野菜中心の食事にしている。体に良いとされる食品を選んでいる。それでも体調の変化を感じにくい、という声を聞くことがあります。2015年にCell誌で報告された研究では、同じ食事でも食後血糖の上がり方は人によって大きく異なり、その違いに腸内細菌の構成が関わるとされました。この記事では、欧州の高齢者を対象にした地中海食の研究や、植物性食品と炎症に関する総説を、研究の対象と限界を明記しながら読み解きます。書き手は茨城県龍ケ崎市で整体院を営む柔道整復師で、自身も平日は植物中心の食生活を続けています。
同じ食事でも食後血糖の上がり方が人によって違うのはなぜか
食後血糖(食事のあとに上がる血液中の糖の値)は、これまで食品ごとの「グリセミック指数」で語られることが多くありました。同じ食品なら、誰が食べてもおおむね同じように上がる、という前提です。
約800人を持続血糖測定で追った研究
2015年にCell誌で報告された研究は、この前提に疑問を投げかけました。イスラエルの成人約800人に持続血糖測定(腕などに小さなセンサーを付け、血糖の変化を連続して記録する方法)を1週間ほど行い、数万回分の食事に対する血糖の反応を記録しています。
その結果、同じ食事をとっても、食後血糖が大きく上がる人とあまり上がらない人がいることが示されました。研究チームは、腸内細菌の構成、血液検査の値、体格、生活習慣などのデータを組み合わせ、個人ごとの血糖反応を予測するモデルを作っています。このモデルでは、腸内細菌の情報が予測の精度に関わる要素の一つとされました。
この研究は、一人ひとりに合わせて食事を考える「パーソナライズ栄養」という考え方が広がるきっかけの一つになっています。
研究の対象と限界
- 対象はイスラエルの成人で、日本人や高齢者にそのまま当てはまるとは限りません
- 中心は相関(一緒に変化する関係)と予測モデルの研究で、腸内細菌が血糖反応の違いを生む原因だと確定したわけではありません
- 少人数・短期間の食事介入も行われていますが、長期の健康状態まで追ったものではありません
それでも、体に良いとされる食事が、誰にとっても同じ働き方をするとは限らない。この視点は、食事を見直そうとしている方にとって大切な手がかりになると考えています。
腸内細菌が食後血糖と炎症に関わる仕組み|植物性食品と腸内環境
では、腸内細菌はどのように血糖や体の状態に関わると考えられているのでしょうか。植物性食品中心の食事と腸内環境、炎症の関係を扱った総説をもとに、現在考えられている仕組みを整理します。
食物繊維と短鎖脂肪酸
人の消化酵素では分解しきれない食物繊維は大腸に届き、腸内細菌によって発酵・分解されます。このときつくられるのが短鎖脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸など)です。
- 酪酸は、大腸の粘膜細胞のエネルギー源になるとされています
- 短鎖脂肪酸は、腸のバリア機能(腸の中と体の内側を隔てる働き)の維持に関わると考えられています
- 腸の細胞から出る、血糖の調節に関わるホルモン(GLP-1など)の分泌を促すことが、主に基礎研究で報告されています
植物性食品を中心とした食事では、こうした短鎖脂肪酸をつくる細菌が多い傾向にあると、総説では整理されています。
腸内フローラの偏りと慢性炎症
腸内フローラ(腸内細菌の集まり)の構成が偏り、腸のバリア機能が弱まると、細菌由来の成分が体内に入りやすくなり、弱い炎症が長く続く「慢性炎症」につながる可能性が指摘されています。慢性炎症は、血糖の調節が乱れやすい状態とも関連するとされています。
ただし、ここで紹介した知見の多くは、観察研究や動物・細胞を使った研究です。植物性食品を多くとる人で炎症マーカーが低い傾向は報告されていますが、食事のほかに運動、体重、喫煙なども関わるため、腸内細菌と炎症の因果関係(どちらが原因か)はまだ確定していません。
整体師として興味深いのは、腸内環境が「何を食べたか」だけでなく、「その人の腸がどう受け取るか」で変わるという点です。この受け取る側の視点は、体を見るときにも共通していると感じています。
高齢者が地中海食を1年続けた研究から整体師が読み取ること
NU-AGE研究:欧州5カ国の高齢者の1年
2020年にGut誌で報告されたNU-AGE研究では、イタリア、イギリス、オランダ、ポーランド、フランスの5カ国で、65〜79歳の約600人を対象に、地中海食をもとにした食事を1年間続けるグループと、普段の食事を続けるグループを比較しました。地中海食は、野菜、果物、豆類、全粒穀物、オリーブオイル、魚などを中心とする食事パターンです。
報告では、食事への遵守度(どれだけ食事内容を守れたか)が高い人ほど、腸内細菌叢の変化がはっきりしていたとされています。増えた細菌群は、フレイル(加齢にともなう心身の虚弱)の指標や認知機能の改善と関連し、CRPなどの炎症マーカーとは逆の関連を示しました。短鎖脂肪酸をつくる働きとの関連も示されています。
一方で、限界もあります。
- 対象は欧州の高齢者で、日本の食文化や生活習慣にそのまま当てはまるとは限りません
- 遵守度による差が大きく、食事を守れた人と守れなかった人の違いには、食事以外の要因が含まれている可能性があります
- 腸内細菌の変化とフレイルの指標は関連が示された段階で、腸内細菌が虚弱を防ぐと確定したわけではありません
腸を構造の一部として見るという視点
整体師、特にオステオパシーでは、腸を消化の器官としてだけでなく、体の構造の一部として見ます。腸は腹膜や腸間膜(腸を支える膜)を介して背骨や骨盤とつながり、呼吸のたびに横隔膜の上下に合わせて動いていると考えられています。
すーさん夫婦の龍ケ崎整体院の施術の現場では、お腹が硬く張っている方や、呼吸に合わせたお腹の動きが小さい方に、腰や背中のこわばりを訴える方が少なくない、という傾向を感じることがあります。これは臨床で感じている印象であり、医学的に確かめられた関係ではありません。施術では腹部の緊張や内臓の動き、横隔膜の動きもあわせて確認し、腰や背中だけでは終わらない見方をしています。
食事は腸の中の環境に関わり、構造は腸が動ける環境に関わる。両方の視点を持つことで、体の見方が広がると考えています。
便通の変化が続く、血便がある、理由なく体重が減る、強い腹痛や発熱がある、といった場合は、自己判断せず医療機関にご相談ください。血糖値が気になる方や糖尿病の治療中の方は、食事を変える前に主治医にご相談ください。
整体師として考えていることは、noteにも書いています。食と身体のつながりについては、noteで整体師の実体験とともに詳しく書いています。→ https://note.com/honest_rose9929
正解の食事が人によって違うと考える整体師の視点|BODY・MIND・SPIRIT
ここまでの研究に共通するのは、食事と体の反応には個人差があり、その一部に腸内細菌が関わる可能性がある、という点です。私はこれを、体を見るときの前提にしています。
参考にしている本と、その読み方
植物中心の食事については、『チャイナスタディ』や『HOW NOT TO DIE』(マイケル・グレガー著)、長寿地域を取材した「ブルーゾーン」の知見を参考にしてきました。いずれも植物性食品を多くとる食生活に注目しています。ただし、『チャイナスタディ』は観察研究をもとにした部分が大きいなど、それぞれに読み方の注意点があります。ブルーゾーンの長寿地域でも、食事だけでなく、人とのつながりや日常的に体を動かす暮らしがあわせて語られています。本の主張をそのまま正解とするのではなく、一つの見方として受け取るようにしています。
平日は植物中心、週末はゆるく
私自身は、平日はほぼ植物中心の食事にし、週末は家族とBBQをしたり、肉や刺身を食べたりしています。厳密なルールではなく、続けられる形を選んでいます。
食生活を変えてから、痛風の発作が出にくくなってきた感覚や、血圧の数値が落ち着いてきた感覚があります(個人の体験です)。同じ変化がどなたにも起こるとは限りません。今回の研究を読むと、私の腸と体にこのやり方が合っていた、と考えるほうが自然だと感じています。
構造・食事・全体性の三軸で体を見る理由
- BODY(構造):骨格や筋肉に加え、内臓や頭蓋の動きも見る
- MIND(食事・自然療法):何を食べ、体がそれをどう受け取っているかを考える
- SPIRIT(全体性):生活や睡眠、気持ちの状態も含め、体を一つのまとまりとして見る
同じ食事でも反応が違うように、同じ「腰のつらさ」でも背景は人によって異なります。だからこそ一つの軸だけで判断せず、三つの軸を行き来しながら体を見ることを大切にしています。パーソナライズ栄養という考え方も、私にとってはこの延長線上にあります。
食と身体のつながりについては、noteで整体師の実体験とともに詳しく書いています。→ https://note.com/honest_rose9929
まとめ
同じ食事でも食後血糖の上がり方は人によって違い、そこに腸内細菌の構成が関わるとする研究があります。欧州の高齢者を対象にした地中海食の研究でも、腸内環境の変化とフレイルの指標や炎症マーカーとの関連が報告されました。いずれも因果関係は確定していませんが、体に良い食事を一つの正解として探すより、自分の体がどう受け取るかに目を向けるきっかけになります。龍ケ崎で日々施術をしながら、食事と構造の両面から体を見ていきたいと考えています。
参考文献
本記事の作成にあたり参照した研究論文です(内容は要約・意訳したものであり、原文の直接引用ではありません)。
- Personalized Nutrition by Prediction of Glycemic Responses(Cell 2015) PubMed
- Mediterranean diet intervention alters the gut microbiome in older people reducing frailty and improving health status: the NU-AGE 1-year dietary intervention across five European countries(Gut 2020) PubMed
- Effect of Diet and Dietary Components on the Composition of the Gut Microbiota(Nutrients 2021) PubMed
- The interplay between diet and the gut microbiome: implications for health and disease(Nat Rev Microbiol 2024) PubMed
よくある質問
Q. 同じものを食べても血糖値の上がり方が人によって違うのはなぜ?
A. イスラエルで約800人の食後血糖を測った研究(Cell, 2015)では、同じ食事でも反応が大きく分かれ、その違いに腸内細菌の構成が関わるとされました。体格や睡眠、活動量なども影響するため、腸だけで決まるわけではありません。
Q. 地中海食は日本人の高齢者にも意味があるの?
A. 欧州5カ国の65歳以上を対象にした研究(Gut, 2020)では、1年の地中海食で腸内細菌叢が変化し、虚弱の指標の改善と関連しました。日本人での検証は別に必要で、食文化や腸内細菌の違いも踏まえて考える必要があります。
Q. 自分の腸内細菌は検査すればわかるの?
A. 便を使った腸内細菌の検査は民間でも受けられますが、結果から個人に最適な食事を断定できる段階には至っていないとされます。日々の体調の記録とあわせ、医師や専門家と相談しながら参考情報として扱うのが現実的です。

鈴木大樹(すずき だいき)
柔道整復師 / オステオパシー専門校在学中 / 産後リハビリ国際セミナー修了
茨城県龍ケ崎市で妻・佳代とともに整体院を営む整体師。食・自然療法・筋膜のつながりを臨床と学びの中で深め、「なぜ身体はそうなるのか」を発信し続けています。
さらに深く知りたい方へ
腸と身体の痛みがつながっているのかどうか、わかっていることとわかっていないことをnoteに書いています。
・腸と身体の痛みは、つながっているのか(無料)
・1兆724億円の市場で、飲んだ菌はどこへ行くのか(有料)
・2万5千人を5年追って、オメガ3のサプリと薬は何を変えたのか(有料)
有料記事は買い切りです。価格(税込)はnoteの各記事ページに表示しています。
noteの記事は、整体師が研究や施術の中で考えたことをまとめた読み物です。診断・治療に代わるものではありません。
茨城県龍ケ崎市で実際に施術を受けたい方へ
すーさん夫婦の龍ケ崎整体院
所在地:茨城県龍ケ崎市愛戸町58-2(龍ケ崎郵便局から徒歩2分)
電話:080-3406-6568 営業時間:平日9:00〜21:00 / 土曜8:30〜15:30


