線維筋痛症に薬以外でできること|ガイドラインが推す運動療法

オステオパシー
この記事は個人の体験談と参考書籍をもとにした健康情報です。医療的な診断・治療に代わるものではありません。持病のある方・服薬中の方は必ず主治医にご相談ください。
線維筋痛症に薬以外でできることの挿絵(水彩)

全身の痛み、抜けない疲労、眠れない夜。線維筋痛症のつらさは一つではなく、薬だけでは日常が戻りきらないと感じている人も少なくありません。欧州リウマチ学会(EULAR)が107件のレビューを検討した改訂指針で、強く推奨されたのはただ一つ、運動療法でした。なぜ運動だったのか、そしてなぜ「説明から始めて段階的に」なのか。茨城県龍ケ崎市で施術を行う整体師の立場から、身体の仕組みに沿って読み解きます。

痛み・疲労・眠れなさが重なる線維筋痛症、薬だけでは足りないと感じるのはなぜか

線維筋痛症は、血液検査や画像検査で目立った異常が見つかりにくいにもかかわらず、全身の広い範囲に痛みが続く状態として知られています。痛みに加えて、休んでも抜けない慢性疲労、眠りが浅く朝にすっきりしない感覚、頭がぼんやりする感じを伴うことも多いとされています。

痛み・疲労・睡眠は、互いに影響し合っている

線維筋痛症のつらさを考えるとき、症状を一つずつ切り離して見ると全体像がつかみにくくなります。実際には、次のような輪の中で重なり合っている可能性があります。

  • 痛みがあると寝返りや寝つきが妨げられ、睡眠の質が落ちる
  • 眠りが浅いと疲れが残り、痛みも感じやすくなると考えられている
  • 疲れが残ると動くのがおっくうになり、活動量が減る
  • 活動量が減ると体力が落ち、少しの家事や外出でも負担に感じやすくなる

この輪は、どこか一か所だけを押さえても回り続けることがあります。薬は痛みや眠りの一部を支える大切な手段ですが、それだけで日常全体が戻りきらないと感じる方がいるのは、こうした重なりがあるためだと考えられます。

EULARの改訂指針が、評価項目に痛みだけでなく疲労・睡眠・日常生活機能まで含めていたことも、この病気のつらさが痛みの強さだけでは測れないことを表していると読めます。だからこそ、薬と並んで非薬物療法(薬以外の方法)に何ができるのかを知っておく意味があります。なお、薬の量や種類の調整は、必ず主治医と相談しながら進めてください。

107件のレビューで強く推奨されたのが運動療法だけだった理由|痛みの感じ方と身体の仕組み

EULARは、リウマチや筋肉・関節の病気を扱う欧州の専門学会です。線維筋痛症の管理指針を改訂する際には、痛み・疲労・睡眠・日常生活機能を評価項目として、107件のレビュー(複数の研究をまとめて評価した論文)が検討されたと報告されています。そのうえで強く推奨されたのは、運動療法のみでした。それ以外の方法は、強い推奨には至らなかったということです。

中枢性感作という見方

線維筋痛症の背景を説明するときによく使われるのが、中枢性感作という考え方です。脳や脊髄といった痛みを処理する仕組みが過敏になり、本来それほど強くない刺激でも強い痛みとして感じやすくなっている状態を指します。痛む場所そのものに大きな傷があるというより、痛みの「感じ方」の側に変化が起きている可能性がある、という見方です。ただし、仕組みのすべてが解明されているわけではなく、研究が続いている分野です。

なぜ運動だったのか、身体の仕組みから考える

ここからは指針の文面ではなく、整体師としての読み解きです。運動が評価された背景には、次のような身体の仕組みが関わっていると考えられます。

  • 身体を動かすことで、体内の痛みを調整する仕組みが働く可能性が研究されている
  • 有酸素運動などで体力を保つと、日常の動作に余力が残りやすい
  • 日中に身体を使うことが、夜の眠りのリズムにかかわる可能性がある
  • 「動いても大きく崩れなかった」という経験が、運動恐怖(動くと悪くなるのではという怖さ)を和らげることがある

痛み・疲労・睡眠・生活機能という複数の輪に、同時に関わりうる。運動療法が強く推奨された理由の一つは、この「重なり」に届きやすい点にあるのではないかと私は考えています。一方で、強く推奨されたことは、誰にでも同じ運動が合うという意味ではありません。

セルフケアについて整体師としてどう考えているかは、noteにも書いています。
→ https://note.com/honest_rose9929

まず説明、次に薬以外の方法、そして段階的に|この順番に込められた身体の理屈

指針では初期対応として、患者さんへの説明(患者教育)と薬以外の方法を中心にし、本人の状態に合わせて段階的に進めることが望ましいとされています。この順番には、身体の側から見ても筋の通った理屈があると考えられます。

なぜ「説明」が最初なのか

正体のわからない痛みは、それだけで不安を大きくします。不安や警戒が強いと、身体の変化に注意が向きやすくなり、痛みの感じ方にも影響する可能性があると言われています。「検査で異常がないのに痛い」ことが何を意味するのか、どんな見通しで向き合っていくのか。それを理解することは、ただの前置きではなく、取り組みの土台そのものだと言えます。

すーさん夫婦の龍ケ崎整体院の施術の現場でお話を伺っていると、痛みそのものと同じくらい「この痛みが何なのかわからない」ことに疲れている方が少なくないように感じます。これはあくまで臨床上の印象ですが、患者教育が最初に置かれていることに深くうなずける理由の一つです。

なぜ「段階的に」なのか

体力が落ちている状態で急に強い運動を始めると、反動で痛みや疲労が強まり、「やはり動かないほうがいい」という運動恐怖を深めてしまうことがあります。調子のよい日に頑張りすぎて、翌日以降に寝込んでしまう波を繰り返す方もいます。

小さく始め、身体の反応を見ながら少しずつ幅を広げる。段階的に進めるという考え方は、過敏になっている可能性のある痛みの仕組みに、急な負荷をかけないための工夫と捉えることができます。どこから始めるかは人によって違うため、主治医やリハビリの専門職と相談しながら決めてください。

なお、痛みが急に強くなった、しびれや発熱を伴う、日常生活が送れないほどつらいといった場合は、自己判断せず医療機関にご相談ください。

整体師として考えていることは、noteにも書いています。
→ https://note.com/honest_rose9929

整体師が線維筋痛症の相談を受けるときに大切にしている、全体を見るという視点

はじめにお伝えしておくと、今回の指針で強く推奨されたのは運動療法のみで、整体などの手技がその中に含まれているわけではありません。ですから、整体を線維筋痛症への取り組みの中心に置くことはしません。主治医の方針と運動療法が軸にあり、整体はそのうえで身体の状態を一緒に確認する一つの相談先、という位置づけで考えています。

痛いところだけでは終わらない、という見方

私(鈴木大樹)は柔道整復師として施術を行いながら、オステオパシーの専門校にて学習中です。オステオパシーでは、痛む場所だけでなく、呼吸、姿勢、内臓の動き、生活リズムまでを含めて身体全体のつながりを見ていきます。たとえば横隔膜は1日に2万回ほど上下すると言われ、そのたびにお腹の中の臓器も一緒に動かされています。呼吸の浅さや姿勢の癖が、身体のどこにどんな負担を生んでいるかを見るのも、全体を見る視点の一つです。

私たちは、構造(BODY)、食事や自然療法の考え方(MIND)、人としての全体性(SPIRIT)という三つの軸から身体を見ることを大切にしています。

ご相談を受けるときに大切にしていること

  • 主治医の診断と方針を前提にし、薬の調整には関わらない
  • 痛みだけでなく、疲労や睡眠、日常生活で困っていることまで伺う
  • 動くことへの不安があれば、その気持ちも含めて話を聞く
  • その日の体調を伺いながら、触れる範囲や刺激の量を考える

線維筋痛症のつらさは、一か所の問題として切り取れるものではありません。だからこそ、全体を見る視点が欠かせないと考えています。

線維筋痛症は、痛み・疲労・睡眠の悪さが重なり合う状態で、薬だけでは日常が戻りきらないと感じる方もいます。EULARの改訂指針では107件のレビューが検討され、強く推奨されたのは運動療法のみでした。そして初期対応は、説明から始め、薬以外の方法を中心に、本人の状態に合わせて段階的に進めることが望ましいとされています。焦らず、主治医と相談しながら、自分に合った一歩を探していきましょう。

免責事項:本記事は個人の体験談および一般的な健康情報の提供を目的としており、医療診断・治療に代わるものではありません。同様の効果を保証するものではありません。持病のある方・服薬中の方は生活習慣の変更前に必ず主治医にご相談ください。

参考文献

本記事の作成にあたり参照した研究論文です(内容は要約・意訳したものであり、原文の直接引用ではありません)。

  1. EULAR revised recommendations for the management of fibromyalgia(Ann Rheum Dis 2017) PubMed

よくある質問

Q. 線維筋痛症でも運動して大丈夫?痛みが悪化しない?

A. EULARの改訂指針で強く推奨されたのは運動療法でしたが、いきなり強い負荷をかけることは想定されていません。本人の状態に合わせて段階的に進める考え方が示されています。始める際は主治医と相談し、無理のない範囲を一緒に見極めることが大切です。

Q. 線維筋痛症で眠れないのは病気と関係あるの?

A. 線維筋痛症では痛みや疲労に加えて睡眠の悪さを訴える人が多く、EULARの指針でも睡眠は評価項目のひとつとして扱われています。睡眠を含む生活の質を支えるうえで、薬以外の取り組みが役立つ可能性が示されています。

Q. 線維筋痛症に整体やマッサージは効果があるの?

A. 今回紹介した指針で強く推奨されたのは運動療法のみで、手技療法が睡眠などを改善すると直接示されたわけではありません。整体を受ける場合も主治医の治療と並行し、動きやすさや生活の困りごとを一緒に整理する位置づけで考えるのが現実的です。

鈴木大樹

鈴木大樹(すずき だいき)

柔道整復師 / オステオパシー専門校在学中 / 産後リハビリ国際セミナー修了

茨城県龍ケ崎市で妻・佳代とともに整体院を営む整体師。食・自然療法・筋膜のつながりを臨床と学びの中で深め、「なぜ身体はそうなるのか」を発信し続けています。

さらに深く知りたい方へ

「骨盤が歪んでいますね」と言われたとき、整体師が最初に何を確かめるかは、noteに書いています。

・「骨盤が歪んでいますね」と言われて、私が最初に確かめること(無料)
・揉んでも戻ることについて、痛い場所だけでは終わらないと整体師が考える理由(有料)

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