この記事は個人の体験談と参考書籍をもとにした健康情報です。医療的な診断・治療に代わるものではありません。持病のある方・服薬中の方は必ず主治医にご相談ください。
肩を揉んでもらった直後は、確かに楽になる。でも、数日でまた元に戻る。あるいは、その日の夜にはもう重い。
肩こりで来られる方の多くが、この繰り返しを何年も続けています。そして「自分の肩は特別に硬いのだろう」と思っていらっしゃいます。
ただ、実際に身体を触っていて感じるのは、少し違うことです。肩こりの方の多くは、肩そのものに原因がありません。
このページは、龍ケ崎で整体院をしている柔道整復師が、肩こり・首こり・頭の不調について「身体の中で何が起きているのか」を一通り書いたものです。個別のテーマは、それぞれの記事で詳しく扱っています。
肩は「凝っている」のではなく、「引き伸ばされている」ことがあります
肩こりを感じるのは、首から肩、肩甲骨のあいだ——つまり身体の後ろ側です。だから多くの方が、後ろ側を揉みます。
ところが、その筋肉が張っている理由が、後ろ側にあるとは限りません。
想像してみてください。手で何かを前に引っ張り続けているとき、力が入っているのはどこでしょうか。引っ張っている腕の前側だけでなく、それを支えている背中側も同じだけ張っています。
身体でも同じことが起きます。胸の側が縮んで前に引く力がかかり続けると、それに引き倒されないよう、後ろ側が張り続けることになります。 このとき後ろ側は「縮んで凝っている」のではなく、「引き伸ばされたまま踏ん張っている」状態です。
この状態で後ろだけを揉むと、その場は緩みます。しかし前から引く力は残ったままなので、身体はまた踏ん張り直します。だから戻ります。
では、前側で何が硬くなっているのか
ここが、肩こりを見るときに私が最も重視している部分です。
胸郭——肋骨の「かご」
肋骨は、呼吸のたびにわずかに広がって閉じています。ところがこの動きが小さくなると、胸のかご全体が縮んだ位置で固まります。かごが閉じた形で固まれば、肩は前に巻き込まれます。
横隔膜——かごの底
胸とお腹を仕切っているドーム状の筋肉です。呼吸のたびに上下し、胸郭の動きの土台になっています。ここが硬いと、その上にある胸郭も動きにくくなります。
肩こりの方を診るとき、私は横隔膜と胸郭まわりを特に重視して見ています。 肩そのものより先に、ここを確認することが多いです。
心膜——心臓を包んでいる膜
心臓は、袋のような膜に包まれています。この膜は宙に浮いているわけではなく、上は首の奥へ、下は横隔膜へと、周囲の組織とつながっています。
この心膜のまわりの硬さを感じる方が、肩こりの方には多くいます。 前側の深いところに硬さがあると、そこから上へ向かって首や肩が引かれる形になります。
身体の表面ではなく、内側の深い層で起きていることなので、ご本人には「胸が硬い」という自覚がほとんどありません。自覚があるのは、いつも肩と首です。
その結果として、姿勢が変わります
前側が縮み、そこから引かれ続けると、身体は前に丸まった形に落ち着いていきます。いわゆる猫背です。
ここで大事なのは、順番だと思っています。「姿勢が悪いから肩がこる」と言われることが多いのですが、実際に身体を触っていると、前側が硬くなった結果として、そういう姿勢になっている方が多いように感じます。
だとすると、意識して背筋を伸ばしても、長くは続きません。引く力が残ったまま、上から力で押さえつけているだけだからです。気を抜けば戻ります。努力が足りないのではなく、引っ張られているのを我慢しているだけなので、続かないのは当然だと思います。
ただし、骨盤から来ていることもあります
ここまで胸の話をしてきましたが、「肩こりは全部、胸が原因です」と言うつもりはありません。
骨盤の傾きが変われば、その上に乗っている背骨の並びが変わり、結果として頭の位置が変わります。頭は体重の1割ほどの重さがあるので、その位置が数センチ前に出るだけで、首と肩が支える負担は大きく変わります。
だから実際には、骨盤も背骨も足元も、一通り見ます。 そのうえで、肩こりの方には胸郭と横隔膜まわりに硬さが見つかることが多い、というのが私の実感です。
どこが原因になっているかは人によって違い、決めつけると外します。その見つけ方については、noteでより詳しく書いています。
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呼吸が浅いと、首と肩が呼吸を肩代わりします
胸郭と横隔膜が硬いと、当然、呼吸が浅くなります。そして浅くなった分を、身体は別の筋肉で補おうとします。
首から鎖骨、肋骨の上のほうについている筋肉です。これらは本来、走ったあとなど、一時的に強く呼吸するときに使う設計になっています。ところが呼吸が浅い状態が続くと、座っているときも、寝ているときも、働き続けることになります。
呼吸は1日に2万回前後といわれます。その回数ぶん、首と肩の筋肉が動員されている——そう考えると、揉んでも追いつかないのは無理のないことだと思います。
首——支えている側の負担
頭の位置が前に出ると、首はそれを後ろから引っ張って支え続けることになります。特に働くのが、頭のつけ根にある小さな筋肉群です。
この筋肉は本来、頭の細かい傾きを調整するためのもので、重い物を支える設計ではありません。それが常時支え役に回ると、硬くなります。
そしてこの場所は、自律神経と関わりの深い神経が通る場所でもあります。首こりが、肩の重さだけでなく、頭の重さやぼんやり感と一緒に語られることが多いのは、この位置関係が関わっていると考えています。
頭と目——首の上で起きること
目を使い続けると、ピントを合わせる仕組みが働き続けます。そして目の動きと首の動きは、神経のうえでつながっています。画面を見つめているとき、身体は「目だけ」を使っているわけではありません。
眼精疲労と肩こりと頭痛が、しばしば同時に来るのはこのためです。別々の症状というより、ひとつのつながりが、三か所で表に出ているという見方をしています。
- 眼精疲労と肩こりが同時に起きる神経学的な理由——三叉神経と頚部交感神経
- 眼精疲労・肩こり・頭痛が同時に起きる本当の理由【筋膜連鎖と後頭下筋群】
- 通勤頭痛の原因を整体師が解説|電車と自律神経の関係
- 気圧頭痛は内耳が原因?梅雨の体調不良を整体師が解説
首は、通り道でもあります
首には、神経と血管だけでなく、リンパの流れも通っています。細い場所に、多くのものが集まって通過している構造です。
ここが硬くなると、通り道としての働きにも影響が出ることがあります。首や顔まわりの重さ・むくみ感が、肩こりと一緒に語られることがあるのは、この構造が関係していると考えています。
肩甲骨と腕——動かない板は、こわばります
肩甲骨は、背中の上を滑るように動く板です。骨と骨でがっちり組まれておらず、筋肉に支えられて浮いています。だから自由に動ける代わりに、周囲の筋肉のバランスが崩れると、位置がずれたまま固定されやすい部分です。
胸の前側が縮んで肩が前に巻くと、肩甲骨は外へ滑った位置に取り残されます。この状態が続くと、動かすときに引っかかる感じや、こすれるような音として自覚されることがあります。
肩こりが強く出やすい条件
同じ生活をしていても、肩こりが強く出る時期と、そうでない時期があります。身体の側の条件が変われば、同じ負担でも反応が変わるからです。
身体全体の調整という視点からは、自律神経の乱れとは|なんとなく不調が続くとき身体で起きていること もあわせてお読みください。
こういうときは、医療機関へ
肩こりや首こりとして片づけてはいけない症状があります。以下にあてはまる場合は、まず医療機関を受診してください。
- 手や腕のしびれが続いている、力が入りにくい、細かい作業がしづらい
- しびれや麻痺が両手に出ている、または足にも出ている
- 安静にしていても強く痛む、夜間に痛みで目が覚める
- これまで経験したことのない激しい頭痛、突然始まった頭痛
- 発熱をともなう首の痛み、首が前に曲げられない
- ろれつが回らない、ものが二重に見える、片側だけ症状が出ている
- けが(転倒・追突など)のあとから続いている
- 体重が意図せず減っている
特にしびれや脱力は、神経が圧迫を受けているサインのことがあります。整形外科や脳神経外科で調べていただくのが先です。
今日から意識できること
具体的な手順はnoteに譲りますが、方向性だけお伝えします。
ひとつ目は、後ろを緩めるより、前を開くこと。 肩や首を揉むより、胸の前側が縮まないようにするほうが、理屈のうえでは順序が合っています。
ふたつ目は、息を吐く時間を長くすること。 胸のかごを動かすには、まず呼吸です。深く吸おうとするより、ゆっくり吐くほうが身体はゆるみやすくなります。
三つ目は、同じ姿勢の時間を切ること。 良い姿勢を保とうとするより、同じ形でいる時間を短くするほうが現実的です。前側が固まるのは、姿勢の良し悪しよりも「動かない時間の長さ」によるところが大きいと感じています。
呼吸の使い方や、身体をゆるめる具体的な方法は、noteで詳しく書いています。
→ noteで続きを読む
首こりと肩こりは、同じものではありません
どちらも「上半身の後ろが重い」という点では似ていますが、身体の中で起きていることは少し違います。
肩こりは、腕を吊り下げている負担が中心です。 腕は片方で体重の6〜7%ほどあり、それが肩からぶら下がっています。デスクワークのように腕を前に出し続ける姿勢では、この吊り下げ役の筋肉が休めません。
首こりは、頭を支えている負担が中心です。 頭は体重の1割ほど。それが背骨の真上に乗っていれば骨で支えられますが、前に出るほど筋肉で引き止めることになります。
そして首の場合、そこが通り道でもあるという事情が加わります。神経も血管もリンパも通っている場所なので、硬さが「重い」だけでなく、頭のぼんやり感や目の疲れとして自覚されることがあります。
肩だけがつらいのか、首から上も重いのか。ここが分かれ目になることがあるので、気にしてみてください。
よくいただく質問
Q. マッサージに行っても戻ります。行く意味はないのでしょうか
そんなことはないと思っています。緩んで楽になる時間そのものに価値がありますし、身体がゆるむ経験は必要です。ただ、前から引く力が残っていれば、また踏ん張り直すことになります。戻るのは施術の質の問題ではなく、引かれる理由がまだ残っているからだと考えています。
Q. 姿勢を良くすれば、肩こりはやわらぎますか
意識して背筋を伸ばすやり方は、長く続きにくいと感じています。前から引かれている状態を、上から力で押さえているだけになるからです。順番としては、前側がゆるむほうが先で、姿勢はその結果として変わっていくものだと考えています。個人差があります。
Q. 肩こりから頭痛が起きることはありますか
首から頭にかけての筋肉と、頭の感覚を伝える神経は、近い場所を通っています。首や肩の緊張と頭の重さが一緒に語られることが多いのは、この位置関係が関わっていると考えています。ただし、これまでにない激しい頭痛や、突然始まった頭痛は別です。その場合はすぐに医療機関へ。
Q. ストレッチはどこを伸ばせばいいですか
方向性としては、後ろを伸ばすより前側が縮まないようにするほうが理屈に合っています。ただ、伸ばす場所や強さは身体の状態によって変わりますし、痛みがあるときに無理に伸ばすのは避けてください。具体的な方法はnoteで扱っています。
Q. どれくらいで変わりますか
人によって大きく違います。呼吸の深さや胸まわりの硬さは比較的早く変化を感じる方が多い一方で、姿勢として定着するには時間がかかる印象があります。効果を保証するものではありません。
Q. 肩こりだと思っていたら別の病気だった、ということはありますか
あります。だからこそ、この記事の「こういうときは、医療機関へ」の項目を確認していただきたいです。特に、しびれ・脱力・安静時の痛み・発熱をともなう首の痛みは、整体で様子を見る前に医療機関で調べるべきものです。
おわりに
肩こりで来られる方は、たいてい長い付き合いをしています。そして多くの場合、ご自身を責めています。姿勢が悪いから、運動をしていないから、体質だから、と。
ただ、身体の構造として見ていくと、後ろが張っているのは、前から引かれているのを支えているからだった——という説明がつくことが少なくありません。だとすれば、それは我慢や努力の不足ではありません。
気になったところの記事へ進んでみてください。ご自身の身体で起きていることの見当がつくと、それだけでも向き合い方が変わることがあります。
参考にした書籍
- Netter FH『ネッター解剖学アトラス』
- Stecco L『筋膜マニピュレーション』
免責事項:本記事は個人の体験談および一般的な健康情報の提供を目的としており、医療診断・治療に代わるものではありません。同様の効果を保証するものではありません。持病のある方・服薬中の方は生活習慣の変更前に必ず主治医にご相談ください。