓への負担が増えている可能性があります。
温め直しが加える負荷
作り置きの多くは、食べる前に温め直します。この再加熱のプロセスも、食品の性質を変える要因のひとつです。特に電子レンジによる急速加熱は、食品内部の水分分布を不均一にし、タンパク質の変性パターンも変わる可能性があると言われています。
整体師として内臓の機能にも関心を持つようになってからは、「同じ食材でも、状態によって消化のしやすさが変わる」という視点を大切にするようになりました。温め直した食事が必ずしも悪いわけではありませんが、それが毎日・毎食続く状況には、内臓疲労という観点から慎重に見ていく必要があると感じています。
腸・炎症・内臓連動から見る「古い食事」の身体への影響
腸内細菌叢(腸の中に住む細菌の集まり)への影響という観点も、近年注目されています。研究では、腸内細菌叢と食習慣が炎症反応に影響を与えるとされており、抗炎症的な食事アプローチが慢性的な不調をサポートする選択肢となり得る可能性が報告されています。
時間が経った食事は、腸内でどのように働くのでしょうか。鮮度の低下した食品は、腸内で悪玉菌の増殖を促しやすい環境をつくる可能性があると考えられます。腸内細菌叢のバランスが乱れると、腸の粘膜バリアが弱まり、本来通過すべきでない物質が腸壁を通過しやすくなる——いわゆる「リーキーガット(腸漏れ)」と呼ばれる状態につながる可能性があると言われています(ただしこの概念は研究段階のものも多く、医学的なコンセンサスが定まっているわけではありません)。
慢性炎症と内臓への波及
慢性炎症は、痛みや疲労感、消化不良、肌の不調など、さまざまな症状の根底にある可能性があります。関節リウマチや子宮内膜症などの慢性炎症性疾患において、食事・栄養介入が痛みや症状の管理に寄与する可能性が示されているという報告もあります。これは、食事の内容だけでなく、食事の「状態」も炎症に影響しうるという視点につながります。
オステオパシーを学ぶ中で興味深いと感じたのは、内臓はそれぞれが連動しているという考え方です。たとえば、消化器系(特に小腸・大腸)への継続的な負担は、その周囲の組織の緊張を高め、腰や骨盤帯、さらには肩や頭部にまで影響が波及する可能性があると考えられています。
当院の臨床経験では、作り置きを中心とした食生活を続けている患者さんのなかに、慢性的な消化の重さや疲れやすさを訴える方が一定数いらっしゃる印象があります。ただしこれは個人的な臨床上の傾向であり、因果関係を断言するものではありません。
龍ケ崎や茨城近郊の患者さんから食生活の話を聞くと、「忙しいから週末にまとめて作る」という方が非常に多く、作り置きは現代人の食生活に深く根付いていることを実感します。だからこそ、その習慣の中に潜むリスクをていねいに伝えていきたいと思っています。
食と身体のつながりを、整体師の実体験と資料の両方から掘り下げた内容はnoteにあります。
→ https://note.com/honest_rose9929
整体師として食生活を変えて気づいたこと——鮮度と身体のつながりをどう考えるか
私自身は数年前から、平日はほぼ植物中心の食事を取り入れています。以前は痛風の発作に悩んでいたのですが、食生活を変えてから発作が起きにくくなってきた感覚があります。また、血圧の数値も以前より落ち着いてきた感覚があります。ただしこれはあくまで個人の体験であり、同様の効果を保証するものではありません。
食生活を見直す中で気づいたのは、「何を食べるか」と同じくらい「いつ・どんな状態のものを食べるか」が、身体の感覚に影響しているかもしれないということです。作り置きを減らし、できるだけ調理してすぐのものを食べるようにしてから、消化の重さが変わった感覚があります。
「鮮度」という視点を食習慣に取り入れるとしたら
食の鮮度を意識することは、高価な食材を買うこととは別の話です。日常の中で少し意識をずらすだけで、身体への影響が変わってくる可能性があります。
- すべての作り置きをやめる必要はありませんが、「何日前に作ったか」を意識することは大切です
- 特に脂質を含む料理(炒め物、揚げ物、肉料理)は酸化しやすいため、早めに食べ切ることが望ましいと考えられます
- 野菜は切ってから時間が経つほど栄養素の変化が進むため、できれば食べる直前に調理することが理想です
- 腸内細菌叢のバランスを整えるという観点では、発酵食品など、腸に働きかけやすい食品を毎食少量取り入れる方向性も考えられます
ただし、具体的な食事の実践内容については個人差が大きく、持病のある方や服薬中の方は必ず主治医にご相談の上で取り組んでください。
龍ケ崎の整体院で患者さんと話をしていると、「食事に気を遣っているのに疲れが抜けない」という声をよく聞きます。食材の選択だけでなく、食事の鮮度や状態まで含めた視点が、そのヒントになる場合があると感じています。こうした症状や状態が続く場合、あるいは強い痛みや著しい体調の変化がある場合は、自己判断せず医療機関にご相談ください。
オステオパシーの専門校で学びながら感じるのは、身体は構造(骨・筋肉・筋膜)と内臓と、そして日々の食事がすべてつながって動いているということです。作り置きという習慣を否定するのではなく、「時間と食事の関係」という視点を持つことで、食生活の質が少し変わってくる可能性があります。
まとめ
作り置きそのものが「悪い」わけではありませんが、時間経過による酸化・栄養変化・消化負荷の問題は、見過ごしにくいと感じています。食の鮮度、腸内細菌叢への影響、慢性炎症との関係——これらを「仕組み」として理解することが、食習慣を見直す第一歩になるかもしれません。何日前に作ったものを食べているか、ぜひ一度振り返ってみてください。
参考文献
本記事の作成にあたり参照した研究論文です(内容は要約・意訳したものであり、原文の直接引用ではありません)。
- Overview of Rheumatoid Arthritis and Scientific Understanding of the Disease(Mediterr J Rheumatol 2023) PubMed
- Dietary and Nutritional Interventions for the Management of Endometriosis(Nutrients 2024) PubMed
よくある質問
Q. 作り置きの食事は何日まで食べても大丈夫ですか?
A. 衛生面では冷蔵で2〜3日が目安とされますが、栄養の酸化や消化のしやすさを考えると、作ってから時間が経つほど身体への負担が変化する可能性があります。日数だけでなく「状態」で判断する視点も大切です。
Q. 温め直しをすると栄養はどのくらい失われますか?
A. 加熱のたびにビタミンCや葉酸などの熱に弱い栄養素は失われやすく、油脂の酸化も進みます。特に繰り返し加熱した食事は消化酵素の働きにも影響するとされており、単純な「栄養量」以外の変化にも目を向ける必要があります。
Q. 作り置きをやめたら体調は変わりますか?
A. 個人差はありますが、新鮮な食事中心に切り替えることで消化の軽さや倦怠感の変化を感じる方は少なくありません。腸内環境や炎症反応との関係も研究で示されており、食の鮮度は身体の状態に影響し得ます。
鈴木大樹(すずき だいき)
柔道整復師 / オステオパシー専門校在学中 / 産後リハビリ国際セミナー修了
茨城県龍ケ崎市で妻・佳代とともに整体院を営む整体師。食・自然療法・筋膜のつながりを臨床と学びの中で深め、「なぜ身体はそうなるのか」を発信し続けています。
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📍 茨城県龍ケ崎市愛戸町58-2(龍ケ崎郵便局から徒歩2分)
📞 080-3406-6568 🕐 平日9:00〜21:00 / 土曜8:30〜15:30
この記事は「食事と栄養」についての解説の一部です。炎症・血糖・ミネラル・腸とのつながりをまとめて読みたい方は、食べたものが痛み・こり・疲れに関わる理由|炎症と身体の仕組み をご覧ください。

