肩こりの筋トレが続かない理由|筋膜と負荷の話

肩こり
この記事は個人の体験談と参考書籍をもとにした健康情報です。医療的な診断・治療に代わるものではありません。持病のある方・服薬中の方は必ず主治医にご相談ください。

ストレッチも筋トレも試したのに、数週間でやめてしまった。そんな経験を持つデスクワーカーは少なくありません。研究では、首肩を狙った筋力トレーニングを12週間続けたデスクワーカーで首肩の痛みが軽減したと報告されています。ただ、臨床的に意味のある変化が出た人たちには共通点がありました。それは種目や姿勢の正しさ、つまり「やり方」ではなく、「続け方と負荷の上げ方」だったのです。この記事では、その背景を筋膜と解剖の視点から整理してみます。

筋トレしても肩こりが変わらない人と、変わった人の分かれ目

デスクワーカーを対象にした研究では、首肩まわりを狙った筋力トレーニングを12週間行うと、首肩の痛みが軽くなったと報告されています。興味深いのはその先で、30%以上という臨床的に意味のある変化が出たグループには、実施率70%以上の継続と、負荷の漸進(少しずつ重さや回数を上げていくこと)が関わっていたとされています。

つまり、同じ種目をやっていても、週に1回思い出したようにやる人と、設定した回数の7割以上をこなし続けた人とでは、12週間後の景色が違っていたということです。肩こりの改善にどれくらいの期間が必要かと聞かれることがありますが、研究が示しているのは「数日や数週間ではなく、月単位の積み重ね」という時間感覚でした。

施術の現場では、「筋トレしたけど変わらなかったんですよね」とおっしゃる方に詳しく伺うと、2〜3週間で止まっていたり、最初の負荷のまま同じ回数をくり返していたりするケースが多い印象があります。これまで診てきた範囲では、やり方が間違っていたというより、変化が出る手前で終わっていたのではないか、と感じる場面が少なくありません。

デスクワークの首こりに対して運動が役立つことがあるのは確かですが、その前提として運動の継続率という土台が必要になります。オフィスワーカーの肩こり対策を考えるとき、最初に設計すべきは種目選びではなく、12週間続けられる形にすることだと言えそうです。

首肩の筋肉はどう働いているか|僧帽筋・肩甲帯・筋膜連続性から読む

僧帽筋上部だけが働き続ける構図

パソコン作業中の姿勢を横から見ると、腕は前に出て、肩甲骨は外へ広がり、頭はわずかに前方へ移動しています。この状態では、頭の重さと腕の重さを僧帽筋上部(首の後ろから肩先へ広がる筋)が吊り上げ続ける形になりやすく、持続的な負担が増えている可能性があります。多くの方が「こる」と訴えるのが、ちょうどこの範囲です。

一方で、肩甲骨を背中側に引き寄せ、土台として安定させる前鋸筋や僧帽筋の中部・下部は、座位では出番が少なくなります。肩甲骨の安定性が落ちた状態で腕を使い続けると、上部だけが過剰に働く構図ができあがります。首肩の痛みに対する運動が、肩をすくめる動きよりも肩甲骨を支える方向の種目で組まれることが多いのは、この役割分担の偏りを見ているからだと考えられます。

こりは一か所では完結しない

さらに、筋肉は単独の袋ではなく、筋膜という膜で連続しています。後頭部から首の後ろ、背中、腰へと張力が伝わる筋膜連続性の視点で見ると、首肩のこりは胸郭や骨盤の状態とも無関係ではありません。胸郭の動きが乏しく呼吸が浅い状態が続くと、呼吸の補助として首まわりの筋が動員され、休むタイミングを失いやすくなります。

オステオパシーの枠組みでは、横隔膜と肝臓など内臓まわりの膜の緊張が、横隔神経(頸椎3〜5番あたりから出る神経)を介して肩の感覚と関係する経路も語られます。日々の施術のなかでも、肩こりと頭痛を併せて訴える方では、首だけでなく胸郭や横隔膜まわりの動きを確認すると見え方が変わると感じることがあります。もちろんこれは臨床で感じている傾向であって、すべての方に当てはまる医学的事実ではありません。

6週目に中断が増えるのはなぜか|組織の適応と負荷の漸進という視点

同じ研究では、開始から6週前後で中断する人が多いことも示されています。この時期は、始めたときの新鮮さが薄れ、一方で大きな変化はまだ実感しにくいという、ちょうど谷間にあたります。

身体の側の事情もあります。筋は比較的早く反応しますが、腱や筋膜といった結合組織はゆっくり適応していくと言われています。最初の数週間で「動かしやすくなった」という感覚が出たあと、同じ負荷のままだと刺激が頭打ちになり、変化の実感が止まります。そこで負荷の漸進がないと、「やっても同じ」という結論になりやすいわけです。

逆に、焦って一気に負荷を上げると、僧帽筋上部の張りが強まって翌日つらくなり、それも中断の引き金になります。首肩の痛みと運動の継続を両立させるには、次のような考え方が目安になります。

  • 週あたりの実施回数を、まず守れる最小ラインで設定する
  • 数週間ごとに、回数か重さのどちらか一方だけを少し上げる
  • 翌日に強い張りが残る日が続くなら、負荷ではなく頻度から見直す
  • 6週目前後は「停滞する時期」とあらかじめ織り込んでおく

そして研究では、継続を支える働きかけ(声かけや進捗の確認といったサポート)が役立つ可能性も示されています。筋力トレーニングの指導が意味を持つのは、フォームを直す場面だけではなく、むしろ止まりそうな時期に伴走する点にあるのかもしれません。一人で黙々と続けるより、記録を残す、家族に宣言する、定期的に身体を見てもらう日を作るなど、外から支える仕組みを先に用意しておく。これは精神論ではなく、継続率という測れる要素への実務的な対策です。

整体師として考えていることは、noteにも書いています。
→ https://note.com/honest_rose9929

整体師として考えていることは、noteにも書いています。

整体師が見る「続けられる身体の条件」とオステオパシー的な観察

茨城県龍ケ崎市で施術をしているすーさん夫婦の龍ケ崎整体院には、在宅勤務や長時間のパソコン作業で首肩のこり、頭痛が気になるという方が来られます。そうした方とお話ししていて思うのは、運動が続かない理由が意志の弱さではなく、動かす前の身体の条件にあることも多いという点です。

たとえば肩甲骨を寄せる種目をしようとしても、胸郭(肋骨のかご)が硬く、肋骨と背骨の関節の動きが乏しければ、肩甲骨が乗る土台が動きません。結果として、やりたい筋ではなく僧帽筋上部が代わりに頑張り、翌日のつらさだけが残ります。これが続けば、人は自然とやめます。

そのため施術では、こっている首肩だけでなく、胸郭や横隔膜まわり、骨盤から下の支えまで含めて確認します。痛いところも触りますが、痛いところだけでは終わらない、という見方です。腸骨まわりの動きの制限が肩の使い方に関係していると感じる場面もあり、関係していると考えられる部位もあわせて確認するようにしています。筋膜連続性を前提にすると、離れた部位を見ることは遠回りではありません。

施術は柔道整復師(国家資格)の鈴木大樹・鈴木佳代の2人で行い、整体オステオパシーコースは約45分です。私自身はオステオパシーの専門校で学習中で、そこで扱う膜や内臓の連動の視点を、日々の観察に重ねています。ただし学んだ内容であって、これらを診断・治療できるという意味ではありません。

なお、首肩のこりや頭痛が強くなっていく、腕のしびれがある、発熱を伴うといった場合は、自己判断せず医療機関にご相談ください。運動を始める時期や内容についても、持病のある方は主治医の確認を先に取ってください。

まとめ

デスクワークの首こりや肩こりに対して、首肩を狙った筋力トレーニングを12週間続けたデスクワーカーで痛みが軽減したと研究では報告されています。そして意味のある変化には、実施率70%以上の継続と負荷の漸進が関わっていました。鍵は正しいやり方よりも、6週目の谷を越える仕組みと、少しずつ上げる設計です。動かす前の胸郭や呼吸の状態を整えることが、その継続を支える場合もあります。龍ケ崎の現場で感じているのは、続けられる形になった人ほど、身体の変化を語れるようになるということです。

免責事項:本記事は個人の体験談および一般的な健康情報の提供を目的としており、医療診断・治療に代わるものではありません。同様の効果を保証するものではありません。持病のある方・服薬中の方は生活習慣の変更前に必ず主治医にご相談ください。

参考文献

本記事の作成にあたり参照した研究論文です(内容は要約・意訳したものであり、原文の直接引用ではありません)。

  1. Clinically Relevant Decreases in Neck/Shoulder Pain Among Office Workers Are Associated With Strength Training Adherence and Exercise Compliance: Explorative Analyses From a Randomized Controlled Trial(Phys Ther 2023) PubMed
  2. Effect of training supervision on effectiveness of strength training for reducing neck/shoulder pain and headache in office workers: cluster randomized controlled trial(Biomed Res Int 2014) PubMed

よくある質問

Q. 肩こりの筋トレはどのくらいの期間で変化が出ますか?

A. 研究ではデスクワーカーが首肩を狙った筋力トレーニングを12週間行い、痛みの軽減が報告されています。30%以上の変化には実施率70%以上の継続と負荷の漸進が関わっていたとされています。

Q. 筋トレをすると逆に肩が重くなるのですが続けていいですか?

A. 一時的な張りか、負荷が過大かの見極めが必要です。翌日以降も痛みが増す、頭痛やしびれを伴う場合は負荷設定や姿勢の問題が考えられるため、一度専門家に相談されることをおすすめします。

Q. デスクワークの頭痛も首肩のトレーニングと関係しますか?

A. 首の後面や肩甲帯の筋群は後頭部の膜組織と連続性を持つため、首肩の負担が頭部の症状として感じられることがあります。頭痛が続く場合は医療機関での確認も併せて検討してください。

鈴木大樹

鈴木大樹(すずき だいき)

柔道整復師 / オステオパシー専門校在学中 / 産後リハビリ国際セミナー修了

茨城県龍ケ崎市で妻・佳代とともに整体院を営む整体師。食・自然療法・筋膜のつながりを臨床と学びの中で深め、「なぜ身体はそうなるのか」を発信し続けています。

さらに深く知りたい方へ

デスクワークやスマホの姿勢と首・肩のつらさについて、研究で言えることと言えないことを分けて、noteに書いています。

・「座りっぱなしだから、首と肩がつらい」は、どこまで本当か|デスクワークと首・肩の研究を、言えること・言えないことに分けて読む(有料)
・揉んでも戻ることについて、痛い場所だけでは終わらないと整体師が考える理由(有料)

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