健診の数値が気になる更年期|脂質の質と炎症の関係

自然療法
この記事は個人の体験談と参考書籍をもとにした健康情報です。医療的な診断・治療に代わるものではありません。持病のある方・服薬中の方は必ず主治医にご相談ください。

「油を減らしているのに、健診の数値が思ったように動かない」。更年期前後の女性から、施術の現場でよく聞く声です。近年の大規模研究が示しているのは、油をどれだけ減らしたかという量の話ではなく、どんな脂質をどの比率で摂っているかという「質」の話でした。炎症というキーワードを軸に、身体の内側で何が起きている可能性があるのかを、整体師の視点から読み解いていきます。食べる量を我慢する前に、組み合わせを見直すという選択肢があります。

油を減らしても数値が動かないのはなぜか

健康診断の結果票を手に、「とりあえず油物を控えよう」と考える方はとても多いです。炒め物を減らし、ドレッシングをノンオイルに変え、肉を避ける。努力としては立派なのですが、数か月経っても数値の並びがあまり変わらない、というご相談を受けることがあります。

ここで見落とされやすいのが、脂質は「総量」よりも「内訳」で身体への働きかけが変わるという視点です。脂質にはいくつかの種類があり、ざっくり分けると次のようになります。

  • 飽和脂肪酸:主に動物性の脂、バター、加工食品の油脂に多く含まれます
  • 一価不飽和脂肪酸:オリーブオイルやアボカド、ナッツ類に多く含まれます
  • 多価不飽和脂肪酸:魚や植物油に含まれ、さらにいくつかの系統に分かれます

イタリアで行われた大規模な食事調査(Moli-sani研究)では、一価不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸の比率(飽和脂肪酸比に対して一価不飽和脂肪酸が優位であること)が高く、かつ食物繊維の摂取が多い食事パターンほど、改善可能な心血管リスク指標の総合スコアが低い傾向にあったと報告されています。つまり、注目されていたのは「油を減らした人」ではなく、「油の内訳と食物繊維の組み合わせが整っていた人」だったわけです。

油を一律に減らす方法には、もうひとつ見落としがあります。脂質は胆汁の分泌を促す引き金でもあります。食事から脂質がほとんど入ってこない状態が続くと、胆汁が送り出される機会が減り、肝臓から胆嚢、十二指腸へと続く流れが滞りやすくなる可能性があります。オステオパシーの内臓への視点では、肝胆系の動きの乏しさは右の肩や背中のこわばりと一緒に現れることがある、と考えられています。これまで診てきた範囲でも、「油をかなり厳しく制限している」という方に、右季肋部まわりの硬さと右肩の重さが同居しているケースを見かけることがあります。もちろんこれは傾向として感じていることで、医学的な因果として断定できるものではありません。

脂質の質と食物繊維が炎症に関わる仕組み

では、なぜ脂質の質が「炎症」という言葉と結びつくのでしょうか。ここは少し身体の内側の話になります。

細胞膜の材料になるという視点

食べた脂質は、エネルギーになるだけでなく、全身の細胞を包む膜の材料として使われます。どんな脂肪酸が多く取り込まれるかによって、膜のしなやかさや、そこから切り出される炎症に関わる伝達物質の傾向が変わると考えられています。飽和脂肪酸に偏った状態は炎症方向のシグナルと関連づけて語られることが多く、一価不飽和脂肪酸が優位な食事パターンは、炎症の指標が穏やかな群と関連して報告される傾向があります。

ここで大切なのは、特定の油が「炎症を消す」わけではないということです。研究が示しているのはあくまで食事パターンと指標との関連であり、一本のオリーブオイルが結果を決めるという話ではありません。オリーブオイルを中心にした食生活が注目されるのは、それ単体ではなく、野菜・豆・全粒の穀物といった食物繊維の多い食事と一緒に成立しているからだと考えられます。

食物繊維と腸内環境のつながり

食物繊維は、人の消化酵素では分解されないまま大腸まで届き、腸内細菌のエサになります。細菌がそれを発酵させる過程でつくられる短鎖脂肪酸は、腸の粘膜のエネルギー源となり、腸管のバリア機能と関わっていると考えられています。バリアが働きにくい状態では、本来血中に入らない成分が通過しやすくなり、全身の慢性炎症に関与する可能性が指摘されています。

つまり、脂質の質と食物繊維は別々の話ではなく、「炎症の土台をどちらに傾けるか」という同じテーブルの上の話だということです。油の比率だけ整えても食物繊維が乏しい、あるいは食物繊維は多いけれど脂質が飽和脂肪酸に偏っている。どちらか片方だけでは、研究が示す「スコアが低い群」の食事像にはなりません。

内臓への手技の視点でも、長い繊維を持つ野菜が大腸の働きと関係するという経験則は古くから語られてきました。腸管の動きが乏しい方に、腹部全体の張りや腰まわりの詰まり感が重なっているのを、日々の施術のなかで感じることがあります。

更年期以降の体組成と慢性炎症の関係を整体師はどう見るか

40代後半から50代にかけて、「同じ食生活なのに体型の印象が変わった」と話される方は少なくありません。この時期は女性ホルモンの変動により、脂肪のつき方や筋肉量といった体組成が変化しやすい時期だとされています。そして内臓まわりの脂肪組織は、単なる貯蔵庫ではなく、炎症に関わる物質を出す器官としての側面を持つことが知られています。

更年期以降の女性の栄養に関する総説でも、この時期の食習慣が体組成や心血管リスク指標と関わる可能性が整理されています。また、全身性エリテマトーデス(SLE)など自己免疫疾患における食事の位置づけを扱った総説では、食事は治療に代わるものではないものの、炎症のマネジメントを支える生活要素のひとつとして検討されています。食事は薬の代わりではなく、土台の話。この線引きは、整体師として何度でも確認しておきたいところです。

構造の側から見える「炎症の跡」

オステオパシーで内臓を扱う視点では、炎症が起きたあとの組織には、滑りの悪さが残ることがあると考えられています。臓器を包む膜(漿膜)同士の滑走が落ちると、隣り合う組織との間に引きつれが生まれ、呼吸のたびに繰り返される小さな動きが妨げられます。

この「小さな制限」が侮れません。たとえば腎臓は、一回の呼吸でも数センチの動きがあるとされ、一日に換算すれば相当な移動距離になります。その動きがわずかに妨げられる状態が毎日積み重なれば、周囲の組織にかかる負担は決して小さくないと考えられます。横隔膜の下で大きな重量を抱える肝臓も同様で、動きの乏しさが右の肋骨まわりや肩の可動域の感覚と一緒に現れることがあります。

施術の現場では、食習慣の見直しに取り組み始めた方の腹部が、以前より触れたときの反応がやわらかく感じられることがあります。これは検査で測った変化ではなく、あくまで手で触れている側の印象です。それでも、食と構造が無関係ではないと感じる場面は確かにあります。

なお、動悸・強い息切れ・胸の圧迫感、あるいは急な体重の変化やしびれ・発熱などがある場合や、健診で指摘を受けた数値が続く場合は、自己判断せず医療機関にご相談ください。食事の工夫は、受診と並行して考えるものです。

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身体の構造と食の両輪で整えるという考え方

私自身、平日はほぼ植物中心の食事、週末はBBQや肉、刺身も食べるというゆるいスタイルを続けています。厳密な制限ではなく、全体の比率を傾けるという考え方です。この食べ方に変えてから、以前あった痛風発作が落ち着いてきた感覚があり、血圧の数値も穏やかに推移している印象があります。あくまで個人の体験で、同じ変化を誰にでも約束するものではありません。

整体師として大切にしているのは、構造(BODY)と生活習慣(MIND)を切り離さないという視点です。身体の硬さや痛みだけを追いかけても、毎日の食卓が炎症に傾いたままであれば、同じところに戻りやすくなります。逆に、食事だけを整えても、横隔膜の動きが乏しく呼吸が浅いままなら、内臓まわりの循環は働きにくい状態が続く可能性があります。

茨城県龍ケ崎市のすーさん夫婦の龍ケ崎整体院では、柔道整復師(国家資格)の夫婦2人で、約45分の施術のなかで背骨や骨盤だけでなく、横隔膜や腹部の状態、呼吸に合わせた動きの出方もあわせて確認しています。関係していると考えられる部位にも手を当てながら、痛みのある場所だけでは終わらない見方を大切にしています。女性の施術者も在籍しているため、更年期前後の身体の変化についてご相談いただくこともあります。

食の見直しで意識したいのは、次のような「方向性」です。具体的な量や手順は体質や持病によって変わるため、ここでは考え方だけにとどめます。

  • 油を減らすのではなく、一価不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸の比率を意識する
  • 脂質の話だけで終わらせず、食物繊維の多い食事をセットで考える
  • 一日単位で完璧を目指さず、一週間の全体像で比率を見る
  • 服薬中の方は、食習慣を大きく変える前に主治医へ相談する

食と身体のつながりについては、noteで整体師の実体験とともに詳しく書いています。→ https://note.com/honest_rose9929

まとめ

健診の数値が気になり始めたとき、まず「減らす」ことを考えがちですが、研究が示しているのは脂質の質と食物繊維の組み合わせという視点でした。一価不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸の比率、そして腸内環境を支える食物繊維。この二つは、慢性炎症という同じ土台の上でつながっています。食事は治療に代わるものではありませんが、身体の構造を整えていくうえでの大切な両輪です。気になる数値が続く場合は、医療機関での相談と並行して、日々の食卓を見直してみてください。

免責事項:本記事は個人の体験談および一般的な健康情報の提供を目的としており、医療診断・治療に代わるものではありません。同様の効果を保証するものではありません。持病のある方・服薬中の方は生活習慣の変更前に必ず主治医にご相談ください。

参考文献

本記事の作成にあたり参照した研究論文です(内容は要約・意訳したものであり、原文の直接引用ではありません)。

  1. Nutrition in Menopausal Women: A Narrative Review(Nutrients 2021) PubMed
  2. Diet and Systemic Lupus Erythematosus (SLE): From Supplementation to Intervention(Int J Environ Res Public Health 2022) PubMed
  3. Incremental monounsaturated to saturated fat ratio and fibre consumption is associated with a reduction in a composite score of modifiable cardiovascular risk factors: Prospective results from the Moli-sani study(Eur J Clin Nutr 2022) PubMed

よくある質問

Q. オリーブオイルを使えば脂質の質は良くなりますか?

A. 一価不飽和脂肪酸を多く含むため比率の面では有利ですが、総量を増やすだけでは意味が薄れます。飽和脂肪酸との比率と食物繊維の摂取量をセットで見る視点が研究でも重視されています。

Q. 更年期になると急に数値が悪くなるのはなぜですか?

A. 女性ホルモンの変化により脂質代謝や体脂肪の分布が変わりやすくなるためと考えられています。同じ食生活でも体組成が変化し、炎症傾向が出やすくなる時期とされています。

Q. 食物繊維は炎症とどう関係しているのですか?

A. 腸内細菌の働きを通じて腸のバリア機能や代謝に影響すると考えられています。研究では食物繊維摂取が多い食事パターンほど心血管リスク指標の総合スコアが低い傾向が報告されています。

鈴木大樹

鈴木大樹(すずき だいき)

柔道整復師 / オステオパシー専門校在学中 / 産後リハビリ国際セミナー修了

茨城県龍ケ崎市で妻・佳代とともに整体院を営む整体師。食・自然療法・筋膜のつながりを臨床と学びの中で深め、「なぜ身体はそうなるのか」を発信し続けています。

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