何度マッサージに行っても、翌日には元に戻ってしまう——。そんな経験を繰り返している方は少なくないと思います。もしかしたら、それは「筋肉だけを見ている」からかもしれません。整体師・柔道整復師として、またオステオパシーの専門校で学ぶ立場から日々の臨床に向き合っている私が、慢性肩こりに隠れた「内臓からのサイン」という切り口で、横隔膜や肝臓が肩に影響する仕組みを筋膜・解剖学をベースに丁重に紐解いていきます。
マッサージで治らない肩こりが「慢性化」する本当の理由
慢性肩こりに悩む方の多くが、まず向かうのはマッサージや揉みほぐしです。その場では楽になっても、数日後にはまた同じ場所が張ってくる——この繰り返しに心当たりはないでしょうか。
なぜこうなるのか。一つの大きな理由として、「痛みの場所=原因の場所ではない」という可能性が考えられます。オステオパシーや徒手療法の世界では、「一次制限(最初に起きた機能の乱れ)が別の場所にあるとき、痛みの出ている場所だけにアプローチしても根本には届きにくい」という考え方があります。
たとえば、肩まわりの筋肉が常に緊張している場合、その筋肉自体に問題があるのではなく、どこか別の構造が慢性的に引っ張っている可能性があります。これを「病変連鎖」と表現することがあります。最初の制限がほかの構造に波及し、代償が積み重なって慢性症状として表れる——これが、マッサージで一時的には楽になってもすぐ戻る理由の一つと考えられます。
また、筋膜トリガーポイント(筋膜内の過敏な圧痛点)の研究では、慢性肩こりに対して筋膜へのアプローチが痛みの改善に役立つ可能性が示されています。この視点から見ても、表面の筋肉だけでなく、筋膜の連続性・張力の流れ全体を見ることが重要と考えられます。
自律神経と肩こりの関係も見逃せない
さらに見落とされがちなのが、自律神経と肩こりのつながりです。慢性的なストレスや睡眠不足は交感神経を優位にし、首・肩まわりの筋緊張が高まりやすい状態をつくります。内臓の疲労も自律神経を介して筋緊張に影響する可能性があり、「内臓の疲れが肩に出る」という現象は、この自律神経を通じたルートでも起きていると考えられます。
当院(茨城県龍ケ崎市の整体院)の臨床経験では、デスクワークが多く睡眠の質が低い患者さんに、慢性的な肩こりと消化器系の不調が重なっているケースを感じることがあります。これは医学的な診断ではなく、臨床上の傾向として感じていることです。
横隔膜と肩をつなぐ筋膜ライン——解剖学が教える内臓連動の仕組み
「横隔膜と肩が関係する」と聞いて、ピンとこない方も多いかもしれません。でも解剖学的に見ると、これは非常に理にかなったつながりです。
横隔膜は、胸腔(肺・心臓のある空間)と腹腔(胃・肝臓・腸のある空間)を仕切るドーム状の筋肉です。呼吸のたびに上下に動き、1日に2万回以上収縮と弛緩を繰り返しています。この横隔膜が慢性的に緊張・制限を受けた状態になると、周囲の構造全体に影響が出る可能性があります。
横隔膜から頸椎・肩へ——筋膜連鎖のルート
解剖学的に重要なのが、横隔膜を支配する横隔神経(C3〜C5)です。この神経は頸椎の3〜5番から出ており、首・肩まわりの神経と出所が非常に近い。つまり横隔膜の緊張や機能の乱れが、神経的なルートを通じて肩や首の感覚・緊張に影響する可能性があります。
さらに、筋膜の連続性(筋膜連鎖)という視点も重要です。筋膜研究者のスtecco(ステッコ)らの研究では、筋膜は全身をつながる一枚のネットワークとして機能し、ある部位の緊張が離れた場所まで張力として伝わることが示されています。横隔膜と肩甲骨まわりの筋膜は、この連続するネットワークの中でつながっており、横隔膜の動きの制限が筋膜ラインを通じて肩甲骨・頸部の緊張に影響する可能性があります。
深呼吸が肩こりに効果的と言われることがありますが、これは単純なリラックス効果だけでなく、横隔膜の動きを回復させることで筋膜の緊張パターンが整いやすくなる、という仕組みが背景にある可能性があります。もちろん個人差があり、深呼吸で必ず改善するとは言えませんが、横隔膜の動きを意識することは筋膜連鎖の視点からも理にかなったアプローチの方向性と考えられます。
肝臓・胃・腸が肩に影響する?オステオパシーから見た内臓体性反射
「内臓が肩こりを引き起こす」と聞くと、飛躍しているように感じるかもしれません。しかし、オステオパシーの分野では「内臓体性反射(内臓の状態が筋骨格系に反映される反射)」という概念がよく知られており、これは解剖・生理学的な根拠をもとにした考え方です。
たとえば心臓発作のときに左肩や左腕が痛む「放散痛」は広く知られています。これも内臓の状態が神経を通じて体表・筋肉に影響を与える現象の一種です。同じ仕組みで、肝臓や胆嚢の状態が右肩に影響する可能性があると、オステオパシーの臨床では考えられています。
肝臓と右肩——筋膜と横隔膜を介したつながり
肝臓は右の肋骨の下、横隔膜に密接して位置しています。重量は約1〜2kgにもなり、横隔膜と直接つながる膜(靭帯)によって固定されています。この「肝臓と横隔膜の膜的なつながり」が、肝臓の可動性が低下したとき(たとえば疲労・炎症・生活習慣による負担増加などが考えられますが、これは医学的な診断ではありません)、横隔膜の動きに影響し、さらに横隔神経を通じて右肩・右頸部の緊張につながるルートが存在する可能性があります。
オステオパシーの内臓マニピュレーション(内臓への徒手アプローチ)の文脈では、肝臓への施術アプローチと右肩の可動性変化が関連して観察されるという臨床報告があります。これは現時点で研究段階・臨床経験レベルの知見であり、医学的に確立されたメカニズムとして断言できるものではありませんが、「肝臓と肩のつながり」という視点は整体・オステオパシーの臨床において無視できない可能性を持っています。
また、胃の不調が左肩の緊張に関係するケースや、腸の制限が腰・骨盤のバランスを通じて全身の筋膜張力に影響するケースも、当院の臨床経験では感じることがあります(個人の臨床観察であり、一般化・断定はできません)。
こうした内臓と肩のつながりについて、有料コンテンツではさらに深く、整体師の視点から実践的に書いています。
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整体師として「肩こりの根っこ」にどうアプローチするか
ここまで、横隔膜・肝臓・筋膜連鎖という視点から慢性肩こりの背景にある仕組みをお伝えしてきました。では、整体師として実際にどういう視点でアプローチしているのか、少し共有させてください。
私が大切にしているのは、「痛みの出ている場所と、問題の起きている場所は違う可能性がある」という前提から評価を始めることです。肩が痛い患者さんでも、まず全体の姿勢・呼吸パターン・横隔膜の動き、そして内臓の可動性(膜の張り・硬さなど)を観察するところから始めます。
「構造・内臓・頭蓋」の三軸で全体を見る
私の施術の軸は、BODY(構造・内臓・頭蓋)× MIND(食事・自然療法)× SPIRIT(全体性)という三つの視点です。肩こりひとつをとっても、骨格・筋膜のアライメント(構造)だけでなく、内臓の膜的なつながり、さらには食生活や自律神経の状態まで含めて全体像を把握しようとしています。
たとえば龍ケ崎や茨城エリアで来院される患者さんの中には、長年マッサージを続けてきたけれど一向に変わらない、という方が少なくありません。そうした方の状態を丁寧に観察していくと、横隔膜の動きの制限や、右肋骨下あたりの膜の硬さが感じられることがあります(これは当院の臨床経験に基づく観察であり、医学的診断ではありません)。
トリガーポイントへのアプローチについては、筋膜の状態を評価しながら、単に圧痛点を押すだけでなく、その張力がどこから来ているかを逆算する視点が重要だと考えています。超音波画像を使った筋膜評価の研究でも、筋膜の状態をより精密に把握することで施術の視点が広がるという報告があります。こうした研究の方向性は、内臓と筋膜のつながりを含めた全体評価の重要性を示唆しているように感じます。
セルフケアと受診の目安
肩こりへのセルフケアの方向性(深呼吸・姿勢の見直しなど)については有料コンテンツで詳しく解説しています。
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また、肩こりが強くなっている・頭痛・吐き気・手のしびれを伴う・安静にしていても痛みが続くという場合は、自己判断せず医療機関にご相談ください。内臓疾患が肩の症状として表れているケース(胆石・心臓疾患など)もあるため、強い症状や急な変化がある場合は必ず受診することをお勧めします。
まとめ
マッサージでとれない慢性肩こりの背景には、横隔膜の緊張・肝臓との筋膜的つながり・内臓体性反射など、筋肉の外側にある仕組みが関わっている可能性があります。「肩が痛いから肩だけを揉む」ではなく、全体のつながりを見渡すことで、アプローチの視点が大きく変わることがあります。一つひとつの仕組みを理解することが、慢性症状との向き合い方を変えるきっかけになれば幸いです。
参考文献
本記事の作成にあたり参照した研究論文です(内容は要約・意訳したものであり、原文の直接引用ではありません)。
- Myofascial triggerpoint release (MTR) for treating chronic shoulder pain: A novel approach(J Bodyw Mov Ther 2016) PubMed
- Ultrasound imaging and guidance in the management of myofascial pain syndrome: a narrative review(J Yeungnam Med Sci 2024) PubMed
よくある質問
Q. 内臓が悪いと肩こりになるって本当ですか?
A. 内臓の緊張や機能低下は筋膜を通じて肩周辺の筋肉に影響を与えることがあります。特に横隔膜や肝臓と肩甲骨周辺の筋膜はつながっており、内臓の問題が肩こりとして現れるケースは整体・オステオパシーの臨床でよく見られます。
Q. 肩こりのマッサージが効かないのはなぜですか?
A. 肩の筋肉だけにアプローチしても、横隔膜や内臓の緊張・筋膜の連鎖が根本にある場合は改善しにくいです。筋肉をほぐしても原因が残ったままだと、短期間でまた元に戻ってしまうことが慢性肩こりでは多く見られます。
Q. 深呼吸をすると肩こりが楽になるのはなぜですか?
A. 深呼吸によって横隔膜が大きく動くと、横隔膜に付着する筋膜や周辺臓器へのポンプ作用が生まれます。肩周辺の筋膜緊張が和らぐことで一時的に肩こりが軽減される場合があり、横隔膜と肩の筋膜的なつながりを示す現象と考えられます。

鈴木大樹(すずき だいき)
柔道整復師 / オステオパシー専門校在学中 / 産後リハビリ国際セミナー修了
茨城県龍ケ崎市で妻・佳代とともに整体院を営む整体師。食・自然療法・筋膜のつながりを臨床と学びの中で深め、「なぜ身体はそうなるのか」を発信し続けています。
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すーさん夫婦の龍ケ崎整体院
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