デスクワークで首肩がつらい|座り姿勢と筋膜の深い関係

肩こり
この記事は個人の体験談と参考書籍をもとにした健康情報です。医療的な診断・治療に代わるものではありません。持病のある方・服薬中の方は必ず主治医にご相談ください。
デスクワークで首肩がつらいの挿絵(水彩)

揉んでもらった直後は首肩がふっと軽く感じるのに、パソコンに向かうと夕方にはまた重さが戻ってくる。そんな繰り返しに疲れている方は少なくありません。その背景には、首肩の筋肉だけでなく、座り姿勢が続くことで頭から骨盤までつながる筋膜に張力が溜まり続けていることがあるかもしれません。この記事では、柔道整復師として日々施術をしている立場から、膜・筋膜・内臓の連動という視点で「なぜつらさが戻るのか」を読み解いていきます。

デスクワークで首肩がつらいのは「首肩だけ」の問題ではない

首や肩がつらいとき、多くの方は首の後ろや肩の上(僧帽筋や肩甲挙筋と呼ばれる筋肉のあたり)に手を当てます。実際にそこが張っているのは確かです。ただ、つらさを感じる場所と、張力が生まれている場所が同じとは限りません。

筋膜は全身をつなぐ「ボディスーツ」のような組織

筋膜は、筋肉一本一本を包み、さらに筋肉同士や骨、内臓のまわりまでつながっている薄い膜の組織です。解剖学の専門書でも、筋膜は部位ごとに区切られた袋ではなく、全身にわたって連続した構造として説明されています。この筋膜の連続性があるため、ある場所で生まれた引っぱりが、離れた場所の張りとして感じられることがあります。

たとえば長時間座りで首こりが出る方の場合、次のような場所にも同時に負担が重なっていることがあります。

  • 胸の前側(鎖骨の下から胸骨のあたり)が縮こまっている
  • 背中の上部が丸まったまま引き伸ばされている
  • みぞおちからお腹にかけて、呼吸のたびの動きが小さい
  • 骨盤が後ろに倒れ、腰の自然なカーブが失われている

すーさん夫婦の龍ケ崎整体院の施術の現場では、首肩のつらさを訴えて来られるデスクワークの方で、胸の前側やお腹まわりの硬さもあわせて感じることがよくあります。座りっぱなしの疲労は、首肩という一点ではなく、体の前後を包む膜全体に積み重なっているのではないか。これが、日々の施術のなかで私たちが持っている見立ての出発点です(あくまで臨床で感じている傾向であり、すべての方に当てはまるわけではありません)。

座り姿勢で筋膜に何が起きているのか|頭の重さと膜の張力

成人の頭の重さは、一般に体重の1割前後といわれます。ボウリングの球ほどの重さのものが、首という細い柱の上に乗っているイメージです。

頭の前方位と「てこ」の仕組み

パソコン作業の姿勢で画面をのぞき込むと、頭が肩よりも前に出やすくなります。これを頭の前方位と呼びます。頭が前に出るほど、首の付け根を支点にした「てこ」の腕が長くなり、首の後ろ側の筋肉や筋膜は、頭が前に落ちないように引っぱり続けることになります。

座り姿勢では、こうした変化が一つずつ連なっていくと考えられます。

  1. 椅子に深く座りきれず、骨盤が後ろに倒れる
  2. 腰から背中が丸くなり、胸の前側が縮む
  3. 目線を画面に合わせるため、頭が前に出てあごが上がる
  4. 首の後ろと肩の上で、筋肉と筋膜が支え役を担い続ける

動かない時間が膜の性質を変えていく

筋肉は、縮んでゆるんでを繰り返すことで血液の流れを保っています。ところが同じ姿勢が続くと、弱い力で支え続ける状態になり、休むタイミングを失いがちです。筋膜の専門書では、筋膜は層と層が滑り合うことで動きを伝えており、動きが少ない状態が続くとその滑りが悪くなる場合があると説明されています。

つまり、つらさの正体は「首の筋肉が疲れた」だけでなく、骨盤から頭までの膜が、丸まった座り姿勢の形に合わせて張力を抱え込んでいる状態だと考えられます。夕方にかけてじわじわ重くなるのは、この張力が時間とともに積み重なっていくためかもしれません。

整体師は首肩の不調をどう見るか|胸郭・横隔膜・内臓の連動

整体師、とくにオステオパシーを学ぶ立場から首肩を見るとき、私が意識しているのが呼吸です。デスクワークの方には、呼吸の浅さを自覚している方が少なくありません。

胸郭が動かないと、首が呼吸を手伝う

背中が丸まった姿勢では、肋骨のかご(胸郭)が広がりにくくなり、胸とお腹を仕切る横隔膜の上下の動きも小さくなると考えられています。そうなると、首の前から横にある斜角筋や胸鎖乳突筋が、肋骨を引き上げて呼吸を手伝う割合が増えていきます。本来は補助役の筋肉が、一日中呼吸のたびに働き続けるわけです。

また解剖学では、横隔膜を動かす横隔神経は首の高さ(第3〜5頸神経)から出ていることが知られています。横隔膜と首は、神経の面でもつながりのある関係です。

横隔膜の下にある内臓という視点

横隔膜のすぐ下には、右側に肝臓、左側に胃があり、膜や靭帯を介して横隔膜とつながっています。オステオパシーの考え方では、内臓が呼吸に合わせて動く際の動きやすさが、横隔膜や胸郭、さらに肩まわりの張力に影響することがあるとされています。これは医学的に確立した説明ではなく、施術者が体を見るときの視点のひとつとして受け取ってください。

施術の現場では、肩こりと頭痛が重なっている方で、横隔膜まわりやみぞおちの右側に硬さを感じることがあります。その部分に触れたあと、首の張りの感じ方に変化を感じたと話される方もいます。オステオパシーの専門校で学ぶなかでも、首肩の不調を胸郭と内臓の連動から見直す視点の大切さを実感しています。

整体師として考えていることは、noteにも書いています。整体師として考えていることは、noteにも書いています。
→ https://note.com/honest_rose9929

揉んでもすぐ戻るのはなぜか|痛いところだけで終わらない視点

首肩を揉んでもらうと、その場では張りがゆるんだ感覚があります。それでもすぐに戻ってしまう理由として、私たちは「張力の連鎖」という考え方をしています。

つらさは連鎖の「最後の場所」に出やすい

ある場所で動きが制限されると、周りの組織がそれを補おうとし、さらにその補いを別の場所が補う、という連鎖が生まれると考えられています。首肩は、骨盤から背中、胸、横隔膜と続く連鎖の終点になりやすい場所です。終点だけをゆるめても、連鎖のもとになっている張力がそのままなら、また座ったときに同じ場所へ負担が集まってしまいます。

そのため施術では、首や肩のつらい場所にももちろん触れたうえで、胸郭、横隔膜、お腹、骨盤まで、関係していると考えられる部位もあわせて確認します。施術時間は約45分で、その間に全身の膜のつながりを順にたどっていきます。痛いところだけで終わらせない、というのが私たちが大切にしている考え方です。

「良い姿勢」を固めればよいわけではない

デスクワークの姿勢矯正というと、背筋をぴんと伸ばした姿勢を保つことを思い浮かべるかもしれません。ただ、どれほど整った姿勢でも、長時間固め続ければ同じ姿勢での固定になります。姿勢センサーのような道具を、姿勢に気づくきっかけとして使う方もいますが、大切なのは一つの形を守ることより、同じ張力をかけ続けない工夫だと考えています。茨城でも在宅勤務の方が増え、気づけば何時間も座ったままという声をよく耳にします。

セルフケアについて整体師としてどう考えているかは、noteにも書いています。
→ https://note.com/honest_rose9929

なお、腕や手のしびれ、力の入りにくさ、強い痛み、発熱をともなう場合や、首肩のつらさが長く続いている場合は、頸椎の病気などが関わっていることもあるため、自己判断せず整形外科などの医療機関にご相談ください。

まとめ

デスクワークで首肩がつらいとき、その背景には座り姿勢による頭の前方位や、骨盤から頭までをつなぐ筋膜の張力、胸郭と横隔膜の動きの小ささが重なっていることがあります。揉んでもすぐ戻るのは、つらさが張力の連鎖の終点に出ているためかもしれません。首肩だけでなく、呼吸やお腹、骨盤まで含めて体を一続きのものとして見ることが、つらさの背景を考える手がかりになります。

免責事項:本記事は個人の体験談および一般的な健康情報の提供を目的としており、医療診断・治療に代わるものではありません。同様の効果を保証するものではありません。持病のある方・服薬中の方は生活習慣の変更前に必ず主治医にご相談ください。

参考文献

本記事の作成にあたり参照した研究論文です(内容は要約・意訳したものであり、原文の直接引用ではありません)。

  1. Sitting Posture during Prolonged Computer Typing with and without a Wearable Biofeedback Sensor(Int J Environ Res Public Health 2021) PubMed

よくある質問

Q. デスクワークの首こりは姿勢を良くすればいいの?

A. 良い姿勢を一つ決めて固めることより、同じ姿勢が長時間続くこと自体が筋膜の負担になると考えます。背すじを伸ばしても動かなければ別の場所に張力が集まるため、姿勢の「正しさ」より「変化」を意識する視点が大切です。

Q. 姿勢センサーや姿勢矯正グッズは使ったほうがいい?

A. 姿勢センサーは自分の座り方の癖に気づくきっかけとして役立つ道具です。ただし通知に合わせて同じ形に固め続けると、別の部位に緊張が生まれることもあります。気づくための道具として使い、身体の感覚とあわせて考えるのがよいと思います。

Q. 首肩のつらさに手のしびれやめまいもあるときはどうすればいい?

A. 腕や手のしびれ、力の入りにくさ、めまい、強い頭痛を伴う場合は、頸椎症や神経の圧迫など整体の範囲を超える状態が隠れていることもあります。自己判断せず、まず整形外科などの医療機関を受診してください。

鈴木大樹

鈴木大樹(すずき だいき)

柔道整復師 / オステオパシー専門校在学中 / 産後リハビリ国際セミナー修了

茨城県龍ケ崎市で妻・佳代とともに整体院を営む整体師。食・自然療法・筋膜のつながりを臨床と学びの中で深め、「なぜ身体はそうなるのか」を発信し続けています。

さらに深く知りたい方へ

デスクワークやスマホの姿勢と首・肩のつらさについて、研究で言えることと言えないことを分けて、noteに書いています。

・「座りっぱなしだから、首と肩がつらい」は、どこまで本当か|デスクワークと首・肩の研究を、言えること・言えないことに分けて読む(有料)
・「スマホを見る姿勢のせいで、首が痛いのでしょうか」|首の角度と痛みの研究を、関連あり・関連なしの両方から同じ物差しで読む(有料)
・揉んでも戻ることについて、痛い場所だけでは終わらないと整体師が考える理由(有料)

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