40〜60代になって「食べる量は変わっていないのに体型が変わった」「理由のない疲れや気分の沈みが続く」という声を、施術の現場でよく聞きます。研究では、食事の内容が体内の低度の炎症と関わり、閉経後女性では食習慣が体組成や生活の質に影響すると報告されています。ここでは手順やレシピではなく、なぜ食が身体にそこまで響くのか。その仕組みを、整体師の視点から掘り下げてみます。
閉経後に増える「疲れ・体型変化・気分の落ち込み」が重なって現れる理由
更年期以降にご相談が増えるのは、ひとつの症状ではなく「束」になった不調です。疲れが抜けない、お腹まわりが変わった、眠りが浅い、気分が晴れない。それぞれ別の科にかかれば別の説明を受けますが、身体の側から見ると共通の土台を持っていることがあります。
ひとつは体組成の変化です。閉経前後は女性ホルモンの分泌が大きく変わる時期で、同じ生活を続けていても筋肉量と脂肪のバランスが変わりやすくなると言われています。筋肉は単に身体を動かす組織ではなく、代謝の場でもあり、熱をつくる場所でもあります。ここが変わると、だるさや冷え、動き出しの重さとして感じられることがあります。
もうひとつが、体内でくすぶるような弱い炎症、低度の炎症です。研究では、食事の内容が体内の炎症状態と関わるとされ、閉経後女性では食習慣が体組成や更年期の生活の質に影響すると報告されています。さらに自己免疫疾患や気分の落ち込みの領域でも、脂質の質を含む食事内容への配慮が低度の炎症に関与する可能性が指摘されています。
「別々の不調」が同じ根を持つことがある
疲労・体型・気分という、一見つながらない三つが同時期に動くのは、偶然ではないと考えられます。炎症というのは本来、傷や感染を修復するための反応です。ところが弱い炎症が長く続く状態になると、エネルギーが修復側に回り続け、「何もしていないのに疲れる」という感覚につながる可能性があります。気分の落ち込みと炎症の関わりが研究領域で注目されているのも、この文脈です。
これまで診てきた範囲では、こうした時期の方の身体は、どこか一か所が硬いというより、全体に「張りが抜けない」質感を持っていることが多い印象があります。もちろんこれは医学的事実ではなく、手で触れて感じている傾向です。
低度の炎症とは何か|脂質の質とオメガ3が体内環境を左右する仕組み
低度の炎症は、熱も腫れも出ない、自覚しにくい炎症です。採血で調べられる炎症マーカーがわずかに高めに推移する、というような形で表れることがあります。急性の炎症が「火事」なら、低度の炎症は「煙がずっと細く上がっている」状態に近いイメージです。
細胞膜は、食べた脂でできている
ここで食事が関わってくる理由は、非常に物理的です。私たちの細胞は一つひとつが膜に包まれていて、その膜の主成分は脂質です。そして膜をつくる材料は、食べたものに由来します。つまり脂質の質が変われば、細胞膜の性質がゆっくり変わっていく、ということです。
さらに、細胞膜の脂肪酸は炎症を調整する生理活性物質の材料にもなります。オメガ3脂肪酸と、いわゆるオメガ6系の脂肪酸は、同じ酵素を取り合いながら、それぞれ異なる性質の物質へと変換されていきます。どちらが良い悪いという単純な話ではなく、両者のバランスが体内環境の傾きを決める、という捉え方が近いでしょう。オメガ3と炎症マーカーの関係が研究テーマとして繰り返し扱われているのは、この回路があるためです。
「低度の炎症と食事」が長いスパンで効いてくる
- 細胞膜は日々つくり替えられるため、食の変化は一日では反映されない
- 逆に言えば、数週間〜数か月という単位で体内環境は入れ替わっていく
- だからこそ「一回だけの食事」より「平均してどう食べているか」が問われる
私自身、平日はほぼ植物中心、週末はBBQや刺身も楽しむというゆるいスタイルに変えてから、痛風発作が出なくなってきた感覚があり、血圧の数値も落ち着いてきたと感じています。これはあくまで個人の体験で、誰にでも同じことが起きるという話ではありません。ただ、極端に制限するのではなく平均値を動かすという発想は、続けやすさの面で理にかなっていると感じています。
整体師が触れて感じる「炎症傾向の身体」|内臓・横隔膜・筋膜からみる見立て
整体やオステオパシーの視点では、炎症は血液検査の数値だけでなく、組織の「質感」としても現れると考えられています。もちろん手で炎症マーカーを測ることはできません。あくまで触診で感じる傾向の話として読んでください。
炎症のあとに残るのは「動きの制限」
内臓を包む膜(漿膜)は、本来つるりと滑って臓器どうしがすれ違えるようになっています。炎症が起きたあと、この膜の滑りが落ち、隣り合う組織との間に動きの制限が残ることがあると言われています。たとえば腎臓は呼吸のたびに数センチ動き、一日で見れば相当な距離を移動しています。そのわずかな動きに制限が加わると、何万回と繰り返されるうちに無視できない負担になる可能性があります。
横隔膜も同じです。横隔膜は呼吸筋であると同時に、肝臓や胃、腎臓と膜でつながる「内臓の天井」でもあります。ここの上下動が浅くなると、腹部の循環を助けるポンプ作用への影響が考えられ、だるさや息の浅さとして自覚されることがあります。
肝臓と気分のつながり
内臓マニピュレーションの臨床知見では、気分の落ち込みを抱える方に肝臓まわりの動きの低下が見られやすいと報告されています。東洋医学でも肝は感情と結びつけて語られてきました。肝臓は脂質の代謝と胆汁の生成を担う臓器でもあり、食事と気分という一見遠いテーマが、肝臓という一点で交わるのは興味深いところです。
すーさん夫婦の龍ケ崎整体院の施術の現場では、更年期以降の疲れを訴える方に、右の肋骨下の可動性や横隔膜の動きを確認することがあります。これは診断ではなく、動きの制限がどこにあるかを探す確認作業です。日々の施術のなかで、食生活の話をうかがうと、脂質の摂り方や食事時間が大きく乱れている時期と不調の時期が重なっている方にお会いすることがあります。これも傾向として感じていることであって、因果関係を示すものではありません。
なお、強い痛み、しびれ、発熱、急な体重の変化などがある場合や、こうした状態が長く続く場合は、自己判断せず医療機関にご相談ください。
整体師として考えていることは、noteにも書いています。食と身体のつながりについては、noteで整体師の実体験とともに詳しく書いています。
→ https://note.com/honest_rose9929
BODY×MIND×SPIRITで考える体調管理|食を整えることが施術を支える理由
私が大切にしているのは、BODY(構造・内臓・頭蓋)、MIND(食事・自然療法)、SPIRIT(全体性)という三つの軸です。手技で動きを整えても、身体をつくる材料が日々入れ替わっていく以上、食の側が置き去りだと土台が追いつきません。逆に、食を整えるだけでは、すでに固まってしまった動きの制限はそのまま残ります。
手技と食は、役割が違う
- 手技:いま存在する動きの制限に対して、直接ふれて確認し、整えていく
- 食:細胞膜や組織の材料そのものを、数週間単位で入れ替えていく
- 呼吸・睡眠:横隔膜の上下動と回復のリズムを支える土台
この三つは速度が違います。手技はその場で変化を確認できることがありますが、材料の入れ替わりは静かに進みます。閉経後の体組成や生活の質というテーマが、短期の対処ではなく習慣の話になるのは、この時間差のためです。
施術で痛いところ「だけ」では終わらない理由
腰が重い方の腰だけを触って終わるのではなく、横隔膜、肝臓や腎臓まわり、骨盤底まで確認していくのは、一つの制限が隣の構造へ連鎖していくと考えられているからです。更年期以降は、ホルモン環境の変化と内臓の位置関係、そして食の内容が同時に動く時期でもあります。だからこそ、構造だけ、食だけ、という切り分けが合いにくい。
施術時間は約45分。その中で、身体のどこに動きの制限がありそうかを確認しながら進めていきます。茨城・龍ケ崎で女性の施術者を含む夫婦2人で対応していますので、更年期以降のからだの変化について話しづらさを感じる方にも、ご相談いただける体制です。すべてを施術で解決しようとするのではなく、食事や生活のリズムも含めて一緒に考えていく、という姿勢を取っています。
食と身体のつながりについては、noteで整体師の実体験とともに詳しく書いています。
→ https://note.com/honest_rose9929
まとめ
更年期以降の疲れ、体型の変化、気分の沈みは、それぞれ別の問題に見えて、低度の炎症という共通の土台を持っている可能性が研究で指摘されています。脂質の質やオメガ3脂肪酸のバランスが細胞膜の材料になるという事実は、食が身体に響く仕組みをわかりやすく示してくれます。一度の食事で何かが変わるわけではありませんが、平均を少しずつ動かしていくことが、体調管理を支える一助になりうると考えています。気になる状態が続くときは、医療機関にもご相談ください。
参考文献
本記事の作成にあたり参照した研究論文です(内容は要約・意訳したものであり、原文の直接引用ではありません)。
- Nutrition in Menopausal Women: A Narrative Review(Nutrients 2021) PubMed
- Inflammatory Depression-Mechanisms and Non-Pharmacological Interventions(Int J Mol Sci 2021) PubMed
- Efficacy of the omega-3 fatty acids supplementation on inflammatory biomarkers: An umbrella meta-analysis(Int Immunopharmacol 2022) PubMed
よくある質問
Q. 閉経後に太りやすくなるのは食事のせいですか?
A. 食事だけが理由ではありません。ホルモン環境の変化で筋肉量や脂肪の分布が変わりやすく、そこに食習慣が重なります。研究では閉経後女性の食習慣が体組成や生活の質と関わると報告されています。
Q. 炎症マーカーが高いと言われましたが、食事と関係ありますか?
A. レビュー論文では、食事内容が体内の低度の炎症状態と関わるとされ、特に脂質の質への配慮が検討されています。ただし数値の解釈や対応は医療機関での相談が前提になります。
Q. 気分の落ち込みと食事はつながっているのでしょうか?
A. 気分の落ち込みの領域でも、脂質の質を含む食事内容が低度の炎症に関与する可能性が指摘されています。食事は要因のひとつであり、睡眠や活動量と合わせて整えていく視点が役立ちます。

鈴木大樹(すずき だいき)
柔道整復師 / オステオパシー専門校在学中 / 産後リハビリ国際セミナー修了
茨城県龍ケ崎市で妻・佳代とともに整体院を営む整体師。食・自然療法・筋膜のつながりを臨床と学びの中で深め、「なぜ身体はそうなるのか」を発信し続けています。
さらに深く知りたい方へ
腸と身体の痛みがつながっているのかどうか、わかっていることとわかっていないことをnoteに書いています。
・腸と身体の痛みは、つながっているのか(無料)
・1兆724億円の市場で、飲んだ菌はどこへ行くのか(有料)
・2万5千人を5年追って、オメガ3のサプリと薬は何を変えたのか(有料)
有料記事は買い切りです。価格(税込)はnoteの各記事ページに表示しています。
noteの記事は、整体師が研究や施術の中で考えたことをまとめた読み物です。診断・治療に代わるものではありません。
茨城県龍ケ崎市で実際に施術を受けたい方へ
すーさん夫婦の龍ケ崎整体院
所在地:茨城県龍ケ崎市愛戸町58-2(龍ケ崎郵便局から徒歩2分)
電話:080-3406-6568 営業時間:平日9:00〜21:00 / 土曜8:30〜15:30


