肩の付け根を押すと痛い|僧帽筋と筋膜の話

肩こり
この記事は個人の体験談と参考書籍をもとにした健康情報です。医療的な診断・治療に代わるものではありません。持病のある方・服薬中の方は必ず主治医にご相談ください。

デスクワークや抱っこの後、肩の付け根を押すと「そこそこ」と感じる一点がある。その場所は、単なる疲労ではなく僧帽筋のトリガーポイントと呼ばれる状態かもしれません。鍼を使う方法と手による圧迫を比べた研究では、どちらでも痛みの程度や圧痛閾値に変化がみられたと報告されています。鍼は少し怖い、でも何か手立てはないか。そう感じている方に向けて、この記事では、なぜその一点が生まれるのかを筋膜と構造の視点からひも解いていきます。

肩の付け根を押すと痛い一点は、なぜそこにできるのか

首と肩の境目、ちょうど肩の付け根あたりを指で探ると、周囲より硬く、押すとズンと響く場所が見つかることがあります。多くの場合、そこは僧帽筋上部線維と呼ばれる部分です。

僧帽筋上部線維は、後頭骨や項靭帯から始まり、鎖骨の外側3分の1あたりに付着します。役割のひとつは、約5〜6kgあるとされる頭部を支えながら、肩甲帯を上方に吊り下げておくこと。つまりこの筋肉は、座っていても立っていても、ほとんど休む機会がありません。

「少しだけ働き続ける」ことの負担

強い力を出すときは、筋肉は多くの線維を総動員します。ところがパソコン作業や抱っこのように、弱い力を長時間保つ場面では、最初に動員された一部の運動単位だけが働き続けるという考え方が筋生理学の領域で議論されてきました。常に働かされる線維では局所の血流や代謝産物の処理が滞りやすくなる可能性があり、これが索状の硬さ(コリコリした筋の筋)として触れる状態に関わると考えられています。

この硬くなった帯のなかに、ひときわ圧痛の強い一点が生まれる。それが一般にトリガーポイントと呼ばれるものです。肩こりで押すと痛い場所が毎回ほぼ同じという方が多いのは、負担のかかり方に再現性があるからだと考えられます。首こりの原因を探るときも、首そのものより先にこの肩の付け根を確認することが、施術の現場では少なくありません。

僧帽筋のトリガーポイントと圧痛閾値|痛みが広がる仕組みを解剖から読む

トリガーポイントの特徴として知られているのが関連痛です。押した場所そのものではなく、離れた部位に痛みや重さが広がる現象を指します。僧帽筋上部線維の場合、側頭部やこめかみ、耳の後ろ、首の側面へ響く訴えを聞くことがあります。「肩を押されているのに、頭の横が痛くなった」という感覚は、決して珍しいものではありません。

圧痛閾値とは何を測っているのか

研究の場でよく登場するのが圧痛閾値という指標です。これは、ある部位に少しずつ圧を加えていったとき、「押されている感じ」から「痛い」に変わる境目の圧の大きさを数値化したもの。アルゴメーターという器具で測定されます。

  • 閾値が低い=軽い圧でも痛みとして感じる状態
  • 閾値が高い=ある程度の圧まで痛みとして感じない状態

同じ強さで押しているのに日によって痛みの出方が違う、という経験はありませんか。これは筋肉の硬さだけでなく、痛みを受け取る側の感度が変動している可能性を示しています。睡眠不足や緊張が続くと感度が上がりやすいことも報告されており、肩こりが「体調のバロメーター」のように感じられる理由のひとつと考えられます。

筋膜という連続体として見る

僧帽筋は単独で存在しているわけではありません。後頭下筋群、肩甲挙筋、胸鎖乳突筋、さらに背中側の胸腰筋膜まで、筋膜という膜組織でゆるやかにつながっています。筋膜マニピュレーションの考え方では、ある一点の滑走性が落ちると、その張力は離れた部位まで伝わるとされます。筋膜リリースを肩に行う際にも、硬い一点だけを狙うのではなく、その点がどの方向の張力に引っ張られているのかを読む視点が求められます。

鍼と手による圧迫、どちらでも変化はみられた|研究が示す手技という選択肢

トリガーポイントへのアプローチとして、医療現場では鍼を用いるドライニードリングが知られています。薬液を注入せず、細い鍼を硬結部へ刺入する方法です。一方、手技の世界で古くから行われてきたのが虚血性圧迫、圧痛点を指や肘で一定時間押さえ、圧を解いたときの循環変化を利用する考え方です。

この二つを比べた研究があります。僧帽筋上部のトリガーポイントを対象に、ドライニードリングと圧迫法を比較した報告では、痛みの程度・首や腕の不調感・圧痛閾値のいずれにおいても、どちらの手法でも変化がみられたとされています。さらに、トリガーポイントへの圧迫を用いた施術を複数回重ねることで、圧痛閾値がより変化したという報告もあります。

この報告をどう読むか

ここから読み取れることは、大きく二つあると考えています。

  1. 鍼でなければならない、ということではない。鍼に抵抗がある方にとって、手による圧迫は検討しうる選択肢のひとつになります。
  2. 1回で判断しない。回数を重ねたほうが圧痛閾値の変化が大きかったという報告は、慢性化した状態ほど経過を見る時間が要るという、現場の感覚とも重なります。

ただし、押せば押すほどよいという話ではありません。強すぎる圧は防御的な筋の緊張を招くことがあり、翌日の重さにつながる方もいます。圧の強さと時間の加減は、体格や感受性によって変わります。セルフケアについて整体師としてどう考えているかは、noteにも書いています。→ https://note.com/honest_rose9929

なお、肩の痛みに加えて手のしびれ・力の入りにくさ・発熱・安静時にも強まる痛みがある場合や、こうした状態が続く場合は、自己判断せず医療機関にご相談ください。

整体師として考えていることは、noteにも書いています。整体師として考えていることは、noteにも書いています。→ https://note.com/honest_rose9929

整体師が僧帽筋だけを見ない理由|膜・呼吸・内臓の連動という視点

茨城県龍ケ崎市で整体をしている、すーさん夫婦の龍ケ崎整体院の鈴木大樹です。柔道整復師として国家資格を持ち、現在はオステオパシーの専門校で学んでいます。

施術の現場では、僧帽筋上部の一点を押して変化が出る方もいれば、そこを緩めても数日で元の硬さに戻る方もいます。後者の場合に確認しているのが、肩の外側にある張力の出どころです。

呼吸と横隔膜から肩へ

浅い呼吸が続くと、横隔膜の動きが小さくなり、代わりに首や肩の補助呼吸筋が働く割合が増えます。僧帽筋上部線維や斜角筋は、その代役を担いやすい筋肉です。つまり「息の浅さ」が肩の付け根の負担として現れている可能性があるわけです。

内臓との膜のつながり

オステオパシーの内臓領域では、横隔膜を介した連結がよく語られます。横隔膜は横隔神経(C3〜C5)に支配され、この神経根は首の高さから出ています。右の肩甲帯まわりの重さに右季肋部の動きの乏しさが重なる方、左肩の張りに食後の胃もたれが重なる方、これまで診てきた範囲では、そうした組み合わせを感じることがあります。これは医学的に確定した因果ではなく、現場で見えている傾向として受け取っていただければと思います。

さらに、頭蓋から仙骨へ続く硬膜のつながりや、骨盤の傾きが肩甲骨の位置に影響する経路も考えられます。育児中の方で、抱っこ姿勢が骨盤の前後傾ごと固定されているケースでは、肩だけを緩めても姿勢の土台が戻らないことがあります。

だからこそ、痛いところだけでは終わらせない。肩も触りますし、同時に呼吸の深さ、肋骨の動き、骨盤の向きも確認します。龍ケ崎の院では1回約45分のなかで、そうした全体のつながりを見る時間を取るようにしています。

まとめ

肩の付け根を押すと痛い一点は、僧帽筋上部線維にかかり続ける小さな負担の積み重ねとして生まれている可能性があります。研究では、鍼を用いる方法と手による圧迫のいずれでも、痛みの程度や圧痛閾値に変化がみられたと報告されており、手技というアプローチも選択肢のひとつと考えられます。そして、回数を重ねることで変化が大きくなったという報告もあります。一点だけを追うのではなく、呼吸・骨盤・膜のつながりまで含めて見ていく、その視点が、長引く首肩の重さを考えるうえで役に立つことがあります。

免責事項:本記事は個人の体験談および一般的な健康情報の提供を目的としており、医療診断・治療に代わるものではありません。同様の効果を保証するものではありません。持病のある方・服薬中の方は生活習慣の変更前に必ず主治医にご相談ください。

参考文献

本記事の作成にあたり参照した研究論文です(内容は要約・意訳したものであり、原文の直接引用ではありません)。

  1. Dry needling versus trigger point compression of the upper trapezius: a randomized clinical trial with two-week and three-month follow-up(J Man Manip Ther 2019) PubMed
  2. Immediate Effects of Dry Needling and Myofascial Release on Local and Widespread Pressure Pain Threshold in Individuals With Active Upper Trapezius Trigger Points: A Randomized Clinical Trial(J Manipulative Physiol Ther 2021) PubMed
  3. Responsiveness of Myofascial Trigger Points to Single and Multiple Trigger Point Release Massages: A Randomized, Placebo Controlled Trial(Am J Phys Med Rehabil 2017) PubMed

よくある質問

Q. 肩を押すと痛い場所があるのは、トリガーポイントですか?

A. 押すと強く響く一点があり、離れた首や後頭部にも痛みが広がる場合、僧帽筋上部のトリガーポイントが関与していることがあります。ただし自己判断せず、長引く場合は医療機関での確認をおすすめします。

Q. ドライニードリングと手による圧迫では何が違いますか?

A. 鍼を筋内に刺入するか、手指で持続的に圧を加えるかという手段の違いです。研究では痛みの程度や圧痛閾値においてどちらでも変化がみられたと報告され、鍼に抵抗がある方には手技が選択肢になり得ます。

Q. トリガーポイントへのケアは何回くらい続けるとよいですか?

A. 回数を断定することはできませんが、圧迫を用いた施術を複数回重ねた方が圧痛閾値の変化が大きかったという報告があります。1回で判断せず、経過をみながら続ける考え方が現実的です。

鈴木大樹

鈴木大樹(すずき だいき)

柔道整復師 / オステオパシー専門校在学中 / 産後リハビリ国際セミナー修了

茨城県龍ケ崎市で妻・佳代とともに整体院を営む整体師。食・自然療法・筋膜のつながりを臨床と学びの中で深め、「なぜ身体はそうなるのか」を発信し続けています。

さらに深く知りたい方へ

デスクワークやスマホの姿勢と首・肩のつらさについて、研究で言えることと言えないことを分けて、noteに書いています。

・「座りっぱなしだから、首と肩がつらい」は、どこまで本当か|デスクワークと首・肩の研究を、言えること・言えないことに分けて読む(有料)
・揉んでも戻ることについて、痛い場所だけでは終わらないと整体師が考える理由(有料)

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