頭痛薬を飲んでも数時間でぶり返す、肩こりがひどい日には決まって頭も痛くなる——そんな経験をお持ちの方は少なくないと思います。この「なぜ」を解剖学的にきちんと説明できる人は、実はそれほど多くありません。後頭下筋群(こうとうかきんぐん)と横隔膜という2つの構造体が、筋膜を介してどのように連動しているかを理解すると、慢性的な頭痛と肩こりの根本原因がまったく違って見えてきます。この記事では、整体師・オステオパシーの視点から、その仕組みをひも解いていきます。
「肩こりがひどい日は頭も痛い」——この連動はなぜ起きるのか
施術の現場でよく耳にするのが、「肩こりと頭痛は同時にやってくる」という訴えです。多くの方は「疲れているから両方つらい」と考えがちですが、実はこの2つには解剖学的な連動の理由があると考えられます。
まず大前提として、頭・首・肩は独立した「パーツ」ではなく、筋膜(きんまく)という薄い膜状の結合組織によってひとつながりにつながっています。筋膜とは筋肉を包む膜だけでなく、内臓・骨・神経・血管すべてを包み込む全身網状の構造体です。Stecco(ステッコ)の筋膜連鎖理論では、この筋膜は「ライン」として全身を縦・横・斜めに走っており、あるポイントの緊張が連鎖的に別の部位へ波及するとされています。
肩周辺の僧帽筋(そうぼうきん)や肩甲挙筋(けんこうきょきん)が緊張すると、その筋膜的な連鎖は後頭部へと伝わります。後頭部には頭蓋骨の内側を裏打ちする硬膜(こうまく)が接続しており、筋膜テンションが膜全体に広がることで、頭重感や締め付けられるような頭痛——いわゆる緊張型頭痛が生じやすくなる可能性があります。
「コリ」は局所の問題ではない
整体師の目線で言えば、肩こりは「肩だけの問題」ではないケースがほとんどです。首の姿勢、呼吸パターン、さらには内臓の状態までが肩周囲の筋緊張に影響を与えていることがあります。特に長時間のデスクワークやスマートフォン操作で頭が前方に突き出た姿勢(ヘッドフォワードポスチャー)になると、後頭下筋群への負担が増える可能性があります。茨城県内の施術の現場でも、30〜50代のデスクワーカーの方にこのパターンを多く見かけます。
- 肩こりの筋緊張 → 筋膜ライン経由で後頭部へ波及
- 硬膜緊張が頭蓋内圧や神経への影響を生じさせる可能性
- 頭部が前方にずれるほど後頭下筋群の負担が増える構造
後頭下筋群が頭痛を引き起こす解剖学的メカニズム——椎骨動脈・後頭神経・硬膜との関係
後頭下筋群とは、頭蓋骨の底部と第1・第2頸椎(けいつい)をつなぐ4対の小さな筋肉群(大後頭直筋・小後頭直筋・上頭斜筋・下頭斜筋)の総称です。この筋群は見た目こそ小さいものの、頭痛との関係という意味では非常に重要な構造体です。
なぜ後頭下筋群の緊張が頭痛に関わるのか
ネッター解剖学でも示されているように、後頭下筋群のすぐ近くには以下の重要な構造が走っています。
- 椎骨動脈(ついこつどうみゃく):脳底部への血流を担う動脈。後頭下筋群の深部を通過しており、筋緊張によって圧迫・牽引されると血流に影響が出る可能性があります。
- 大後頭神経(だいこうとうしんけい):後頭部の感覚を担う神経。後頭下筋群の中を貫くように走っており、筋の過緊張によって絞扼(こうやく=締め付け)される可能性があります。これが後頭部から頭頂部にかけての締め付け感や、目の奥が痛い感覚として現れることがあると考えられています。
- 硬膜(こうまく)との直接的な接続:後頭下筋群には硬膜と直接つながる筋膜性の橋(筋硬膜橋)が存在することが報告されています。これにより、筋の緊張が硬膜緊張として頭蓋内に伝わる可能性があります。この硬膜緊張こそが、「締め付けられるような」緊張型頭痛の構造的な一因として注目されています。
自律神経バランスという観点でも、後頭下部には副交感神経の出口である迷走神経(まいそうしんけい)の走行が密集しており、この領域の緊張は自律神経系への影響を生じさせる可能性があります。頭痛と同時に「なんとなく体がだるい」「目が重い」といった訴えが重なるのは、こうした神経系への影響が関与している場合があると考えられます。
オステオパシーの専門校での学習を通じて、この後頭下部がいかに精密な構造の集積地であるかを改めて実感しています。小さな筋群ですが、そこに関わる膜・神経・血管のネットワークは非常に複雑です。
横隔膜が肩こりと頭痛に関わる理由——Steccoの筋膜連鎖理論と呼吸機能の構造的連動
「横隔膜と頭痛に何の関係があるの?」と思われる方も多いはずです。しかし、筋膜連鎖の観点から見ると、横隔膜は肩こりおよび緊張型頭痛と深く関わっている可能性があります。
横隔膜は「呼吸の筋肉」だけではない
横隔膜はもちろん主要な呼吸筋ですが、Steccoの筋膜連鎖理論では、横隔膜は前後・上下に走る深部筋膜ラインの「交差点」のような役割を担うとされています。横隔膜の筋膜は以下の構造と連続しています。
- 上方:縦隔(じゅうかく)を介して頸部・後頭部方向へ
- 後方:腰方形筋・大腰筋を介して腰椎・骨盤へ
- 前方:腹直筋筋膜を介して胸郭・肋骨へ
つまり、横隔膜の動きが制限されると、そのテンションは筋膜ラインを通じて首・肩・後頭部方向へ波及する可能性があります。浅い胸式呼吸が習慣になっている方では、横隔膜の可動性が低下し、代わりに呼吸補助筋(斜角筋・胸鎖乳突筋・小胸筋など)が過剰に働き続ける状態になりやすいと考えられます。これらの呼吸補助筋は首・肩に密集しており、その過緊張がそのまま肩こりとして現れる可能性があります。
さらに、横隔膜の動きの低下は自律神経バランスにも影響を与える可能性があります。深くゆったりした腹式呼吸は副交感神経を優位にしやすい状態をつくりますが、浅い呼吸が続くと交感神経優位の状態が持続しやすくなり、筋緊張が慢性化する悪循環が生じやすくなることがあります。
龍ケ崎の施術室でも、頭痛と肩こりを長く抱えている方の多くに、呼吸パターンの偏り(胸式優位)と横隔膜の動きの制限が見られることがあります。
肩こりの根本にある内臓・横隔膜のつながりは、NOTEの有料記事でさらに深く書いています。
→ https://lp.suusanosteopathy.com/p/W9SXN7jGh8UC
整体師・オステオパシーの視点から見た慢性頭痛——薬では届かない「膜」の問題
鎮痛薬は痛みの信号を一時的に遮断するという意味では有効な場面があります。しかし、後頭下筋群の過緊張・硬膜緊張・横隔膜の可動性低下といった「構造的・膜的な問題」には、薬は直接アプローチできません。痛みが繰り返す慢性頭痛の多くは、こうした膜レベルの問題が放置されたまま、症状だけが抑えられている状態である可能性があります。
オステオパシーが「膜」に着目する理由
オステオパシーでは、身体を「骨格・筋肉・内臓・膜・神経・血管・リンパ」すべてが相互に影響し合う一体の構造として捉えます。特に硬膜・筋膜・腹膜・胸膜といった「膜系」の緊張と可動性は、症状の根本に深く関わっていると考えられています。
慢性頭痛に対するオステオパシー的なアプローチとして考えられる方向性は以下のようなものです。
- 後頭下筋群の緊張を解放する:筋膜橋を通じた硬膜緊張を緩和し、大後頭神経・椎骨動脈への機械的ストレスを軽減する方向性
- 頭蓋仙骨(クラニオサクラル)リズムを整える:硬膜管を通じて頭蓋と仙骨をつなぐリズムの評価と調整
- 横隔膜の可動性にアプローチする:呼吸パターンの改善と筋膜連鎖の緊張解放
- 自律神経バランスを整える方向へ:迷走神経の走行に沿ったアプローチで副交感神経が働きやすい状態をつくる
私自身、オステオパシーの専門校での学習を重ねる中で、施術の視点が大きく広がった感覚があります。「どこが痛いか」ではなく「なぜそこに張力が集中しているか」を膜・構造・呼吸・内臓の視点から見ていくと、慢性症状のパターンが立体的に見えてくることがあります。
また、私自身は食生活を植物中心寄りに変えてから、以前より身体の慢性的な張り感が変わってきた感覚があります(個人の体験です)。身体の構造だけでなく、炎症傾向や自律神経バランスに関わる食と生活習慣の視点も、慢性頭痛を考える上で無視できない要素だと感じています。
食と身体のつながりについては、有料コンテンツシリーズで整体師の実体験とともに詳しく書いています。
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まとめ
緊張型頭痛と肩こりが「セットで起こる」理由は、後頭下筋群・硬膜・大後頭神経・椎骨動脈・横隔膜・筋膜連鎖という解剖学的な構造に、理由があると考えられます。薬で一時的に痛みを抑えることはできても、この膜レベルの構造的な連鎖が解消されない限り、症状は繰り返しやすい状態が続く可能性があります。茨城・龍ケ崎で慢性的な頭痛や肩こりでお悩みの方も、全国的にこうした問題を抱えている方も、「なぜ起きているのか」という構造的な理解が、根本へのアプローチの第一歩になることがあります。
よくある質問
Q. 緊張型頭痛と肩こりはなぜいつも同時に起こるの?
A. 後頭下筋群が過緊張すると硬膜・後頭神経を圧迫して頭痛が生じ、同時に僧帽筋や肩甲挙筋への筋膜連鎖が肩こりを引き起こすため、両症状はほぼ同じ構造的原因から起きています。
Q. 後頭下筋群はどこにあってなぜ頭痛に関係するの?
A. 後頭下筋群は頭蓋底と第1・第2頚椎の間にある深層の小筋群で、硬膜と直接つながる結合組織を持ちます。この筋が緊張すると硬膜が牽引され、大後頭神経が圧迫されて頭痛が発生します。
Q. 横隔膜が肩こりや頭痛に影響するって本当?
A. 横隔膜は浅頚筋膜・斜角筋・胸鎖乳突筋と筋膜的につながっており、浅い呼吸が続くと呼吸補助筋が過剰に使われ、首・肩の筋群が慢性緊張します。これが肩こりと頭痛の一因になります。

鈴木大樹(すずき だいき)
柔道整復師 / オステオパシー専門校在学中 / 産後リハビリ国際セミナー修了
茨城県龍ケ崎市で妻・佳代とともに整体院を営む整体師。食・自然療法・筋膜のつながりを臨床と学びの中で深め、「なぜ身体はそうなるのか」を発信し続けています。
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すーさん夫婦の龍ケ崎整体院
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