右肩だけこる原因|筋膜と内臓の連動から

肩こり
この記事は個人の体験談と参考書籍をもとにした健康情報です。医療的な診断・治療に代わるものではありません。持病のある方・服薬中の方は必ず主治医にご相談ください。

左肩はなんともないのに、右肩だけがいつも重い。揉んでもらった直後は軽くても、数日でまた同じ場所が張ってくる——そんな左右差には、腕の使い方だけでは説明しきれない理由が隠れていることがあります。右肩や右の肩甲骨の内側の痛みは、肩そのものよりも「そこに張力を集めている別の場所」が関わっていることも少なくありません。この記事では、右肩に負担が集まる仕組みを筋膜・横隔膜・内臓・自律神経のつながりから、整体師の視点で紐解いていきます。

右肩だけがつらい——左右差は「使いすぎ」だけでは説明できない

「右利きだから右肩がこるんでしょう」——これは多くの方が最初に思い浮かべる答えで、実際に無関係ではありません。利き手側は物を持つ、マウスを操作する、包丁を握る、ハンドルを回すといった動作の回数が単純に多く、姿勢の左右差も生まれやすい。ここまでは納得しやすい話です。

ただ、施術の現場で気になるのは、左利きの方でも右肩がつらいと訴えるケースが一定数あることです。また、右腕をほとんど使わない生活をしている方が右肩の重さを訴えることもあります。「使いすぎ」だけが原因なら、こうしたズレは説明がつきません。

左右差が生まれる要素を分けて考える

肩こりの左右差の原因を整理すると、少なくとも次のような層に分かれます。

  • 動作の層:利き手による使用頻度、デスクの配置、カバンをかける側
  • 骨格・姿勢の層:骨盤の回旋、胸郭のねじれ、頭部の傾き
  • 膜の層:筋膜連続性による離れた部位からの張力の伝わり
  • 内臓・呼吸の層:横隔膜の緊張、右上腹部にある臓器との位置関係
  • 自律神経の層:緊張状態が続くことによる姿勢筋の持続的な収縮

揉んで一時的にゆるむのは主に「筋肉そのもの」の層です。そこだけにアプローチしても数日で戻るなら、より下の層——膜や呼吸、内臓の位置関係——が張力を再生産している可能性があります。

そしてもう一つ、身体は左右対称ではありません。肝臓は右の横隔膜の下に、心臓はやや左に、胃は左寄りに位置しています。左右で中身の重さも形も違う以上、そこに接する横隔膜や胸郭の動き方に差が出るのは、構造的にはむしろ自然なことです。

右肩と右の肩甲骨に負担が集まる解剖学的な理由|筋膜連続性と横隔膜

ここからが本題です。右肩の話をするとき、整体師が必ず見るのが横隔膜横隔神経という二つのキーワードです。

横隔神経が肩と横隔膜をつないでいる

横隔膜は、首の骨(頸椎)のC3〜C5から出る横隔神経という神経に支配されています。首の付け根から出た神経が、胸を通って横隔膜まで下りていく。これは発生の過程で横隔膜のもとになる組織が首のあたりから下降してきた名残とされています。

この解剖学的な事実が意味するのは、横隔膜まわりで起きた刺激が、同じ神経の支配領域である肩や首のあたりの感覚として認識されることがあるということです。医学的には「関連痛」と呼ばれる現象で、横隔膜の下面への刺激が肩の症状として現れうることは、臨床的によく知られています。

そして横隔膜の右側の下には、体内で最も重い臓器である肝臓が、膜を介してぴたりと接しています。右のドームは肝臓の分だけ左より高い位置にあり、動きの条件も左右で異なります。

筋膜連続性——肩甲骨の内側の痛みが肩の外にある理由

もう一つの経路が筋膜連続性です。筋膜は個々の筋肉を包むだけでなく、全身を切れ目なくつなぐネットワークとして働いています。ある部位の張力は、隣の組織へ、さらにその隣へと伝わっていく。

この視点で見ると、右の肩甲骨の内側の痛みは、肩甲骨まわりの筋肉だけの問題とは限りません。

  • 横隔膜の右脚の緊張 → 下部胸椎・腰椎の動きの制限
  • 胸郭のねじれ → 肋椎関節(肋骨と背骨の関節)の動きの低下
  • 肋骨の動きの低下 → 肩甲骨の土台が動かない → 菱形筋・僧帽筋中部の持続的な負担

肩甲骨は背中の上を滑るように動く骨で、その「床」にあたるのが肋骨です。床が硬ければ、上に乗っている肩甲骨は動かしづらくなり、周囲の筋肉が常に踏ん張ることになります。肩甲骨の内側が張るのは、結果として表に出てきたサインという見方もできるわけです。

研究の領域でも、筋膜へのアプローチが肩の痛みや動かしにくさの軽減に役立つとされ、乳がん術後の方を対象とした報告では可動域や姿勢、生活の質の変化がみられたとされています。またデスクワーク中心のIT従事者を対象にした研究でも、軟部組織への働きかけが肩甲骨まわりの痛みや姿勢の崩れに変化をもたらしたという報告があります。筋膜が肩まわりの状態に関わる要素の一つであることは、少しずつ検証が進んでいる段階です。

右肩こりと内臓の関係|肝臓・胆のうと自律神経から読み解くオステオパシーの視点

ここでいう「内臓」は、病気があるという話ではありません。オステオパシーで扱うのは、臓器そのものの疾患ではなく、臓器が周囲の膜のなかでどれくらいなめらかに動けているかという観点です。

肝臓は「動く臓器」である

肝臓は約2kgの重さがあり、横隔膜の下面に靭帯と膜でぶら下がるように固定されています。そして呼吸のたびに、押し下げられ、また戻るという動きを一日中くり返しています。肋骨の内側という見えない場所で、絶えずわずかに回旋しながら動いている臓器です。

この動きが何らかの理由で乏しくなると、肝臓を包む膜の張力が変わり、それが接している横隔膜へ伝わります。横隔膜の動きが変われば、先ほどの横隔神経の経路を通じて右肩まわりの感覚に影響が及ぶ可能性が考えられます。「肝臓 右肩 こり」という検索がされるのは、こうした解剖学的なつながりが背景にあるからです。

内臓マニピュレーションの臨床報告では、肝臓や胆のうまわりへの働きかけのあとに右肩の動きに変化がみられた例が記録されています。胆のうも右上腹部にあり、右肩や右の背部の症状と関連づけて語られてきた臓器です。ただし、これらは臨床上の観察であって、「右肩がこる=肝臓が悪い」という意味ではありません。そこは慎重に切り分けて考える必要があります。

右肩こりと自律神経の乱れ

もう一つの軸が自律神経です。内臓の働きと血流は自律神経が調整しており、その中枢の一部は横隔膜のすぐ後ろ、背骨のまわりにあります。

緊張状態が続くと、呼吸は浅く速くなります。浅い呼吸では横隔膜が十分に動かず、代わりに首や肩の筋肉(斜角筋・胸鎖乳突筋・肩甲挙筋など)が呼吸を手伝うようになります。一日に2万回前後とされる呼吸のたびに、肩の筋肉が少しずつ動員される——これが続けば、肩が休まらないのも無理はありません。

さらに、自律神経の乱れによって内臓への血流配分が変わると、臓器まわりの膜の状態にも変化が生じることがあります。呼吸・内臓・肩は、思っているよりも近い関係にあるのです。

なお、右肩の痛みに加えて強い腹痛・発熱・黄疸・食後にみぞおちから右背部へ抜ける痛み・安静にしていても続く痛み・しびれなどがある場合は、整体で様子をみるのではなく、自己判断せず医療機関にご相談ください。ここは順番を間違えてはいけないところです。

肩そのものではなく、身体を一つのつながりとして見る——その見方は有料コンテンツにまとめています。
https://note.com/honest_rose9929

整体師は右肩の左右差をどう見ているか|構造・内臓・生活習慣の三軸で考える

茨城県龍ケ崎市で開いているすーさん夫婦の龍ケ崎整体院では、右肩だけがつらいという方に対して、肩を触る前にまず全体の張力の偏りを確認するところから始めます。以下は、日々の施術のなかで実際にたどっている考え方の順序です。

①構造の軸——土台から肩までのつながりを見る

肩甲骨の動きは、肋骨・胸椎・鎖骨・骨盤の向きに支えられています。骨盤が右に回旋していれば胸郭も連動してねじれ、肩甲骨の位置も変わります。これまで診てきた範囲では、腸骨や股関節まわりの状態が肩の左右差と一緒に動いているように感じる場面があり、下から上へ影響が伝わることは珍しくありません。

利き手による姿勢の左右差も、この層で確認します。長年の作業姿勢は、骨格ではなく膜の張力の癖として残っていることが多い印象です。

②内臓・呼吸の軸

次に、横隔膜の動き方と右季肋部(右のあばらの下)まわりのゆとりを確認します。右の肋骨の下の動きが乏しい方は、深呼吸をしたときに右側だけ胸が広がりにくいことがあります。ここに変化が出ると、肩の重さの感じ方が変わったと話される方もいます。これは効果を保証するものではなく、施術の現場で感じている傾向としての話です。

私たちが大切にしているのは、痛いところだけでは終わらせないことです。右肩も当然触りますが、それと同時に、その張力をつくっている可能性のある部位もあわせて確認します。

③生活習慣の軸

最後に、日常の条件を伺います。睡眠の向き、食後の姿勢、食事の内容と時間、冷たい飲み物の量、ストレスのかかり方。内臓まわりの状態は生活の影響を受けやすく、施術で整えても同じ条件が続けば元の張力に戻りやすくなります。

私自身、平日はほぼ植物中心の食事、週末はBBQや刺身も食べるというゆるいスタイルに変えてから、身体のベースラインが変わった感覚があります(個人の体験です)。食と身体のつながりについては、noteで整体師の実体験とともに詳しく書いています。→ https://note.com/honest_rose9929

施術は柔道整復師(国家資格)の鈴木大樹・鈴木佳代の夫婦2人で行っており、2人ともオステオパシーの専門校で学びを続けています。1回の施術は約45分、完全予約制です。

まとめ

右肩だけがつらいという左右差には、利き手による姿勢の偏りだけでなく、右の横隔膜と肝臓の位置関係、横隔神経を介した肩とのつながり、筋膜連続性による張力の伝わり、そして呼吸と自律神経の状態が重なって関わっている可能性があります。肩を揉んでも数日で戻るなら、見る範囲を広げてみる価値があります。強い痛みや他の症状を伴う場合は、まず医療機関にご相談ください。

免責事項:本記事は個人の体験談および一般的な健康情報の提供を目的としており、医療診断・治療に代わるものではありません。同様の効果を保証するものではありません。持病のある方・服薬中の方は生活習慣の変更前に必ず主治医にご相談ください。

参考文献

本記事の作成にあたり参照した研究論文です(内容は要約・意訳したものであり、原文の直接引用ではありません)。

  1. Effectiveness of Myofascial Release Compared to Manual Lymphatic Drainage in Reducing Post-Treatment Shoulder Pain and Stiffness Among Patients Who Underwent Breast Cancer Surgery and Adjuvant Radiotherapy: Randomised controlled trial(Sultan Qaboos Univ Med J 2025) PubMed
  2. Effect of myofascial release, stretching, and strengthening on upper torso posture, spinal curvatures, range of motion, strength, shoulder pain and disability, and quality of life in breast cancer survivors(Physiother Res Int 2022) PubMed
  3. Comparing the efficacy of 3-dimensional release technique and modified active release therapy on pain, scapular position and Craniovertebral angle in IT workers with scapulocostal syndrome: A Randomised Clinical Trial(J Bodyw Mov Ther 2025) PubMed
  4. Surgical fasciectomy of the trapezius muscle combined with neurolysis of the Spinal accessory nerve; results and long-term follow-up in 30 consecutive cases of refractory chronic whiplash syndrome(J Brachial Plex Peripher Nerve Inj 2010) PubMed

よくある質問

Q. 右肩だけこるのは内臓が悪いということですか?

A. 必ずしもそうとは限りません。右側の内臓と肩は神経・膜を介してつながっていますが、利き手の使い方や姿勢の左右差が主因のことも多くあります。強い痛みや発熱、黄疸などを伴う場合は医療機関での確認を優先してください。

Q. 右の肩甲骨のまわりだけ痛むのはなぜですか?

A. 肩甲骨は筋膜を介して首・胸郭・横隔膜とつながっており、呼吸の浅さや右側の胸郭の動きの制限が肩甲骨内側に張りとして出ることがあります。腕の位置や座り方の癖も左右差をつくる要因です。

Q. 揉んでも右肩こりがすぐ戻るのはどうしてですか?

A. こっている筋肉は結果として硬くなっている場合があり、胸郭の動きや骨盤の傾き、内臓まわりの膜の張りといった土台が変わらないと元の状態に戻りやすくなります。痛いところだけでなく、その周辺も含めて確認することが大切です。

鈴木大樹

鈴木大樹(すずき だいき)

柔道整復師 / オステオパシー専門校在学中 / 産後リハビリ国際セミナー修了

茨城県龍ケ崎市で妻・佳代とともに整体院を営む整体師。食・自然療法・筋膜のつながりを臨床と学びの中で深め、「なぜ身体はそうなるのか」を発信し続けています。

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