「頭痛薬を飲んでも、また来週には同じ頭痛が戻ってくる」「肩をもんでもらっても、翌日にはまたズキズキする」——そんな経験を繰り返している方は、30〜50代にとても多い印象があります。実は、この”繰り返す”という事実そのものが、大切なヒントを含んでいます。肩こりと頭痛は、表面上別々の症状に見えて、後頭下筋群・筋膜・横隔膜という三つの構造を介して深くつながっている可能性があります。柔道整復師としての臨床経験と、現在学んでいるオステオパシーの視点から、その連動の仕組みをできるだけわかりやすく解説していきます。
肩こりと頭痛はなぜいつもセットで起きるのか
肩こりと頭痛がいつもセットで現れる——これは偶然ではなく、解剖学的・生理学的に理由があると考えられます。まずこの「セット現象」の入口から見ていきましょう。
首と頭をつなぐ「筋膜の一枚布」
私たちの身体は、筋肉が単独でバラバラに存在しているわけではありません。筋膜(きんまく)と呼ばれる薄い結合組織の膜が、全身の筋肉・臓器・神経を包み、つなぎ合わせています。この筋膜はいわば「身体全体を覆う一枚布」のようなもので、どこかに過剰な緊張が生じると、そのテンションが離れた部位にまで伝わることがあります。
肩まわりの筋膜が慢性的に緊張した状態になると、首の後ろから頭部へと続く筋膜のラインに張力が波及していく可能性があります。これが筋膜連鎖(きんまくれんさ)と呼ばれる考え方です。Steccoらの筋膜研究においても、筋膜の張力が隣接する構造物や離れた部位にまで伝達されることが示されており、整体・オステオパシーの臨床においても重要な視点となっています。
「痛みの場所」と「原因の場所」は別である可能性がある
オステオパシーの概念に「一次制限」という考え方があります。身体のどこかに最初の制限(動きの詰まり)が生じると、それを補おうとして周囲の組織が代償し、さらにその代償の代償が起きるという連鎖が慢性症状の本質にある可能性があります。
つまり、「頭が痛い」という症状が現れていても、そのそもそもの引き金となっている一次制限は、頭や肩とは別の場所に存在している可能性があるわけです。頭痛薬で頭の痛みを抑えても、また翌週に戻ってくるのは、この「一次制限が手つかずのまま残っている」状態が続いているからかもしれません。当院の施術の現場(茨城・龍ケ崎)でも、「肩と頭痛を長年繰り返している」と来院される方に、こうした連鎖のパターンが見られることがあります。もちろん個人差がありますが、一つの傾向として感じています。
後頭下筋群と筋膜が引き起こす緊張型頭痛のメカニズム
肩こりからつながる頭痛のなかで、最も多いとされるのが緊張型頭痛です。頭全体を締め付けるような鈍い痛みが特徴で、後頭部から側頭部にかけて広がることもあります。この緊張型頭痛と肩こりの関係を語るうえで欠かせないのが、後頭下筋群(こうとうかきんぐん)という筋肉群の存在です。
後頭下筋群とはどんな筋肉か
後頭下筋群とは、後頭骨と頸椎(首の骨)の最上部をつなぐ4つの小さな筋肉の総称です。大後頭直筋・小後頭直筋・上頭斜筋・下頭斜筋が該当します。この筋群は、頭を細かくコントロールする「頭の舵取り役」のような存在ですが、長時間のデスクワークやスマートフォン操作など、頭を少し前に傾けた姿勢が続くと慢性的に緊張しやすくなる可能性があります。
特に注目したいのは、後頭下筋群のすぐそばを大後頭神経が走っているという解剖学的な位置関係です。この筋群が過緊張になると、大後頭神経への圧迫や刺激が生じやすくなり、後頭部から頭頂部にかけての頭痛——いわゆる後頭部頭痛・肩こりのパターン——として現れることがあると考えられています。
トリガーポイントと首こり・頭蓋底への影響
後頭下筋群に慢性的な負荷がかかると、筋肉内にトリガーポイント(索状硬結ともいいます。筋肉の中にできる”しこり”のようなもの)が形成されることがあります。このトリガーポイントは、押したときの局所的な痛みだけでなく、頭部や顔面などへの「関連痛(かんれんつう)」を生じさせることがあります。
研究でも、筋膜のトリガーポイントへの徒手的なアプローチが肩まわりの痛みや可動域制限を和らげる可能性が報告されています。こうした知見は、首こり・頭蓋底まわりへの筋膜アプローチが緊張型頭痛の改善に関わりうることを示唆しています。
整体師の目線でいうと、「肩をもんでも頭痛が消えない」という方の多くは、肩の表層の筋肉ではなく、この後頭下筋群周辺の深部——頭蓋底の際(きわ)——に問題が潜んでいる可能性があります。表面的なマッサージだけではなかなか届かない場所ともいえます。
横隔膜と首・頭部の意外なつながり——オステオパシーが注目する理由
「横隔膜(おうかくまく)が頭痛と関係あるの?」と驚かれる方も多いと思います。横隔膜とは、胸腔と腹腔を仕切るドーム状の呼吸筋で、呼吸のたびに上下に動き続けています。実はこの横隔膜が、肩こりや頭痛の慢性化に深く関わっている可能性があります。オステオパシーの専門校で学ぶ中でも、横隔膜は「身体の要(かなめ)」として非常に重要視されている構造です。
横隔神経を通じた首・肩への影響
横隔膜を支配する神経は横隔神経(おうかくしんけい)といい、頸椎(C3・C4・C5)から起始しています。つまり、横隔膜の緊張や動きの制限は、首の神経レベルと直結しているわけです。
横隔膜が慢性的な緊張状態にある場合、その張力が横隔神経を通じて頸椎に影響を及ぼし、首こりや肩こりの一因になっている可能性があります。逆に、首・肩の慢性的な緊張が横隔膜の動きを制限することもあり、互いが影響し合う双方向の関係があると考えられます。
横隔膜と自律神経——呼吸が乱れると身体全体が乱れる
横隔膜と自律神経の関係も、慢性頭痛を考えるうえで見逃せません。横隔膜のすぐ近くには迷走神経(副交感神経の主要な経路)が走っており、横隔膜の動きが浅くなると副交感神経の働きが十分に引き出されにくくなる可能性があります。
慢性的にストレスがかかる状況や、浅い胸式呼吸が続く状況では、交感神経優位の状態が長引き、首・肩まわりの筋肉の緊張が高まりやすくなると考えられています。これが結果として、緊張型頭痛の慢性化につながっている可能性があります。
また、オステオパシーの視点では、横隔膜の動きが制限されると周囲の臓器——肝臓・胃・腸など——の動きや血流にも影響が波及する可能性があります。当院の臨床経験では、肩こりと頭痛を繰り返す方に横隔膜まわりのアプローチを行うと、肩の重さや頭のスッキリ感に変化を感じる方がいらっしゃいます。ただし、これは個人差があり、すべての方に同様の変化があるとは断言できません。
肩こりの根本にある内臓・横隔膜のつながりは、noteでさらに深く書いています。
→ https://note.com/honest_rose9929
整体師の目線で見る「薬では取れない慢性頭痛」の本質
ここまで、後頭下筋群・筋膜連鎖・横隔膜という三つの視点から、肩こりと頭痛がつながるメカニズムを見てきました。最後に、整体師として「なぜ薬では繰り返す頭痛が根本から変わりにくいのか」という本質的な問いに向き合ってみたいと思います。
「痛みの抑制」と「動きの回復」は別のアプローチ
頭痛薬(鎮痛剤)は、痛みの信号を一時的に抑える仕組みで働きます。症状がつらいときの緊急対応として大切な選択肢ですが、「なぜ痛みが起きているか」という構造的・機能的な原因には直接働きかけるものではありません。
後頭下筋群の慢性緊張・筋膜の張力偏位・横隔膜の動きの制限——これらは構造と機能の問題です。こうした問題が残ったまま痛みだけを抑えると、身体は「まだ問題が解決していない」状態で日常生活を続けることになり、結果として症状が繰り返されやすくなる可能性があります。
整体・オステオパシー的な見立ての視点
オステオパシーでは、症状の出ている場所ではなく「一次制限(最初の詰まりの場所)」を探すことを大切にします。慢性的な頭痛・肩こりのケースでは、実際の施術の現場で以下のようなパターンを経験することがあります(あくまで当院の臨床上の傾向であり、個人差があります)。
- 肩や首だけでなく、横隔膜や肋骨まわりに動きの制限が見られることがある
- 頭蓋底(後頭骨と頸椎の境界部)の緊張が強い方に、後頭部頭痛を訴える傾向が感じられることがある
- 自律神経症状(睡眠の浅さ・疲れやすさ)を伴っている方は、横隔膜や迷走神経まわりへのアプローチで身体の変化を感じられる方がいる
私自身も、柔道整復師としての臨床経験のなかで、「肩こりだけ施術しても頭痛は変わらなかった」という患者さんが、横隔膜や頭蓋底まわりへのアプローチを加えてから「頭の重さが変わった気がする」とおっしゃるケースを経験することがあります。これは医学的な因果関係を断言するものではなく、施術の現場で感じてきた傾向のひとつです。
受診の目安について
慢性的な肩こり・頭痛であっても、急激に痛みが強くなった場合・視野に異常が出た場合・嘔吐を伴う激しい頭痛が生じた場合などは、脳や血管に関わる病気のサインである可能性があります。こうした症状が続く場合や強い痛みがある場合は、自己判断せず、まず医療機関にご相談ください。整体・オステオパシーはその後の選択肢として考えていただくことをおすすめします。
龍ケ崎をはじめ茨城エリアにお住まいの方でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。全国どこにいらっしゃる方でも、まずは仕組みを知ることが、慢性症状への向き合い方を変える第一歩になることがあります。
まとめ
肩こりと頭痛が繰り返される背景には、後頭下筋群の慢性緊張・筋膜連鎖による張力の波及・横隔膜の動きの制限と自律神経への影響という、複数の要因が絡み合っている可能性があります。「痛い場所」だけを見るのではなく、身体全体の連動を俯瞰する視点が、慢性症状の本質に近づく鍵になりうると感じています。薬や表面的なマッサージで変わらないとお感じの方は、こうした「仕組み」を知ることから始めてみてください。
この記事で紹介しきれない詳しい実践的アプローチについては、noteでも発信しています。
→ https://note.com/honest_rose9929
参考文献
本記事の作成にあたり参照した研究論文です(内容は要約・意訳したものであり、原文の直接引用ではありません)。
- Effectiveness of Myofascial Release Compared to Manual Lymphatic Drainage in Reducing Post-Treatment Shoulder Pain and Stiffness Among Patients Who Underwent Breast Cancer Surgery and Adjuvant Radiotherapy: Randomised controlled trial(Sultan Qaboos Univ Med J 2025) PubMed
- Myofascial triggerpoint release (MTR) for treating chronic shoulder pain: A novel approach(J Bodyw Mov Ther 2016) PubMed
- Myofascial Induction Effects on Neck-Shoulder Pain in Breast Cancer Survivors: Randomized, Single-Blind, Placebo-Controlled Crossover Design(Arch Phys Med Rehabil 2017) PubMed
よくある質問
Q. 肩こりがひどいと頭痛になるのはなぜですか?
A. 肩まわりの筋膜の緊張が後頭下筋群へ連鎖し、頭蓋底への圧迫や血流障害が生じることで緊張型頭痛が引き起こされます。肩と頭は筋膜でつながっているため、肩こりが悪化するほど頭痛も連動しやすくなります。
Q. 後頭部が痛くて肩もこっている場合、どこが原因ですか?
A. 後頭部の痛みと肩こりが同時にある場合、後頭下筋群のトリガーポイントや頸部の筋膜の硬直が主な原因として考えられます。深層の小さな筋群が持続的に緊張することで、後頭部への放散痛が生じやすくなります。
Q. 慢性頭痛は整体で良くなりますか?
A. 緊張型頭痛を中心とした慢性頭痛は、筋膜や後頭下筋群・横隔膜へのアプローチを行う整体・オステオパシーで改善が期待できるケースがあります。ただし器質的疾患の除外を優先し、医療機関での診断も大切です。
鈴木大樹(すずき だいき)
柔道整復師 / オステオパシー専門校在学中 / 産後リハビリ国際セミナー修了
茨城県龍ケ崎市で妻・佳代とともに整体院を営む整体師。食・自然療法・筋膜のつながりを臨床と学びの中で深め、「なぜ身体はそうなるのか」を発信し続けています。
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