医療従事者の肩こり・首こりの原因|姿勢と筋膜の深い関係

肩こり
この記事は個人の体験談と参考書籍をもとにした健康情報です。医療的な診断・治療に代わるものではありません。持病のある方・服薬中の方は必ず主治医にご相談ください。
医療従事者の肩こり・首こりの原因の挿絵(水彩)

患者さんの体を支え、処置や記録で前かがみの時間が続く医療職の首や肩には、休みの日をはさんでも抜けにくい張りが残りがちです。その背景には、首から肩・胸・腕へとつながる筋膜の連続性と、呼吸や内臓の動きとの連動があると考えられます。この記事では、柔道整復師の視点から、医療従事者の肩こり・首こりがなぜ長引きやすいのか、その仕組みを解剖からていねいにひも解いていきます。毎日まわりの人の体を気にかけている方にこそ、ご自身の体のことを知っていただけたらと思います。

医療従事者に肩こり・首こりが続きやすいのはなぜか

筋肉・骨・関節・腱などに起こる痛みや不調は、まとめて筋骨格系障害と呼ばれます。腰痛がよく知られていますが、肩や首のつらさもこの仲間です。厚生労働省の「職場における腰痛予防対策指針」でも、介護・看護の作業は前かがみや中腰の姿勢が多い作業として取り上げられており、医療や介護の現場が体に負担のかかりやすい職場であることは、公的にも意識されています。

医療職の仕事を体の使い方から見ると、首肩に負担が集まりやすい要素がいくつも重なっています。

  • ベッドの高さに合わせて背中を丸め、患者さんをのぞき込む姿勢が多い
  • 体位変換や移乗など、腕を前に伸ばしたまま力を出す場面がある
  • 採血や処置など、手元を見つめながら細かい作業を続ける
  • 電子カルテの入力で、画面に向かって頭が前に出やすい
  • 夜勤や不規則な勤務で、体を休める時間がまとまって取りにくい

一つひとつは短い時間でも、一日の中で何度もくり返されることで、首肩の張りが積み重なっていきます。

頭の重さと頸椎の関係

成人の頭は、一般に体重のおよそ1割ほどの重さがあると言われます。頭の重さと頸椎の関係は、てこの仕組みで考えるとわかりやすくなります。頭が体の真上にあるときは、首の骨(頸椎)がその重さを受け止めやすい状態です。ところが、手元をのぞき込んで頭が前に出るほど、首の後ろの筋肉は頭が前に落ちないよう引っぱり続ける必要があります。

茨城県龍ケ崎市のすーさん夫婦の龍ケ崎整体院で施術をしていると、医療や介護の仕事をされている方では、首の後ろだけでなく、胸の前側や肩甲骨の内側まで硬さが広がっている方が多い印象があります。あくまで施術の現場で感じている傾向ですが、首だけの問題として片づけにくい、というのが実感です。

前かがみの姿勢と手技の反復動作が首肩の筋膜に残すもの

前かがみ姿勢が続くと、体の前側と後ろ側で、筋肉の置かれる状況がまったく変わります。胸の前にある大胸筋や小胸筋は縮んだ位置のまま固まりやすく、背中側の僧帽筋や肩甲骨まわりの筋肉は、引き伸ばされながら頭と腕の重さを支え続けることになります。

引き伸ばされた筋肉は「ゆるんでいる」わけではありません。伸ばされた状態で踏ん張り続けているため、むしろ疲れがたまりやすい状態です。肩甲骨の内側の重だるさを訴える方が多いのは、こうした体の前後のアンバランスが関わっていると考えられます。

筋膜は「包み、つなぎ、すべらせる」膜

筋膜とは、筋肉の一つひとつを包み、さらに筋肉どうしをつないでいる薄い膜の層のことです。膜と膜のあいだがなめらかにすべることで、筋肉はそれぞれ自由に動けます。筋膜を扱う専門書では、同じ姿勢や同じ方向の動きが長く続くと、この層どうしのすべりが落ちやすくなると説明されています。

医療職の仕事には、採血や注射、吸引、リハビリの手技、器具の操作など、同じ方向の反復動作が多く含まれます。動かしている手や指だけでなく、その動きを安定させるために肩甲骨や首の筋肉が細かく働き続けている点が見落とされがちです。

手先の作業が首まで届く理由

指先の細かい作業をするとき、腕がぶれないように土台となる肩甲骨を固定しているのは、僧帽筋や肩甲挙筋(首の横から肩甲骨につながる筋肉)です。つまり、手先が繊細な作業をしているあいだ、首肩は動かずに力を入れ続けています。前腕から上腕、肩、首へと筋膜がつながっているため、手元の負担は首の張りとして感じられることがあります。

これまで診てきた範囲では、利き手側の前腕や肘まわりの張りと、同じ側の首のつらさが重なっている方を見かけることもあります。

痛いところだけでは終わらない理由|筋膜と呼吸・内臓の連動

首や肩をもんでもらった直後は気持ちがよくても、翌日にはまた張っている。そんな経験がある方は少なくないと思います。その理由の一つとして、つらさを感じている場所と、張りを生んでいる場所が必ずしも同じではない、という見方があります。

胸郭と呼吸が首に影響する仕組み

呼吸の主役は、肋骨の内側でドームのように広がる横隔膜です。ところが前かがみの姿勢では、肋骨のかご(胸郭)が広がりにくくなり、横隔膜の動きも小さくなりやすいと考えられます。すると、首の横にある斜角筋や胸鎖乳突筋といった「呼吸を手伝う筋肉」が、本来以上に働くことになります。

これらの筋肉は首の骨や鎖骨、肋骨についているため、呼吸のたびに首まわりが少しずつ働き続けることになります。胸郭と呼吸の動きが小さいままだと、首をいくらほぐしても、次の呼吸からまた首が仕事を引き受けてしまう、という流れが考えられます。

横隔膜と内臓、そして肩のつながり

横隔膜の感覚は、首の神経(第3〜第5頸神経から出る横隔神経)が担っており、横隔膜まわりの刺激が肩のあたりに感じられることがあると解剖学では説明されています。また、横隔膜のすぐ下には肝臓や胃があり、膜や靭帯で横隔膜とつながっています。首の深い層の筋膜の一部も、胸の中の心臓や食道のまわりの空間へと続いています。

オステオパシーでは、こうした膜のつながりを通して、内臓の動きのかたよりが首肩の張りに関わることがある、と考えます。これは解剖のつながりにもとづく臨床的な見方であり、内臓が肩こりの原因だと言い切れるものではありません。施術の現場では、肩こりと頭痛が重なっている方で、みぞおちから右の肋骨の下あたりの硬さや動きをあわせて確認することがあります。

整体師として考えていることは、noteにも書いています。整体師として考えていることは、noteにも書いています。
→ https://note.com/honest_rose9929

整体師が医療職の首肩を見るときに大切にしている視点

医療職の方は、体の知識をお持ちのぶん、ご自身の不調を「仕事柄しかたない」と後回しにしがちです。だからこそ、施術では次のような視点を大切にしています。

  1. 痛いところも、痛くないところも触る
    つらい首肩はもちろん触ります。そのうえで、胸の前側、肩甲骨、腕、肋骨、みぞおち、骨盤まで、関係していると考えられる部位もあわせて確認します。
  2. 仕事の中の体の使い方をうかがう
    立ち仕事か座り仕事か、夜勤の有無、利き手、どんな作業が多いか。どこに負担がたまりやすいかを考える手がかりになります。
  3. 呼吸の動きを見る
    息を吸ったときに胸郭や横隔膜がどう動いているかを、手で確かめていきます。
  4. 張りの方向を手で感じ取る
    オステオパシーでは、強く押し込むことよりも、組織の動きや張りの方向を手で感じ取りながら進めることを大切にします。

私自身、オステオパシーの専門校で学ぶなかで、首肩のつらさを全身のつながりの中で見る視点が広がったと感じています。約45分の施術の中で、首肩だけで終わらせず体全体を整えることを意識しています。変化の感じ方には個人差がありますが、龍ケ崎で日々の施術をしていても、首肩と呼吸や胸まわりを一緒に見ていくことの意味を感じる場面があります。

なお、手や腕のしびれ、力が入りにくい感じ、強い痛みが続く、発熱を伴う、転倒やけがのあとから痛むといった場合は、頸椎の病気などが関わっていることもあるため、自己判断せず医療機関にご相談ください。

まとめ

医療従事者の肩こり・首こりには、前かがみの姿勢や手技の反復動作に加えて、頭の重さと頸椎の関係、筋膜の連続性、胸郭と呼吸、さらには横隔膜や内臓とのつながりまでが重なっていると考えられます。首だけをほぐしてもすぐ戻りやすいのは、張りを生む場所が別にあることがあるからです。患者さんの体を支える毎日の中で、ご自身の体の仕組みにも少し目を向けてみてください。

免責事項:本記事は個人の体験談および一般的な健康情報の提供を目的としており、医療診断・治療に代わるものではありません。同様の効果を保証するものではありません。持病のある方・服薬中の方は生活習慣の変更前に必ず主治医にご相談ください。

参考文献

本記事の作成にあたり参照した研究論文です(内容は要約・意訳したものであり、原文の直接引用ではありません)。

  1. Prevalence of Body Area Work-Related Musculoskeletal Disorders among Healthcare Professionals: A Systematic Review(Int J Environ Res Public Health 2023) PubMed

よくある質問

Q. 看護師の肩こりは前かがみの姿勢が原因ですか?

A. 前かがみの姿勢は大きな要因のひとつですが、それだけではありません。頭の重さを首の後ろの筋膜が支え続けることに加え、介助や処置での腕の反復動作、呼吸の浅さなどが重なり、首肩の負担が積み重なると考えられます。

Q. 肩こりを揉んでもすぐ戻るのはなぜですか?

A. こりを感じる場所は、負担が集まった結果の場所であることが多いためです。筋膜は胸や背中、腕へと連続しているので、離れた部位の動きの硬さや姿勢のくせが残っていると、首肩に再び負担が集まりやすくなります。

Q. 首こりで病院を受診したほうがよいのはどんなときですか?

A. 腕や指のしびれ、力が入りにくい、強い頭痛やめまいを伴う、安静にしても痛みが強まるといった場合は、頸椎椎間板ヘルニアなどの可能性も含めて、まず整形外科などの医療機関を受診してください。

鈴木大樹

鈴木大樹(すずき だいき)

柔道整復師 / オステオパシー専門校在学中 / 産後リハビリ国際セミナー修了

茨城県龍ケ崎市で妻・佳代とともに整体院を営む整体師。食・自然療法・筋膜のつながりを臨床と学びの中で深め、「なぜ身体はそうなるのか」を発信し続けています。

さらに深く知りたい方へ

デスクワークやスマホの姿勢と首・肩のつらさについて、研究で言えることと言えないことを分けて、noteに書いています。

・「座りっぱなしだから、首と肩がつらい」は、どこまで本当か|デスクワークと首・肩の研究を、言えること・言えないことに分けて読む(有料)
・揉んでも戻ることについて、痛い場所だけでは終わらないと整体師が考える理由(有料)

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