加工食品が体を壊す理由|腸と慢性炎症のメカニズム

自然療法

この記事は個人の体験談と参考書籍をもとにした健康情報です。医療的な診断・治療に代わるものではありません。持病のある方・服薬中の方は必ず主治医にご相談ください。

「食生活が体に悪いのはわかってる。でも、どう悪いのかまではよく知らない」——そう感じている人は多いはずです。近年の複数のコホート研究では、超加工食品(UPF)の摂取量が多いほど、非アルコール性脂肪肝・骨粗しょう症・がん既往者の死亡率が高まる可能性が示されており、その背景に慢性炎症という共通のメカニズムが浮かび上がっています。柔道整復師としてオステオパシーの専門校で学んでいる私が、論文の知見と施術の現場で感じてきた実感を交えながら、「なぜ加工食品が全身を蝕む可能性があるのか」を仕組みから解き明かしていきます。

コホート研究が示す「超加工食品と死亡リスク」の衝撃的な数字

超加工食品(Ultra-Processed Food、以下UPF)とは、工業的な製造工程を経て複数の添加物・香料・乳化剤・保存料などが加えられた食品のことを指します。袋入りのスナック菓子、インスタント麺、市販のソーセージ、甘い清涼飲料水、コンビニ弁当の一部などが典型例として挙げられます。「食品を加工したもの」という意味での「加工食品」とは区別が必要で、UPFはその中でも特に工業的な処理が重なったカテゴリーです。

近年のコホート研究(大規模な集団を長期追跡する疫学研究)では、UPFの摂取割合が高い人ほど様々な健康アウトカムへの影響が示されています。具体的には以下のような可能性が報告されています。

  • 非アルコール性脂肪肝(NAFLD)との関連:アルコールをほとんど飲まないにもかかわらず肝臓に脂肪が蓄積する状態であるNAFLDのリスクが、UPF摂取量の多いグループで高まる可能性が示されています。
  • 骨粗しょう症との関連:UPFの摂取が多い群では、骨密度の低下や骨粗しょう症リスクの上昇との関連を示した研究報告があります。
  • がん既往者の死亡率との関連:がんの治療歴がある人において、UPF摂取量が多いほど死亡率が高まる可能性が示されており、慢性炎症を介した生物学的メカニズムが関与している可能性があるとされています。

重要なのは、これらはいずれも「可能性」「関連」の段階であり、UPFが直接これらの疾患を「引き起こす」と確定されたわけではないという点です。コホート研究は相関を示すものであり、因果関係の証明には至っていないケースも多くあります。ただし、複数の独立した研究が同じ方向性を示しているという事実は、無視できない重みを持っています。

なぜUPFがこれほど多くの健康問題と関連している可能性があるのか——その鍵が、次に解説する「腸内環境の乱れ」と「慢性炎症」というメカニズムにあると考えられています。

慢性炎症はなぜ起きるのか|腸内環境と免疫シグナルの連鎖

腸内細菌叢の乱れ(ディスバイオシス)から始まる連鎖

私たちの腸の中には、数百兆個ともいわれる腸内細菌が暮らしており、これを腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)と呼びます。この腸内細菌叢のバランスが崩れた状態を「ディスバイオシス」と言います。UPFに多く含まれる乳化剤・人工甘味料・保存料などの食品添加物は、腸内環境に影響を及ぼす可能性があると複数の研究で示されています。

腸内細菌叢のバランスが崩れると、腸の粘膜バリアの機能が低下する可能性があります。健康な腸では、腸の内壁を覆う上皮細胞が密に結合し、外側(腸の中)と内側(体内)の境界を保っています。このバリアが弱まると、腸内の細菌や細菌の断片(LPS:リポ多糖)が体内へ漏れ出しやすくなる、いわゆる「リーキーガット(腸管透過性亢進)」の状態に近づく可能性があります。

免疫シグナルの暴走が「慢性炎症」を生む

腸の内側から体内に入り込んだLPSなどの異物を、免疫細胞は「敵」として認識し、炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-6、IL-1βなどのタンパク質)を放出して対応します。本来、炎症は一時的な防御反応であり、脅威が去れば収まるものです。しかし、UPFを習慣的に摂り続けることで腸内環境への負担が慢性的に続くと、免疫システムが低レベルで活性化され続ける「慢性炎症(全身性の低度炎症)」の状態に近づく可能性があります。

この慢性炎症という状態が、なぜ肝臓や骨、さらにはがん既往者の予後にまで影響を及ぼす可能性があるのか、整理しておきます。

  • 肝臓への影響(非アルコール性脂肪肝・NAFLDとの関連):腸から吸収された物質は門脈を通じて最初に肝臓へ運ばれます。慢性的な炎症性サイトカインへの曝露や脂質代謝への負荷が、肝臓に脂肪が蓄積するNAFLDのリスクに関与している可能性があるとされています。
  • 骨への影響(骨粗しょう症との関連):炎症性サイトカインは骨を壊す破骨細胞の活性化に関与する可能性があります。また、UPFに多い精製糖・リン酸塩がカルシウム代謝に影響を与える可能性も指摘されています。
  • がん既往者への影響:慢性炎症は腫瘍微小環境に影響を与える可能性があり、がんの再発・進行と関連するメカニズムとして研究が進んでいます。ただしこの領域は研究途上であり、断定的な結論はまだ出ていません。

食品添加物が腸内環境に与える影響、そして慢性炎症が全身に波及する仕組みは、「加工食品が体に悪い」という漠然とした感覚を、仕組みとして理解するための重要な視点です。こうした症状や状態が続く場合は、自己判断せず医療機関にもご相談ください。

食が身体をつくる仕組みと、痛みをどう見るかについては、noteにもまとめています。
食と身体のつながりを整体師の実体験とともに(note)

整体師・オステオパシーの目線から見る「炎症が構造を壊す」仕組み

内臓の「動き」と慢性炎症の関係

オステオパシーでは、身体の各臓器が呼吸や姿勢変化に応じてわずかに動く「自動力(モティリティ)」を持つと考えます。たとえば肝臓は1回の呼吸で数ミリ動き、腎臓は1日に換算すると約600cmもの移動距離があるとされています。この「動き」が健全に保たれていることが、臓器の血流・リンパ流・神経伝達にとって重要だと考えられています。

慢性炎症が長く続くと、臓器を包む漿膜(しょうまく)や周辺組織に変性が生じ、隣接する組織との間に癒着が起きやすくなる可能性があります。癒着が生じると、本来あるべき臓器の動きが制限されます。オステオパシーの視点では、この「制限」が一つ生じると、周辺の臓器や筋骨格系へ連鎖的に影響が波及していく「病変連鎖」が起きる可能性があると考えます。

たとえば肝臓の動きに制限が生じると、右横隔膜の動きにも影響が及び、やがて右肩の可動域が低下するケースが臨床的に報告されています。腸の動きが制限されれば、腸間膜を介して腰椎や骨盤の動きにも影響が波及する可能性があります。「なぜ腰が痛いのに腸の調子も悪いのか」という疑問の背景には、こうした連鎖がある可能性があります。

施術の現場で感じていること

すーさん夫婦の龍ケ崎整体院には、茨城県内はもちろん遠方からいらっしゃる方もいます。施術の現場で、食生活の偏りがある方とそうでない方を比べたとき、あくまでこれまで診てきた範囲での印象ですが、前者のほうが腹腔内の組織の緊張感が強い傾向を感じることがあります。特にUPFを頻繁に摂っていると話してくださる方では、肝臓や腸管まわりの組織の弾力性が乏しく感じられるケースがある印象です。これは私の施術感覚に基づく傾向であり、医学的な診断ではありません。

また、私自身の個人的な体験として、植物中心の食事を続けるようになってから、痛風発作が以前より起きにくくなってきた感覚があります。血圧の数値も以前より落ち着いてきたと感じています(いずれも個人の体験であり、同様の変化を保証するものではありません)。食事を変えてから身体の「質」が変わった感覚は、施術の視点にも少なからず影響を与えていると感じています。

慢性炎症が構造に影響を与える可能性という視点は、「痛いところだけを触って終わり」という施術では見えてこない部分です。なぜ痛みが繰り返されるのか、なぜ同じ場所が何度も緊張するのか——その背景に、食生活や腸内環境が関与している可能性がある、という視点を持つことが、施術の深さにつながると考えています。

食と身体のつながりを、整体師はどう考えているか

「食が全身をつくる」という視点

私が施術の軸として大切にしているのは、BODY(構造・内臓・頭蓋)× MIND(食事・自然療法)× SPIRIT(全体性)という三軸の考え方です。この中で「MIND」に食事を含めているのは、食が単なるエネルギー源ではなく、腸内環境・免疫・炎症・ホルモン・神経伝達のすべてに関与する「情報」だという認識からです。

『チャイナスタディ』や『HOW NOT TO DIE』(マイケル・グレガー著)などの書籍では、植物中心の食事が慢性疾患のリスク低減に関連する可能性を大規模データから示しています。また、長寿地域の生活習慣を記録した『ブルーゾーン』の研究でも、共通して食の質と腸内環境への配慮が見られます。これらはあくまで観察的な研究であり、万人への処方箋ではありませんが、「食と全身の健康は切り離せない」という方向性は、複数の視点から支持されています。

UPFを「減らす」ことの意味

UPF 慢性炎症の関連を理解したとき、「では何を食べればいいのか」という問いが自然に出てきます。ここで注意したいのは、「特定の食品を排除すれば健康になる」という単純な発想に陥りやすい点です。食は文化であり、楽しみでもあります。私自身、平日は植物中心食を基本にしつつ、週末はBBQや肉・刺身も食べる、ゆるいスタイルを続けています。完全な排除より、全体としてUPFの割合を下げていくという方向性のほうが、長続きしやすいと個人的に感じています。

腸内細菌叢を整えるという観点では、食物繊維(発酵食品・野菜・豆類など)を日常的に摂ることが腸内環境の多様性維持に関連するとされています。ただし、具体的な食品の摂り方・量・組み合わせについては、個人の状態によって異なります。食と身体のつながりについての実践的な内容は、noteで整体師の実体験とともに詳しく書いています。
食と身体のつながり(note)

整体師として伝えたいこと

日々の施術のなかで感じるのは、身体の痛みや不調の「背景」を一緒に探ることの大切さです。構造的なアプローチだけでなく、食・腸・炎症という視点を持つことで、「なぜこの痛みが繰り返されるのか」という問いに、より広い角度から向き合えるようになる場合があります。UPF摂取と慢性炎症の関連を示すコホート研究の知見は、施術者としての見方を広げてくれると同時に、日常の食の選択を見直す一つのきっかけになると感じています。

「食生活が体に悪いのはわかってる」——その先の「どう悪いのか」を知ることが、変化への最初の一歩になることがあります。すべてを完璧にしようとするより、今日の一食から少しずつ、という視点でいられると無理なく続けやすいと感じています。

まとめ

超加工食品(UPF)の過剰摂取は、食品添加物による腸内細菌叢(ディスバイオシス)の乱れを介して慢性炎症を引き起こす可能性があります。複数のコホート研究では、UPFと非アルコール性脂肪肝・骨粗しょう症・がん既往者の死亡率との関連が示されており、炎症性サイトカインを介した全身への影響が研究されています。整体師・オステオパシーの視点では、慢性炎症が内臓の動きや組織の柔軟性に影響する可能性があり、食と身体の構造は切り離せないと考えています。不調が続く場合は、必ず医療機関にご相談ください。

免責事項:本記事は個人の体験談および一般的な健康情報の提供を目的としており、医療診断・治療に代わるものではありません。同様の効果を保証するものではありません。持病のある方・服薬中の方は生活習慣の変更前に必ず主治医にご相談ください。

 

参考文献

本記事の作成にあたり参照した研究論文です(内容は要約・意訳したものであり、原文の直接引用ではありません)。

  1. Ultra-processed Food and Mortality among Long-Term Cancer Survivors from the Moli-sani Study: Prospective Findings and Analysis of Biological Pathways(Cancer Epidemiol Biomarkers Prev 2026) PubMed
  2. Ultra-processed food consumption and the risk of non-alcoholic fatty liver disease in the Tianjin Chronic Low-grade Systemic Inflammation and Health Cohort Study(Int J Epidemiol 2022) PubMed
  3. Ultra-processed food consumption, mediating biomarkers, and risk of chronic obstructive pulmonary disease: a prospective cohort study in the UK Biobank(Food Funct 2023) PubMed

よくある質問

Q. 超加工食品ってどんな食品のことですか?

A. 市販のスナック菓子・インスタント麺・ソーセージ・甘い飲料など、工業的な製造工程を経て複数の添加物が使われた食品が該当します。NOVAという食品分類システムのグループ4に分類される食品群です。

Q. 加工食品を食べると腸内環境が乱れるのはなぜですか?

A. 乳化剤や人工甘味料などの添加物が腸粘膜のバリア機能を低下させ、腸内細菌のバランスを崩すことが動物実験や観察研究で示されています。これがリーキーガット(腸管透過性亢進)や慢性炎症の引き金になる可能性があります。

Q. 慢性炎症と骨粗しょう症や脂肪肝はどうつながっているのですか?

A. 慢性炎症によって産生される炎症性サイトカインは、骨代謝を乱して骨吸収を促進したり、肝臓での脂質代謝を障害したりすることが研究で報告されています。超加工食品の摂取が多いほどこれらのリスクが高まる可能性が示されています。

鈴木大樹

鈴木大樹(すずき だいき)

柔道整復師 / オステオパシー専門校在学中 / 産後リハビリ国際セミナー修了

茨城県龍ケ崎市で妻・佳代とともに整体院を営む整体師。食・自然療法・筋膜のつながりを臨床と学びの中で深め、「なぜ身体はそうなるのか」を発信し続けています。

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