肩が上がらない痛みの段階|筋膜と関節包の話

肩こり
この記事は個人の体験談と参考書籍をもとにした健康情報です。医療的な診断・治療に代わるものではありません。持病のある方・服薬中の方は必ず主治医にご相談ください。

腕が上がらない、夜も肩が疼く、その状態が数週間続くと、「このまま長引くのでは」と不安になります。四十肩・五十肩(癒着性関節包炎)は、疼痛期・拘縮期・回復期という段階をたどり、多くは自然に改善へ向かうと報告されています。大切なのは、今の自分がどの段階にいるのかを知ること。段階が違えば、身体の中で起きていることも、考えられるケアの方向性も変わります。ここでは肩関節と筋膜の構造から、その経過の意味を読み解いていきます。

肩が上がらない・夜に疼く、その肩は今どの段階にいるのか

「肩こり 首こりがひどくなっただけだろう」と思っているうちに、いつの間にか服を着替えるのがつらくなり、寝返りで目が覚めるようになる。施術の現場では、そんな経過をたどって来られる方が少なくありません。

研究では、四十肩・五十肩(癒着性関節包炎)は大きく3つのステージを経て進行し、多くは時間の経過とともに自然に改善へ向かうとされています。段階のおおまかな特徴を整理すると、次のようになります。

  • 疼痛期:痛みが主役の時期。夜間の疼きが強く、動かす前から痛い。肩関節可動域はまだ大きくは失われていないのに、痛みで動かせない。
  • 拘縮期:痛みは疼痛期よりやや落ち着く一方で、動かせる範囲そのものが狭くなる。「痛くはないのに、そこから先へ腕が行かない」という壁を感じる。
  • 回復期:少しずつ動く範囲が戻っていく時期。日常動作の端(髪を結ぶ、背中に手を回す)から感覚が変わってくる。

この3段階は、それぞれ数か月単位で移り変わっていくものとされ、肩の痛みの経過としては年単位で見る必要がある場合もあります。ここで知っておきたいのは、「今が痛い」ことと「今が動かない」ことは、身体の中では別の現象だということです。疼痛期に無理に動かそうとして痛みが増す方もいれば、拘縮期に安静を守りすぎて動かせる範囲が狭いまま推移する方もいます。

なお、肩の痛みには腱板の損傷や石灰沈着、頸椎由来のものなど別の背景もあります。安静時にも激しく痛む、腕にしびれが広がる、発熱がある、外傷のあとに急に上がらなくなった。こうした症状・状態が続く場合や強い痛みがある場合は、自己判断せず医療機関にご相談ください。

疼痛期・拘縮期・回復期で肩の中に起きていること|関節包と滑液包の解剖

肩関節(肩甲上腕関節)は、浅い受け皿(関節窩)に大きな上腕骨頭が乗る、人体でもっとも自由度の高い関節です。その自由さを支えているのが、関節包という袋状の膜と、その周囲にある滑液包という薄いクッションです。

腋窩の「たるみ」が動きの余白をつくっている

腕を下げているとき、関節包の下側(腋窩陥凹)はカーテンのようにたるんでいます。腕を上げると、このたるみが伸びて広がることで、はじめて大きな挙上が可能になります。つまり肩の可動域は、筋力よりもまず膜の余白によって決まっている面があるのです。

癒着性関節包炎という呼び名が示すとおり、この段階の肩では関節包や周囲の結合組織の滑走性が低下している可能性が指摘されています。疼痛期には炎症性の反応と痛みが前面に出て、拘縮期にはその後の組織の線維化・短縮が、腋窩のたるみを失わせていく、そう考えると、「痛みは落ち着いてきたのに上がらない」という不可解な時期の説明がつきやすくなります。

もう一つの滑り面、肩峰下滑液包

腕を上げるとき、腱板は肩峰という屋根の下をくぐります。その間に挟まる肩峰下滑液包は、骨と腱が擦れないように滑りを保つ役割を担っています。ここの滑りが悪くなると、挙上の途中で引っかかるような痛みが出やすくなります。肩は「一つの関節」ではなく、複数の滑り面が同時に働く装置だと捉えると、段階ごとの症状の違いが立体的に見えてきます。

研究では、消炎鎮痛薬や注射に加えて運動療法などの保存的なアプローチが組み合わせて用いられていると報告され、肩の状態に合わせた段階的なケアが可動域や痛みの変化に関わる可能性が示されています。裏を返せば、どの段階でも同じことをすればよいわけではないということでもあります。

肩だけを見ても説明がつかない理由|筋膜連続性と肩甲帯・胸郭の連動

腕を真上まで上げる動作は、肩甲上腕関節だけでは完成しません。上腕骨が動く角度に対して、肩甲骨が土台ごと回旋して追従する。この協調が肩甲上腕リズムです。教科書的にはおよそ2対1の比率で分担するとされ、肩甲骨側が動かなければ、上腕骨がいくら頑張っても腕は上がりきりません。

では肩甲骨は何に乗っているのか。答えは胸郭です。肩甲骨は肋骨の上を滑る「浮いた骨」であり、その動きは背骨の伸展、肋骨のしなり、鎖骨と胸鎖関節の回旋に支えられています。ここで筋膜の連続性という視点が効いてきます。

  • 猫背姿勢で胸郭が縮むと、肩甲骨の滑る床面そのものが傾き、挙上の初期からロスが生じます
  • 僧帽筋・肩甲挙筋の持続的な緊張は、肩こり 首こりとして自覚されながら、肩甲骨の回旋を妨げていることがあります
  • 横隔膜は肋骨の内側に広く付着し、呼吸のたびに胸郭の形を変えています。呼吸が浅いまま固まると、胸郭の可動性も乏しくなりやすい

さらに内臓の膜系も無関係ではありません。横隔膜の下には肝臓が吊られており、その膜の張力は横隔膜を介して周囲に伝わります。横隔膜は頸椎から出る横隔神経の支配領域でもあり、右肩周辺の症状と関連づけて語られてきた経緯があります。これは診断を意味するものではありませんが、「肩の動きにくさが、肩の外側の張力に影響されている可能性がある」という見方の根拠になります。

これまで診てきた範囲では、肩の可動域が一段変わる方ほど、胸郭や背骨の動きに余裕が出てきている印象があります。整体師として考えていることは、noteにも書いています。
→ https://note.com/honest_rose9929

整体師が段階に合わせて肩をどう見るか|オステオパシー的な全体性の視点

すーさん夫婦の龍ケ崎整体院では、肩の相談を受けたとき、まず「今どの段階に見えるか」を確認するところから始めます。夜間痛が強く、触れられるだけでも身構えてしまう時期と、痛みより壁を感じる拘縮期とでは、触れ方も、どこまで動かすかも変わってくるからです。

痛いところだけでは終わらせない

肩そのものを確認しないわけではありません。痛む肩にも触れます。そのうえで、肩甲骨と肋骨の滑り、胸椎と肋椎関節の動き、鎖骨まわり、頸椎、そして呼吸に伴う横隔膜の動きといった、関係していると考えられる部位もあわせて確認します。施術は手で圧を加減しながら行うもので、所要45分のなかで全身のつながりを見ていく形です。

日々の施術のなかで感じている傾向として、肩こり 首こりが長く続いていた方が、あるとき肩の挙上のしづらさを自覚し始めるケースがあります。もちろん因果関係を断定できるものではありませんが、肩甲帯まわりの緊張が長く続いた土台の上で症状が表面化している可能性は、視野に入れておく価値があると考えています。

拘縮期 ケアと運動療法をどう考えるか

保存的なアプローチとして運動療法 肩の領域が組み合わせて用いられていることは、先の報告のとおりです。ただしその中身は、段階と痛みの出方によって変わります。疼痛期に負荷の強い動きを重ねれば痛みが増すこともありますし、拘縮期に何もしなければ動かせる範囲が狭いまま推移することもあります。「動かすか、休めるか」の二択ではなく、今の段階で受け入れられる範囲を見極めることが要になります。

そのため、この記事では具体的な体操の手順や回数は紹介しません。実際の進め方は、主治医の方針や検査結果を踏まえて、主治医とご相談のうえ決めてください。セルフケアについて整体師としてどう考えているかは、noteにも書いています。
→ https://note.com/honest_rose9929

茨城県龍ケ崎市でお話を伺うときも、「動かしていいのか怖い」という声はよく聞きます。不安のまま肩をかばい続けると、身体全体の使い方まで変わってしまうことがあります。まずは今の段階を知る。そこから整えていく順番を考える。そういう向き合い方をおすすめしています。

まとめ

四十肩・五十肩(癒着性関節包炎)は、疼痛期・拘縮期・回復期という段階をたどり、多くは自然に改善へ向かうと報告されています。肩の中では関節包のたるみや滑液包の滑りが変化し、その外側では肩甲上腕リズム、胸郭、呼吸、筋膜の連続性が関わっています。今の自分がどの段階にいるのかを知ることが、次の一歩を選ぶ手がかりになります。強い痛みやしびれ、発熱を伴う場合は、まず医療機関にご相談ください。

免責事項:本記事は個人の体験談および一般的な健康情報の提供を目的としており、医療診断・治療に代わるものではありません。同様の効果を保証するものではありません。持病のある方・服薬中の方は生活習慣の変更前に必ず主治医にご相談ください。

参考文献

本記事の作成にあたり参照した研究論文です(内容は要約・意訳したものであり、原文の直接引用ではありません)。

  1. Adhesive capsulitis: review of imaging findings, pathophysiology, clinical presentation, and treatment options(Skeletal Radiol 2019) PubMed
  2. Physical therapy in the management of frozen shoulder(Singapore Med J 2017) PubMed
  3. Frozen shoulder(Nat Rev Dis Primers 2022) PubMed

よくある質問

Q. 四十肩・五十肩はどのくらいの期間で経過しますか?

A. 疼痛期・拘縮期・回復期の3段階をたどり、多くは時間をかけて自然に改善へ向かうと報告されています。期間には個人差が大きく、経過の見立ては医療機関での評価が前提になります。

Q. 痛い時期でも肩は動かしていいのでしょうか?

A. 強い痛みが続く段階と、痛みが落ち着いて動きにくさが主になる段階では考え方が変わります。研究では運動療法などの保存的アプローチが組み合わせて用いられており、段階に応じた判断が必要です。

Q. 肩こり・首こりと四十肩の違いは何ですか?

A. 肩こりは主に筋の緊張感が中心ですが、四十肩・五十肩では腕を上げる・後ろに回す動作そのものが制限される点が特徴です。ただし両者は肩甲帯の動きを通じて影響し合います。

鈴木大樹

鈴木大樹(すずき だいき)

柔道整復師 / オステオパシー専門校在学中 / 産後リハビリ国際セミナー修了

茨城県龍ケ崎市で妻・佳代とともに整体院を営む整体師。食・自然療法・筋膜のつながりを臨床と学びの中で深め、「なぜ身体はそうなるのか」を発信し続けています。

さらに深く知りたい方へ

デスクワークやスマホの姿勢と首・肩のつらさについて、研究で言えることと言えないことを分けて、noteに書いています。

・「座りっぱなしだから、首と肩がつらい」は、どこまで本当か|デスクワークと首・肩の研究を、言えること・言えないことに分けて読む(有料)
・揉んでも戻ることについて、痛い場所だけでは終わらないと整体師が考える理由(有料)

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