五十肩で腕が上がらない|徒手療法と運動療法の研究

オステオパシー
この記事は個人の体験談と参考書籍をもとにした健康情報です。医療的な診断・治療に代わるものではありません。持病のある方・服薬中の方は必ず主治医にご相談ください。
五十肩で腕が上がらないの挿絵(水彩)

腕が上がらない、髪を結ぶ・服を着るといった動作がつらい。そんな五十肩(凍結肩)に悩む方は、40〜60代を中心に少なくありません。徒手療法(手を使って関節や筋肉を動かす方法)や運動療法は、コクランレビューや系統的レビュー、PNFの小規模試験などで検討されてきましたが、研究の質や規模には限りもあります。この記事では、柔道整復師の視点から、肩の中で起きている仕組みとあわせて「研究ではここまで分かっている」を整理します。研究の数値には踏み込まず、研究の種類と読み方を中心にお伝えします。

五十肩で腕が上がらないとき、肩の中では何が起きているのか

「五十肩」は、40〜60代に多い肩の痛みと動かしにくさを指す、一般的な呼び名です。医学的には肩関節周囲炎という広い呼び方があり、そのなかでも肩関節を包む袋(関節包)が厚く硬くなり、動きが大きく制限されるタイプは「凍結肩」や「癒着性関節包炎」と呼ばれます。

はっきりしたきっかけがないまま始まることが多く、なぜ起こるのかはまだ十分に解明されていないと一般に説明されています。糖尿病や甲状腺の病気がある方に起こりやすいとも言われています。

経過は大きく3つの時期に分けて説明される

整形外科の専門書などでは、凍結肩の経過はおおむね次のように説明されています。

  1. 痛みが強い時期(炎症期):動かすと痛み、じっとしていても痛む。寝ているときに痛む夜間痛で目が覚める方もいます。
  2. 硬さが目立つ時期(拘縮期):痛みは少しずつ落ち着く一方で、可動域制限(動かせる範囲が狭くなること)がはっきりしてきます。
  3. 動きが戻っていく時期(回復期):時間をかけて少しずつ動かせる範囲が広がっていきます。

全体の経過は数か月から年単位に及ぶことがあり、時期の長さや動きの戻り方には個人差があります。「どの時期にいるか」によって、肩との向き合い方が変わってくる点は覚えておきたいところです。

五十肩に似た症状にも注意が必要

腱板(肩の深いところにある筋肉の腱)の損傷や、石灰性腱炎など、五十肩とよく似た症状を示す状態もあります。これらは画像検査などで見分ける必要があります。転んだあとから腕が上がらない、腕や手のしびれがある、発熱をともなう、夜も眠れないほどの強い痛みが続くといった場合は、自己判断せず整形外科などの医療機関にご相談ください。

関節包が硬く縮む仕組み|可動域と日常動作が制限される理由

肩関節は、腕の骨の丸い頭が、肩甲骨の浅い受け皿に乗るようなつくりをしています。この関節をぐるりと包んでいるのが関節包です。関節包は、腕を大きく動かせるように、もともとゆとりを持った袋になっています。

袋の「たるみ」がなくなると腕が上がりにくくなる

関節包の下側には、腕を下ろしているときにたるんでいる部分があります。腕を上げると、このたるみが伸びて広がることで、大きな動きが可能になります。凍結肩では、この関節包が厚く硬くなり、縮んでしまうと説明されています。たるみが失われると、袋が伸びる余地がなくなり、腕を上げる・外へひねるといった動きが途中で止まってしまいます。

凍結肩では、腕を上げる動きだけでなく、腕を外側へひねる動き(外旋)も制限されやすいとされています。どの方向にも動かしにくくなるのは、肩を包む袋そのものが硬くなるためと考えられます。

着替えや髪を結ぶ動作がつらくなる理由

日常の動作は、いくつかの動きの組み合わせでできています。そのため、関節包が硬くなると、次のような場面で困りごとが出やすくなります。

  • 髪を結ぶ・洗う:腕を上げながら外へひねる動きが必要です。
  • エプロンのひもを結ぶ・背中に手を回す:結帯動作と呼ばれ、腕を内へひねりながら後ろへ引く動きが必要です。
  • 上着の袖を通す・高い棚の物を取る:腕を上げる・後ろへ回す動きが重なります。

肩関節そのものが動きにくくなると、身体は肩甲骨をすくめたり、背中を反らしたりして、足りない動きを補おうとします。この「かばう動き」が続くと、首の付け根や背中まで張りを感じる方もいます。肩の硬さが、肩甲骨や首まわりの使い方にも影響していく可能性があるということです。

痛みが強い時期と、硬さが目立つ時期とでは、運動との向き合い方の方向性が変わると一般に説明されています。セルフケアについて整体師としてどう考えているかは、noteにも書いています。
→ https://note.com/honest_rose9929

研究は徒手療法と運動療法をどう評価したか|コクランレビューとPNF

五十肩に対する徒手療法と運動療法は、さまざまな形で研究の対象になってきました。ここでは、個々の論文の結果を紹介するのではなく、研究の種類と、その結果をどう読めばよいかを整理します。

コクランレビューと系統的レビューとは

系統的レビューとは、あるテーマについて行われた複数の研究を決まった手順で集め、まとめて評価する研究の方法です。一つの研究だけでは偏りが出やすいため、複数の研究を見渡すことで、全体としてどの程度のことが言えるかを確かめます。

コクランレビューは、国際的な非営利組織であるコクランが作成する系統的レビューで、手順が細かく定められていることで知られています。凍結肩でも、徒手療法と運動療法を組み合わせた方法が検討されてきました。コクランレビューでは、結論とあわせて「その結論がどの程度確かか(エビデンスの確実性)」も評価されるのが特徴です。痛み、可動域、日常動作のしやすさなどが、評価の項目としてよく使われます。

PNF(固有受容性神経筋促通法)と小規模試験

PNFは、固有受容性神経筋促通法の略です。筋肉や関節にある「位置や動きを感じ取るセンサー」への刺激を利用して、筋肉の働きや動きを引き出そうとする理学療法の手技で、癒着性関節包炎の理学療法でも用いられることがあります。

PNFについては、小規模なパイロット試験も行われています。パイロット試験とは、本格的な研究の前に、その方法が実施できるかどうかを確かめる予備的な研究です。参加者が少ないため、結果をそのまま多くの方に当てはめることはできません。

研究を読むときに気をつけたいこと

  • 参加者の数:人数が少ないと、偶然の影響を受けやすくなります。
  • 自然な経過:凍結肩は時間とともに動きが戻っていくことがあるため、施術による変化と時間による変化を区別しにくい面があります。
  • 方法のばらつき:同じ「徒手療法」でも、研究ごとに手技や回数が異なります。
  • 追跡の期間:短い期間の変化だけを見ている研究もあります。

まとめると、徒手療法と運動療法は凍結肩の選択肢として研究が重ねられてきた一方で、研究の質や規模には限りがあり、確かなことが言える範囲はまだ狭い、というのが現時点での整理です。また、これらの研究はいずれもオステオパシーそのものを検証したものではありません。

整体師として考えていることは、noteにも書いています。→ https://note.com/honest_rose9929

整体師が五十肩を肩だけで見ない理由|研究の限界と身体全体の視点

前の章で見たように、研究で確かめられている範囲はまだ限られています。だからこそ、施術の現場では「研究で言えること」と「施術者の考え方」を分けて考えるようにしています。

腕を上げる動きは肩だけではできない

腕を真上まで上げる動きは、肩関節だけで行っているわけではありません。肩甲骨が背中の上を滑るように回り、鎖骨が持ち上がり、背骨(特に胸のあたり)がわずかに伸びることで、はじめて大きな動きになります。肋骨の動きや呼吸も、この動きと関わっています。

茨城県龍ケ崎市にある、すーさん夫婦の龍ケ崎整体院で、これまで診てきた範囲では、腕が上がりにくい方ほど、肩甲骨の動きや胸の前側、首の付け根にも硬さを感じることが多い印象があります。これはあくまで施術の現場で感じている傾向であり、医学的に確かめられた事実ではありません。

オステオパシーの考え方と、その位置づけ

オステオパシーでは、筋肉や内臓を包む膜が全身でつながっているという考え方をします。たとえば、横隔膜やその下にある肝臓まわりの膜の緊張が、右肩の動きに関わる場合があると考えられています。ただし、これはオステオパシーの理論にもとづく見方で、五十肩に対して研究で確かめられたものではありません。

私(鈴木大樹)は柔道整復師として施術を行いながら、オステオパシーの専門校で学んでいます。国際セミナーでは上肢ストラクチャーなどを受講しましたが、これは学んだ内容であって、これらを診断・治療できるという意味ではありません。

私たちが大切にしているのは、痛いところだけでは終わらないことです。肩そのものにも触れながら、肩甲骨や背中、胸まわりなど、関係していると考えられる部位もあわせて確認します。痛みが強い時期には無理に動かさず、刺激の少ない手技を選ぶようにしています。病院で治療を受けている方は、主治医の方針を優先してください。

まとめ

五十肩(凍結肩)では、肩を包む関節包が硬く縮むことで、腕を上げる・ひねるといった動きが制限され、着替えや髪を結ぶ動作がつらくなると説明されています。徒手療法や運動療法はコクランレビューや系統的レビュー、PNFの小規模試験で検討されてきましたが、研究の質や規模には限りがあります。時期によって向き合い方が変わるため、強い痛みやしびれがある場合は、まず医療機関で状態を確かめることから始めてください。龍ケ崎周辺で肩の動かしにくさに悩む方の参考になれば幸いです。

免責事項:本記事は個人の体験談および一般的な健康情報の提供を目的としており、医療診断・治療に代わるものではありません。同様の効果を保証するものではありません。持病のある方・服薬中の方は生活習慣の変更前に必ず主治医にご相談ください。

参考文献

本記事の作成にあたり参照した研究論文です(内容は要約・意訳したものであり、原文の直接引用ではありません)。

  1. Manual therapy and exercise for adhesive capsulitis (frozen shoulder)(Cochrane Database Syst Rev 2014) PubMed
  2. The efficacy of physiotherapy interventions in the treatment of adhesive capsulitis: A systematic review(J Back Musculoskelet Rehabil 2021) PubMed

よくある質問

Q. 五十肩に徒手療法や運動療法は効果があるの?

A. コクランレビューでは徒手療法と運動の組み合わせが検討され、近年の系統的レビューでも痛みや可動域、日常動作の改善が報告されています。ただし研究の質や規模には限りがあり、注射など他の方法と比べた結論は一定していません。

Q. 五十肩のリハビリで聞くPNFってどんな方法?

A. PNF(固有受容性神経筋促通法)は、筋肉の収縮と弛緩を利用して関節の動きを引き出す手技です。凍結肩を対象にした小規模なパイロット試験で肩の動きの改善が報告されていますが、参加者が少なく、結論にはさらなる研究が必要です。

Q. 五十肩はどのくらい続くの?放っておいても大丈夫?

A. 五十肩は痛みが強い時期、硬くなる時期、動きが戻ってくる時期を経て、1〜数年かかることもあると言われます。夜間痛が強い、腕に力が入らないなどの場合は腱板断裂など別の病気の可能性もあるため、まず医療機関で確認することが大切です。

鈴木大樹

鈴木大樹(すずき だいき)

柔道整復師 / オステオパシー専門校在学中 / 産後リハビリ国際セミナー修了

茨城県龍ケ崎市で妻・佳代とともに整体院を営む整体師。食・自然療法・筋膜のつながりを臨床と学びの中で深め、「なぜ身体はそうなるのか」を発信し続けています。

さらに深く知りたい方へ

「骨盤が歪んでいますね」と言われたとき、整体師が最初に何を確かめるかは、noteに書いています。

・「骨盤が歪んでいますね」と言われて、私が最初に確かめること(無料)
・揉んでも戻ることについて、痛い場所だけでは終わらないと整体師が考える理由(有料)

noteで読む(無料)→

有料記事は買い切りです。価格(税込)はnoteの各記事ページに表示しています。

noteの記事は、整体師が研究や施術の中で考えたことをまとめた読み物です。診断・治療に代わるものではありません。

龍ケ崎の整体院について →

タイトルとURLをコピーしました